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LIVE REPORT

10-FEET

2016.08.18 @渋谷TSUTAYA O-WEST

Writer 塩﨑 陽矢

7月20日にオリジナル音源としては約4年ぶりとなるニュー・シングル『アンテナラスト』をリリースした10-FEET。同作を引っ提げて京都、渋谷、神戸の3都市3公演のみでワンマン・ツアー[10-FEET "アンテナラスト" ONE-MAN TOUR 2016]を開催。彼らが、渋谷TSUTAYA O-WESTでライヴをするのは、実に11年ぶり。そして、なんとワンマン公演は今回が初。何年経っても錆びることのない、いつ思い出しても興奮が蘇るだろう超レアなワンマン公演となった。

どれだけこの日を待ちわびていたのか。フロアには始まる前からオーディエンスの笑顔が溢れる中、"ドラゴンクエストIII そして伝説へ..."のSEが流れ始めると、大きな歓声と手拍子でメンバーが迎えられた。一瞬の静寂の後、「focus」からライヴがスタート。オーディエンスの強い期待感と高揚感が一気にステージに集中する。続く「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」では、2曲目にして2階席まで汗の匂いが充満するほどの熱狂ぶりに。「hammer ska」の歌い出しひと言目"Be brave"で、まるで打ち合わせをしていたんじゃないかと疑うほどの大合唱が起こり、10-FEETのみんなからの、愛されように微笑まずにはいられなかった。代表曲「RIVER」では、歌詞の一部を"二子玉川"に言い換え会場を沸かせる。TAKUMA(Vo/Gt)はMCで、"「RIVER」ではその地域の河川に言い換えるんやけど、「二子玉川」は地名であり河川ではありません!"と、最近まで勘違いしていて、それを知らない人(筆者含む)に説明するためだと暴露し、会場の笑いを誘う。

"アンコール始めます!"と、10-FEETファンにとってはお馴染みのフレーズに、素直に"はーい!"と返事するフロア。NAOKI(Ba/Vo)のベース・ラインが響く「super stomper」でパンパンだったフロアの圧縮率がさらに高まり、苦しそうだが笑顔のダイバーに対してセキュリティも僅かながらも笑顔でさばいていたように見えた。コードを確かめるように演奏するニュー・シングルからのナンバー「BombBassKinny」では豪快なシンガロングが起こる。オーディエンスの予習はバッチリだったようで、メンバーもギアを上げていく。"せっかくのワンマンやから盛り上がらないレア曲やります! ツアー初日の京都では「SO」をやって......結局盛り上がったけど(笑)! 今日は絶対盛り上がらん曲をやる!"とTAKUMAの壮大なフリから披露した「MOVING is CHANGING」には、各所から歓喜の声が。「STONE COLD BREAK」のイントロで、"お前らやるつもりで来たんやろ!? かかってこいよ!"とNAOKIがフロアを思いっきり煽ると、瞬く間に会場はダイバーで溢れ返る。誰もがド平日だということを忘れ、童心に返ったように今この瞬間を少しも漏らさないように楽しんでいた。

先に述べたとおり、O-WESTでライヴをするのは11年ぶりなので、会場に着いたとき入り口がわからずに戸惑ったとNAOKIがMCで吐露。そして、トンネルの中にいるようなオレンジ色のスポットライトに照らされたKOUICHI(Dr/Cho)は、"人生もトンネルと一緒。最後に明るい出口がある"と独自のトンネル論(?)を唱えるなど、ユーモア・センスとキャラが炸裂。ライヴハウスにいることを忘れ、親戚の集まりの場にいるようなアットホームな空気が流れた。

ライヴも中盤戦に入ろうとしたとき、"頑張る!"と発したオーディエンスに、"お前らが頑張るんやない! 頑張るのは俺ら! お前らは精一杯楽しめ!"と言い放ったTAKUMAのひと言には胸が熱くなり、"一生10-FEETについていこう"と思えた瞬間だった。その後の「4REST」では、お尻を振って誰よりも楽しむTAKUMA、MCのときと打って変わって真剣な表情のKOUICHI、会場全体を見守るような目で優しく微笑むNAOKIと、メンバー3人ともが最高の時間を共有していた。独特のクロスオーバー・サウンドが心地よい「ライオン」、負の感情を一掃してくれる「2%」、メランコリックなフレーズが涙を誘う「シガードッグ」と名曲が繰り広げられ、徐々に終盤に向かっていく。マイクを通さず歌唱した「風」の哀愁を帯びた魅力のあるメロディを、思わず口ずさむセキュリティが"あ、やべ"と我に返る一面も、彼らのライヴならではだろう。NAOKIはステージを前後左右縦横無尽に動き回り、それを援護するかのようにKOUICHIの強いビートが心に響く「1sec.」が終わると、TAKUMAは自分に問いかけるように「アンテナラスト」のワンフレーズをアカペラで披露。会場中が全神経を集中させ耳をそばだてる中、"耐えろ、諦めるな、走り抜けろ"と強いメッセージを残し、ラストの「goes on」をプレイ。幸福感がフロアに充満し、本編は締めくくられた。

アンコールを求めるオーディエンスの「EVERY」のフレーズの合唱で再びメンバーがステージに登場。2階席で観ていた所属事務所"BADASS"の新たな後輩であるヤバイTシャツ屋さんの"ヤバイTシャツ"の紹介を挟み、「蜃気楼」、「VIBES BY VIBES」をプレイ。たくさんのタオルが宙を舞うにもかかわらず、自分のもとへ戻ってくるというファン同士の愛が確認できる「CHERRY BLOSSOM」で終了、かと思いきや、3人はステージ中央に集まって何やら話し、予定外のサプライズ・プレゼントとなったファスト・チューン「DAVE ROAD」をフロアに投下し、会場中が汗でぐちゃぐちゃになりながらもキラキラした笑顔で大円団を迎えた。

10-FEETの歌詞はそっと心を掴む包容力があり、楽曲はグッと背中を押してくれる人間力がある。オーディエンスはバンドに絶対的な信頼を置いているし、逆も然り。"京都大作戦"同様終演後のフロアにゴミが落ちてないことが、なによりの証拠だろう。最後にTAKUMAがステージに残り、"ほんの少しの可能性があるなら、伝えることが大切"だということを父親のように力説してくれた。彼らは背中で教えてくれるのではなく、しっかりと向き合って根っこにある本当に大事なことを教えてくれる。近いようで遠い、届きそうで届かない距離だからこそ、僕らは求め、ずっとついていくのだ。

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