LIVE REPORT
10-FEET
2012.11.06 @ZEPP TOKYO
Writer 山本 真由
前作から実に3年ぶりとなった10-FEETの最新アルバム『thread』。スピード感や激しさ、彼ららしいユーモアも健在ながら、じっくり聴き入りたくなるような優しさと温かさをも兼ね備えた、生々しい感情の詰まった作品だ。この日は、ある意味そんなアルバムを象徴するような特別なライヴだった。
ライヴ中、TAKUMA (Vo/Gt)が"わかったよ、今日のお前らがめちゃくちゃヤバいってこと"と満足げに言っていたのも頷ける。5月まで続くツアーのまだ序盤戦であるにも関わらず、ツアー・ファイナルかと錯覚してしまうくらいの会場の一体感で、異常なまでの盛り上がりを見せたZEPP TOKYO公演となった。
ヘヴィ・ロックのクールさと裏打ちのノリの良さ、シンガロング・パートとキャッチーなサビという必殺技がこれでもかと繰り出される「JUNGLES」、和製ミクスチャーのカッコ良さを再確認させてくれるラップとメロコアの良いトコ取りの「focus」など、ライヴ独特の緊張感を持って楽曲に生命が吹き込まれていくのは、ゾクゾクする様な瞬間だ。
この日は、そんなライヴのテンションも相まって、演奏のタフさとTAKUMAの少しかすれたヴォーカルもNAOKI (Ba/Vo)のハイトーンもKOUICHI (Dr/Cho)のコーラスも前のめりに勢い付いた印象で、終始力のこもったパフォーマンスを見せてくれた。
前作『Life is sweet』からのシングル曲「super stomper」「1sec.」、そしてニュー・アルバム収録のシングル曲「hammer ska」「その向こうへ」といったナンバーは、最早ライヴの定番といった風格でモッシュ・ピットの熱を上げ、クラウド・サーフに最適なビッグ・ウェーヴを作り上げていた。
そして、震災後、被災地へ物だけじゃなくて何か届けたいなという気持ちから生まれたという「シガードッグ」。消したいような辛い過去もあるけれど、もし本当に消すことが出来たなら、どの曲が消えて自分の人生はどんな風に変わってしまうんだろう......現在は常に過去の延長線上にある。"明日はオレ達次第やし、お前ら次第や"。そんなメッセージから始まった演奏は、過去の悲しみや不幸な現実をそっと慰め、希望を与えてくれた。
笑いあり、そしてホロっともさせ、10-FEETのライヴの魅力が、この日の空気が作った魔法で最高潮になった瞬間。「RIVER」では、大合唱が巻き起こり、高揚しまくったオーディエンスが続出し、フロアには圧巻の景色が広がった。間奏をタメにタメたスペシャル・アレンジで、"「RIVER」でこんなに曲止めたのは初めてやし、今日は楽しいな"と、この特別な時間を共有した仲間との連帯感を確認した。
この時が過ぎ去ってしまうのが名残惜しく感じたのは、みんな一緒。アンコールでは、当初予定されていた4曲では終わらず、1曲多く披露するというサプライズ・プレゼントも。バンドにとっても今日というこの日がサプライズなものであったに違いない。
全力で笑って泣いて暴れて叫んで、日々のイライラもモヤモヤも全部其処に置いて、真っ白になるまで燃え尽きることが出来る、そんな特別な時間を与えてくれる。それが、10-FEETというバンドのライヴ。
まだまだ旅を続ける彼らの道中に、パワーを与えるのはライヴを盛り上げるオーディエンスだ。
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