MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

lynch.

2023.03.01UPDATE

2023年03月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

ギラギラしてて振り切ってて尖ってるところにこそlynch.らしさがある


-ちなみに、晁直さんの単独クレジット曲「THE FORBIDDEN DOOR」と晁直&葉月の共同クレジットになっている「ANGEL DUST」だと、先にできたのは......?

晁直:早くできあがったのは「ANGEL DUST」のほうです。でも、厳密に言えば原型は「THE FORBIDDEN DOOR」のほうが先ですね。これのサビだけは『EXODUS-EP』(2013年リリースのEP)の頃にあったんです。

-『EXODUS-EP』は2013年発表ですので、10年もストックされていたのですか。

玲央:たしか、当時は悠介さんがサビ部分だけを曲として起こしてくれてたよね?

晁直:サビだけ提出したら、そこにコードをつけてくれました。

悠介:......覚えてない(笑)。

玲央:でも、そのときのデータが僕のパソコンの中に残ってたんですよ。

晁直:それを引っ張り出してきて、今回改めて1曲として完成させました。

-「THE FORBIDDEN DOOR」は展開の多い曲になっていますから、サビだけの状態からここに辿り着かせるには様々なアプローチが必要だったのではないですか?

晁直:サビからさかのぼっていく感じで、サビに合うBメロ、そのBメロに合うAメロってなんとなく作っていきましたけど、そもそも作曲がよくわかんないし、ギターを弾いてもそこにメロもつけられないし、という状態だったんですよね。だから、とりあえずメロもいっぱい作ってそこからチョイスして広げていく、っていう自分なりのやり方をしました。

-「THE FORBIDDEN DOOR」にはラップ的なものが挟まれる部分もありますが、あれも晁直さんのアイディアだったのでしょうか。

晁直:あそこは完全に葉月君にお任せしたところですね。

-だとすると、晁直&葉月の共同クレジットになっている「ANGEL DUST」はどのような経緯で生まれたものだったのですか。

晁直:こっちは僕の提出した原曲があまりよろしくないものだったので(苦笑)、そこに葉月君が手を入れてくれてこういうかたちになりました。

-葉月さんが原石に磨きをかけてくださったわけですね。

葉月:原石っていうかいろいろと破綻してたんですよ、原型は(笑)。僕は音楽として成り立ってなかった部分を調整して、シンプルなデモを作り、あとはみなさんお願いしますというかたちまで持っていった感じです。メロディは変えてません。

-ここまでは楽器隊各メンバーに今回の作曲についてお話をうかがってきましたが、lynch.の始動以来ずっとメイン・コンポーザーとして活躍され続けてきた葉月さんからすると、このたび各人から出てきた様々な楽曲たちに対しては、概してどのような印象を受けられましたか。

葉月:やっぱり、どの曲も"っぽいな"って思いましたよ。メンバーそれぞれの持ってる個性が出てますよね。

-それと同時に、今作は総体的に見ると、従来の楽曲たちよりも歌のキーがやや低めに設定されているようにも感じたのですが、そこに関してヴォーカリスト、葉月さんはどのように感じていらっしゃったのでしょうか。

葉月:そこは結果的に"そうなってしまった"んですよ。みんな、僕のキーを逆に見くびって曲を作ったんでしょうね。いや、過大評価してると言ったほうが正しいか。いつもだったら自分では使わないキーの曲が多いんですけど、なるべくそのままのかたちでやりたかったし、楽器との兼ね合いもあるんで、上にハモりを足すことで派手さも損なわないようにしながら歌っていくようにしたんです。

-葉月さんの歌やもともと持っていらっしゃる声質の魅力も、各メンバーの曲によってよりたくさん引き出されたと言えるのでしょうね。

葉月:晁直君の曲だけはちょっと謎だったから、特に「THE FORBIDDEN DOOR」は最後までどうなるんだろう? っていう不安もありつつ、そこからすごく良くなって良かったなと思ってます。これも自分では絶対に作らないタイプの曲だし、サビとかもシンコペ(シンコペーション)だったりシンコペじゃなくなったりでめちゃくちゃ鬱陶しいんですけど(笑)、でもそれだけ個性が出てるんですよね。

