LIVE REPORT
10-FEET
2022.01.05 @LINE CUBE SHIBUYA
Writer 吉羽 さおり Photo by 三吉ツカサ(Showcase)
昨年からスタートした10-FEETによるツアー[10-FEET "アオ" TOUR 2021-2022]の東京公演が1月5日、LINE CUBE SHIBUYAで開催された。全国10ヶ所をまわる今回のツアーは、これまで25年間全国津々浦々のライヴハウスを沸騰させてきた3人にとって初めてのホール・ツアーとなる。コロナ禍となって2020年にもガイドラインに沿ってライヴを行ってきた10-FEET。ライヴ・バンドとして鳴らしてきた3人と、その空間を共に作り上げてきた観客にとって、この2年間のライヴは歯がゆさもあっただろう。"ライヴ"ができる喜び、目の前で音楽が奏でられる興奮はもちろん何にも変えがたいものだが、人との距離をとった、シンガロングや歓声が聴こえないフロアの様子は、やはり寂しさがよぎる。そうしたなかでの今回のホール・ツアーだが、結論から言えばとても充実感が高いものだった。
おなじみのSEが会場に響いて、大きな手拍子やタオルを掲げる人々の熱気の中、ツアーのバックドロップがステージに掲げられた。会場内のボルテージがグッと上がったところでTAKUMA(Vo/Gt)、NAOKI(Ba/Vo)、KOUICHI(Dr/Cho)が登場して一発目に演奏したのは「hammer ska」。そして「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」、「4REST」が続く。冒頭からジャンプ必至のアグレッシヴな曲が連投され、歪んだベースから「タンバリン」へとなだれ込んだ。コロナ禍でないライヴなら瞬く間にフロアがもみくちゃになって、声にならない声と汗にまみれて曲のパワーが膨張していくようなシーンだろう。今回、改めて感じられたのは曲が放つ輝きと力、そして3人が織りなす丁寧なアンサンブルでその曲の輝きや明度を上げて、観客の身体の奥にまでエネルギーを浸透させていく一対一で向き合うステージだ。"Be brave Be brave この時の果て"、"運命を変える勇気をくれ"と歌う「hammer ska」の始まりもまた、より刺さる。
"新年会へようこそ。本音を言えばお前らと朝まで飲み明かしたい。帰りたくないなという夜にしましょう"とTAKUMAがリラックスした感じで語り掛けてスタートした中盤は、新旧の曲が入り混じる構成。「ハローフィクサー」で硬質のリフとグルーヴで唸らせ、MCではSNS社会はもちろん、人と人との関わり合いの中で大事なことについて友人と語らうように話したかと思えば、リクエスト・コーナーでは3人で小声の客席を交えわちゃわちゃとやり合いながら、結局KOUICHIの"いくで!"の一声で懐かしの「LIFE LIFE LIFE」が演奏されたりと、和やかでいい時間が続く。"もう1曲、久しぶりの曲やろうか"とそこに続いたのは「FUTURE」。"この先になにがあるかも わからぬまま時間だけが経つ"と歌い出し、その思いを打ち消すように"心配ない!心配ない!"と肩を叩き前を向かせてくれる曲は、今このときにいっそう大きくこだまする。観客の声と混じり合わない今の特殊な時期だからこそまた、10-FEETが真摯に綴ってきた歌がクリアに、純粋に聴こえてくる。よりスタイリッシュに磨き上げられた3人の演奏に見入り、じっくりと歌を噛み締める時間が、いい。「RIVER」から、昨年リリースした20枚目のシングル「アオ」へと続き、後半はライヴ定番曲が並ぶ。
"今日は笑って帰ろう。そう決めてきたんだ"(TAKUMA)とフロアに語り掛け、「シエラのように」の曲中では"よう来たな"と挟みながら、グッド・メロディを会場に行き渡らせる。「蜃気楼」、「太陽4号」で歌心をまっすぐに伝えると、フロアの潤んだ余韻を強靭な馬力のある音で蹴散らすように「その向こうへ」、「VIBES BY VIBES」と飛ばして、ラストの「ヒトリセカイ」へ。またこの歌が、明日からの、次会うときまでの大事な1曲になるように、3人の分厚いアンサンブルで深く刻み込まれた。袖に引っ込むことなく、分かち合う時間を1分でも1秒でも惜しむようにそのままアンコールに突入した10-FEET。今回は、コロナ禍だからこそ実現したホール公演かもしれない。"ライヴ"ならではの、そのときでしか生まれ得ないマジカルな体験やハプニングはもちろんあるが、こうしてまっすぐにその音楽を伝える場もかけがえのないものだ。ある意味では、10-FEETのありのまま、心地よい平熱感、地に足をつけて日々を送るからこそ生まれてくる普遍的で力強い音楽というものが、際立って聴こえてくるような素晴らしいライヴだった。
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