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INTERVIEW

lynch.

2025.09.24UPDATE

2025年10月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-明徳さんの場合、旧作の『THE AVOIDED SUN』と『SHADOWS』(2009年リリースの4thフル・アルバム)が作られた際にはまだlynch.未加入の状態でした。前作に引き続いてのリテイク第2弾の作業は、ご自身にとっていかなる意味を持つものとなりましたか。

明徳:今回の『THE AVOIDED SUN』と『SHADOWS』も僕からしたら作品に初参加するような形なので、これでようやくlynch.の歴史完全コンプリートができたっていうのがやっぱり嬉しいです。そして、今回ベースのレコーディングはちょうどツアー("XX act:5 TOUR'25「UNDERNEATH THE GREED」")をやってた6月から始まったんで、lynch.の20周年の歴史を振り返るライヴをしながら録っていけたっていうのが、マインド的にもプレイのノリ的にもすごく良かったです。

-スケジュール的には相当大変だったのでしょうけれどもね。

明徳:そこはちょっと厳しかったですけど(笑)。でも、すごく良いタイミングで制作することができたなと感じてます。

-音の部分で明徳さんがこだわられたのはどのようなことでしょうか。

明徳:話に出てるように、いろいろ当時から変わってる部分があるのは当然のことで、あの時代にlynch.みたいなヘヴィでラウドでスピードのある音を出していくとなると、バンド自体もそうだし、楽器的な部分やエンジニアも対応しきれていなかったところがあったと思うんです。みんな一生懸命もがきながらやってて、そういうなかだからこそ生まれた音もきっとあるんです。そういう意味で、今回ツアー中にレコーディングすることができたっていうのは音響の面でも良かったと思います。

-ダイナミックな臨場感を反映させることができたわけですね。

明徳:恐らくこれが落ち着いてる状態でのレコーディングだったら、今の技術を活かしながらきれいな音で録ってたような気がするんです。ライヴのモードで録れたことによって、きれいすぎない音を上手く残すことができました。

-さて。ここからは今作のDisc.2に収録されている2009年発表の『SHADOWS』についてもう少し細かいお話をさせていただきたいと思います。というのも、あの当時の記憶として、lynch.は『SHADOWS』でバンドとしての存在感を完全に確立したな、と感じていたところがありまして。今回改めてこのアルバムと向き合ったときに、そうした感覚をメンバーの皆さんが持たれるようなことはあったのでしょうか。

玲央:自分たちとファンの間には関係者の方々っていうのもいらっしゃるわけじゃないですか。僕が今でもよく覚えてるのは、『SHADOWS』を出したとき、アーティスト写真を黒いシャッターの前で撮ったんです。

-覚えております。あの写真では皆さん黒レザーの衣装をお召しでした。

玲央:そうです、そうです。僕はあの頃アルバムを作るために借金をしまして、自分の生活を全振りして、"これが売れなきゃどうしようもない"というくらいの予算感で作ったのが『SHADOWS』だったんですね。結果として写真撮影の分まではあまり予算を回せなくなり、あれは「SHADOWZ」のミュージック・ビデオのシューティング現場までカメラマンの小松(陽祐)さんに来ていただいて、なんとかこの場所の撮れそうなところでお願いしますということで撮ってもらったんですよ。で、当時その写真を見た某関係者が"このアーティスト写真、めちゃくちゃカッコいいね!!"と言ってくださり、初めて褒めていただいたんですよ。 たぶん、バンドが一丸となって前に進もうとしてる勢いとか空気感があの写真にも出てたんでしょうね。なんだか今、ふとそのことを思い出しました。たしかに音もそうなんですけど、バンドとしての存在感までちゃんとしっかり固まったのが『SHADOWS』を出した時期だったんだと思います。

-私が最初に取材をさせていただいたのは『THE AVOIDED SUN』が出た直後あたりで、当初からlynch.に対してはいいバンドだなという好感を持っていたのですけれど、2008年のシングル『Adore』で"このバンドはここから急成長するな"と予感し、その後に『SHADOWS』を聴いて"lynch.は絶対に大きなバンドになる"と確信しました。そうした経緯もあり、このたび2025年版の『SHADOWS』を聴けたことがとても感慨深いです。晁直さんは何か当時の想い出はあります?