明徳:僕もこの曲、最初は複雑すぎて覚えられんかったです(笑)。

晁直:それは自分もそうだったよ。叩いてて"なんでこの曲、こんなふうになってるんだろう?"って思ったもん(笑)。

葉月:まぁ、そこが面白いんじゃないですかね。僕もどうしても歌えないところだけは変えさせてもらいましたけど、できるだけ原型は残すようにしました。

-そんな葉月さんも、今作においては冒頭を飾る「ECLIPSE」でlynch.のlynch.たるところを前面に打ち出すような王道的楽曲を書かれております。一方で、もう1曲の「CALLING ME」はMVが先行公開されて話題となりましたが、こちらは非常にアグレッシヴで先鋭的なモードに仕上がっているところにインパクトを感じます。

葉月:実は、自分がHAZUKIとしてソロをやっているなかで、"lynch.のいいところってこういうところだな"と思う瞬間みたいなものがあったんですよね。荒々しくて、きれいすぎず、でもメロディはあって激しいみたいな。そういう要素を凝縮するかたちで作ったのが「CALLING ME」だったんで、今回どれをリード曲にしてMVを撮りますか? ってなったときにも僕は「CALLING ME」を推したんですよ。AK(明徳)と晁直君は"王道な「ECLIPSE」がいいんじゃないか"っていう意見でしたけど、僕は、それは絶対にイヤだったんです。

-絶対に?

葉月:だって、それだと普通じゃないですか(笑)。

-"孤独のグルメ"では、意外性や斬新さはないけれど定番で美味しい料理に対して、主人公が"こういうのでいいんだよ、こういうので"と心の声を発するシーンがときどき出てきますが、言うなれば「ECLIPSE」はそれ的な存在であるということなのですかね。

葉月:別に悪くないけど"はいはい"みたいな。もちろんいいと思ってるし自信があるからアルバムに入れてるんですよ? ただ、僕はリードにするなら「CALLING ME」のほうが刺激的でいいなと思ったんです。

玲央:僕も今回は「CALLING ME」か「THE FORBIDDEN DOOR」のどっちかを推していて、「ECLIPSE」じゃない派でした。去年武道館をやったときにも感じましたけど、ギラギラしてて振り切ってて尖ってるところにこそlynch.らしさがあると思うので、そこがよく出てる曲をリードにしたほうがいいと考えたんですよ。

-おそらく、各メンバーlynch.が休止していた間の活動の中で、lynch.の存在感や特性について再認識されたところがあったのでしょうね。

明徳:今ってlynch.みたいなバンドとか、lynch.っぽくしようとしてるバンドがいくつもいると思うんですけど、lynch.はあくまでもlynch.なんですよ。ジャンルを作ってるって言うとおかしいかもしれないですけど、lynch.はlynch.にしかないものを持ってるバンドなんだなっていうことを、この1年でいろんな人たちとも音楽をやってきて改めて感じましたね。この5人からしか生まれないマジックがあるんだ、っていうことを武道館のリハに入ったくらいからすごく再認識するようになりました。

晁直:deadmanではサポートですけど作曲にも参加していて、あっちはスタジオにみんなで集まって練り上げていく感じなんですよ。それってlynch.の正反対だから、新鮮というよりは不思議な違和感があるんですよね。そのくらいlynch.のやり方に慣れてるっていうことだと思いますし、aie(Gt)さんがラフなノリなせいか、"lynch.って生真面目なバンドなんだな"って実感したりもします。

-バンドによって異なる家風のようなものはあるのでしょうし、lynch.は何しろストイックなバンドであるということなのでしょうね。『REBORN』の高い完成度からも、そこは感じるところです。

悠介:これだけ歴を重ねてきたなかで、5人全員で曲を持ち寄るっていうことを初めて実現させたこと自体が今回はひとつの冒険だったと言えると思うんですけど、当初は不安もなかったわけじゃないんですよ。でも、この5人で音を出すからlynch.なんだということは僕も感じたし、結局はそこがすべてである気がします。

-それから、この『REBORN』では各曲の歌詞に"生きる"、"死ぬ"、"命"といった言葉たちを散見することができますけれど、これはアルバム・タイトルのことを念頭に置きながら歌詞を書いていたことによるのでしょうか?