晁直:いかんせん10数年前のことだから当時のことはあんまりよく覚えてないですけど、『SHADOWS』のレコーディングをしてたときはみんなでずーっとPSPやってたのだけはなぜかやたらと覚えてます(笑)。

玲央:あぁ、そういえば"モンハン(モンスターハンター)"よくやってたよね。

-悠介さんの『SHADOWS』にまつわるエピソードもぜひ教えてください。

悠介:ちょうどこの頃から、ディレイ・フレーズを使えるようになったんですよ。今回のDisc.3にも入ってる『Adore』のカップリング「an illusion」を当時作ったとき、ようやくできるようになったというか。それまではあえてやってなかったところもあったし、どこか遠慮してたところもあったんだと思うんです。自分は後からlynch.に入った立場だったので。どこまで自己表現していいのかがよく分からなかったし、性格的に前に出ていきにくかったところもあったから、ちょっと様子見をしていたところがありました。

-悠介さんにとっても『SHADOWS』は分岐点だったのですね。

悠介:「an illusion」ができてからは、もっとこういうものを取り入れていいんだというふうに意識が変わりました。自分の中に1つの開放感が生まれたんで、それによって『SHADOWS』のアルバムとしての色彩もより鮮やかになったんじゃないかと思います。そこの変化は大きかったです。

-そうした背景を持つ『SHADOWS』の曲たちをプレイしていく際、明徳さんはどのような見解をお持ちでしたか。

明徳:今回のレコーディングに向けて音を聴きながら解析していくなかで、まず感じたのは『SHADOWS』でみんな急に"デラうま"になってるな! っていうことでした。ロー・チューニングの使い方を完全にマスターしてることが分かるし、音も『THE AVOIDED SUN』とは違って完全にプロ音質になってるなと思いましたね。

-葉月さんにとって『SHADOWS』とはどのようなアルバムでしたか。

葉月:メジャー感を出したアルバムです。ただ、当時は自信を持って出しましたけれども、その後にちょっと"広げすぎたかもな"とも思ってました。だから、今の"イメージが固まった"っていう意見は"そうなんだ"って思いながら聞いてたんです。

-受け手側は、その"広げすぎた"部分に可能性を感じたところもあったんですよ。

葉月:そうだったんですね。「Adore」はドンズバですけど、例えば「I DON'T KNOW WHERE I AM」なんかはlynch.の軸からには結構遠いところにいる曲なので、そこは広げすぎたなと思ってました。で、『I BELIEVE IN ME』(2011年リリースのメジャー・デビュー・アルバム)のときはもうちょっとキュッとするんです。"lynch.って激しいバンドだよね"っていうところにもっとフォーカスを当てるという反動がありました。

-インディーズでのラスト・アルバム(『SHADOWS』)よりも、メジャー・デビュー・アルバムのほうがより激しい方向にまとまったというのは、なんだか少し面白い逸話ですね。

玲央:『SHADOWS』ってすごく関係者受けするアルバムなんです。お世話になってる楽器メーカーの方からもすぐに"いいアルバムだね!"って電話が来ましたし、今もお世話になってるレコード会社のディレクターも『SHADOWS』を聴いて声を掛けてくださって、今に至ってますから。当時"このバンドはこういうこともできるんだ、っていうことを確認できた"って言ってました。 不思議なもので、『THE AVOIDED SUN』のときはメンバーもファンも"いいアルバムができた!"って喜んでたのに、僕はそういう関係者からのいい反応はいただいてなかったですから。"世の中ってそういうものなのか"って『SHADOWS』を出したときにつくづく感じましたし、あれはlynch.にとっての大きな学びになりました。そういう意味でも、今回の『THE AVOIDED SUN / SHADOWS』は、今に続く我々の土台となった2枚のアルバムたちを20周年のタイミングでリテイクした記念すべき作品なんです。

-なおかつ、今作にはDisc.3に新曲「BRINGER」も収録されております。作詞作曲を手掛けられている葉月さんから、この曲に関する解説もいただけますと幸いです。

葉月:これは12月28日に東京ガーデンシアターでの"lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE'LL GIVE YOU」"が決まったことを受けて作った曲ですね。その一夜に向けて一緒に突き進んでいけるような曲にしたかったし、誰がどこからどう聴いても"これはlynch.だよね"って感じるような曲にしようと思って作りました。

-もしなんの事前情報もなく、突然どこかで流れてきたとしても"これはlynch.の新曲なのでは?"と気付けそうです。

葉月:ツアー中の楽屋で"どこからどう聴いてもこれはlynch.だよね"っていうのは意外と何パターンがあるよねっていう話になったんです。さっきは「Adore」がドンズバっていう話もあったけど、でも「EVOKE」(2015年8月リリースのシングル表題曲)だって、「GALLOWS」(2014年リリースの3rdアルバム表題曲)だってどれも完全にlynch.じゃないですか。"どの辺にします?"っていう話をメンバー内でしつつ、結局どの辺にもならなかったんですが(笑)、BPM210くらいの非常にいい曲ができました。