葉月:そこは『REBORN』に限ったことではなく、ずっとそうですからね。基本的には曲から受けた印象で詞を書いているんですけど、自分が詞を書いていくうえでは"そこ"を切り離すのは難しいです。

-では、ここでいよいよ"REBORN"というアルバム・タイトルがなぜここに冠されることになったのか、というお話をうかがってもよろしいでしょうか。復活後初のアルバムであり、約3年ぶりのアルバムという考えならば、これほど似つかわしいタイトルはないと思う一方で、バンド側がそこをどのように捉えていたのかが気になります。

葉月:アルバムのジャケット・デザインとして最初にデザイナーさんからあがってきたものに、もともと"REBORN"っていう文字が仮で入ってたんですよね。そこからタイトルをどうするかという話をグループLINEとかでもしていったんですけど、玲央さんも"『REBORN』って悪くないんじゃない"っていうことで、これに決まりました。

玲央:今回は写真撮影の段階で、いつもだったら黒ベースで撮るところを背景は白にしましたし、年末にやった武道館で再始動したこともあり、まっさらな状態でここから始めるということを考えたら、このタイミングには再生って言葉が似つかわしいような気がしたんですよ。そういう話をデザイナーさんとしたのをたぶん覚えていてくれて、汲み取ってくださったうえでその仮デザインがあがってきたんだと思います。

-いかんせん前作が"ULTIMA"でしたので、それ以上のものとなると......? と、今作のタイトルがどうなるかについては興味津々だったのですが、"REBORN"とはまたとない言葉が冠されましたね。

 

葉月:今になってみると『ULTIMA』はほんとに"ULTIMA"でしたね。始動時から続いてきたスタイルはあれが最後だったわけだし、そこからの新しいかたちで再スタートしたlynch.が出す"REBORN"っていうのは、タイトルとして非常にわかりやすいと思います。

-いよいよ3月からは"TOUR'23 「REBORN」"が始まりますし、その最中である3月15日にはライヴ映像作品『THE FATAL HOUR HAS COME AT 日本武道館』もリリースとなります。ここからのlynch.の動きにも大いに期待したいところです。

晁直:ツアーに関しては『REBORN』のツアーという面もありますけど、それ以前にlynch.としての全国ツアーっていうものが久しぶりですからね。純粋にそこはlynch.のライヴを楽しんでもらいたい、という気持ちでいます。いろんなところを回れる、っていうのは僕らのほうも今から楽しみです。

明徳:今回は全国のZeppでやれるっていうことで、ウチが得意とするツアーなんで、lynch.の良さを思いっきり発揮できると思いますね。もちろん『REBORN』の曲もやりますけど、その10曲以外はほかの曲たちもたくさんやるので、この1年半ぶんくらいのlynch.ロスを一気に取り返せるようなツアーにしていきたいです。

悠介:今後は今まで以上に一本一本のライヴが貴重になってくると思いますし、僕らだけじゃなくファンの方たちにとっても、お互い"次またあるからいいか"ではない向き合い方でのライヴをしていけたらいいなと考えてます。新しいアルバムの曲たちが、今度のツアーを通してどう化けていくことになるのかも期待していてください。

玲央:『REBORN』の発売記念ツアーであると同時に、久しぶりのlynch.の全国ツアーで、ちょうどツアー中には武道館の映像作品も出ますけど、当然あの場に来られなかった方たちも各地に大勢いらっしゃると思いますから、今回のツアーでは、あの武道館での熱を各地にもしっかり届けられたらなという気持ちでいます。

葉月:今回はメンバーみんなの曲をやるわけじゃないですか。そういう部分でもきっと楽しんでもらえると思いますし、やる側の本人たちも今までにない楽しみがあると思うんで、いろんな意味で盛り上がれる要素の多いツアーになっていく気がします。そして、ヴォーカリストとしては来てくれたみんなに活動休止前よりも"歌うめぇ!!"って思わせたいですね。