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INTERVIEW

lynch.

2021.12.13UPDATE

2021年12月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

あのときにはもうlynch.を確立するための時期は終わってたんです


-当時そのような発言はありませんでしたが、たしか何年かあとに葉月さんは『LIGHTNING』について"ある意味ではひよって作った曲だった"という旨の発言をされたことがありましたよね。

葉月:自分がいいと信じて出した『INFERIORITY COMPLEX』が当時は通用しなかった以上、そこは周りの人間の言うことを1回ちゃんと聞いて作ってみようってなったんですよ。だけど、それに対するファンの反応は今ひとつ芳しくなくて......。

-それこそ、『LIGHTNING』については、先ほどの話題の中にあった"メジャーでポップになってしまうパターン"を思わせるような曲だという受け取られ方をしてしまったところが、ファンの方たちの中で多少あったのかもしれませんね。ヴィジュアル面でもあの頃はノーメイクで、ややカジュアルになっていた印象ですし。

葉月:今でこそライヴで人気のある曲になっていて、いい曲だと僕も思ってるんですけど、当時はなんか違うっていうのがあったんですかね。それでまぁ、『LIGHTNING』がそんな感じだったんで次に関しては"よし、メジャー契約を切られる前にやりたいことをやろう。自分の中にヴィジョンがあるので、ここはそれを好きにやらせてください"ということで作ったのが『EXODUS-EP』だったんです。

-脱却を意味する『EXODUS-EP』でlynch.はバンド史上最もコアでヘヴィな音を体現することになり、それでいて明確な結果を出しましたから、あの作品はlynch.にとって起死回生の1枚となったと言えるでしょうね。

葉月:チューニングも下げて音も激しくなって、メイクもして、黒い服を着て。精神的にも物理的にもすべて仕切り直したのが『EXODUS-EP』だったから、僕としてはかなり大きなターニング・ポイントだったんですよ。

玲央:もっと言うなら、当時『LIGHTNING』と『BALLAD』(2013年2月リリースのシングル)がなければ『EXODUS-EP』は生まれてなかったんですよね。そういう意味では、ジャッジを求められるような場面でそのつど最良と思える選択をしてきたからこそ、lynch.は今に至っているんじゃないかなと思います。ひとつずつの体験を生かしながら、たとえ失敗したとしてもそれを繰り返さないようにしながら、自分たちが納得できる着地点を見つけられるまで諦めないっていうことをずっと続けてきた気がしますね。

-今回のボックスではlynch.の激動の歴史を音というかたちで一挙に体験することができますので、ファンのみなさんにはぜひそのあたりの変遷も堪能していただきたいところですね。リアルタイムを知っている方は懐かしいでしょうし、過去を知らない方々にとってはlynch.の歩みを追体験することもできるはずですので。

玲央:ずっとlynch.を追いかけてきてくれているファンの方は、きっと過去の音源を聴くと"あのときはこういうツアーであんなことがあったな"とかも、いろいろ想い出せるんじゃないですかね。僕自身も今回改めて聴いて、まさに想い出がよみがえってきましたから。要するに、それは言葉通りの"アルバム"っていうことでもあるんですよ。

-想い出の写真に彩られたアルバムと意味としては同じであるということですね。だとすると、メンバーのみなさんにとって個人的に最も想い出深い作品はそれぞれどちらになりますか?

明徳:自分にとっては、ほぼ人生初のレコーディングを体験することになった『I BELIEVE IN ME』ですね。苦戦もしたし、あの時点でできるところまではやったとはいえ、どうしても悔しさが残ったのも事実だし、そういうあのときのリアルな自分がすべて記録されてるなって感じます。"悔しかったなら、次のアルバムでもっと良くしていけばいいじゃん"っていう話を、板橋あたりの喫茶店で玲央さんとした記憶がありますね(笑)。

玲央:僕もなんだかんだで『I BELIEVE IN ME』ですね。作品の内容という以上に、関わっていただく人数が急に増えて、しかも自分が憧れていたようなギター・テックの方についていただいてご指導をいただきながら、いかに自分が井の中の蛙だったのかということを思い知らされたレコーディングでしたので、プロの世界は自分が思っていた以上にすごいものなんだと痛感したんですよ。制作の先にある宣伝とかも含めて、ひとつの作品をメジャーで世に出していくということは、これだけ多くの人が携わって駆けずり回ってくれているんだな、とあのときに初めて知りました。

晁直:想い出か。ドラム・フレーズに関しても、よりコアになったのは『EXODUS-EP』と『GALLOWS』以降だったんで、それまでやってきてなかったパターンのフレーズも増えてったんですよ。だから、個人的にはあの頃から練習量がかなり増えてったなっていう想い出がありますね。

悠介:僕にとってはどの作品も横並びなのでこれが特にお気に入りとかそういうのはないんですけど、自分の作った曲(「BE STRONG」)が最初に入ったアルバムという意味では『EXODUS-EP』ですね。あそこから、数は少ないですけどコンスタントに曲を入れていくことになったので、ひとつの始まりだったという点では自分にとって結構存在の大きい作品ではあります。

-悠介さんが『EXODUS-EP』でコンポーザーとして活躍されるようになったことは、メイン・コンポーザーである葉月さんになんらかの影響を与えましたか?

葉月:むちゃくちゃラクになりましたよ。アルバムだとバランス的に雰囲気系の曲とかも作らなきゃいけないじゃないですか。自分にとってそんなに得意ではないその領域を彼に任せられるようになったのは、ほんとありがたいです。あと、さっきターニング・ポイントっていう意味では『EXODUS-EP』を挙げましたけど、個人的に想い出深いアルバムという意味では僕は『Xlll』(2018年7月リリースのアルバム)を挙げたいです。

-その理由についてもぜひ教えてください。

葉月:『Xlll』までの作品は、いつも"lynch.はこうあるべき"とか"もっとこうなるにはどうしたらいいんだろう?"とか、lynch.というものを確立するために何かしら目指すところを意識したうえで作ってきたものなんですけど、『Xlll』のときはもうそれが何もなかったんですよ。流れとしては幕張メッセでワンマン("lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]")をやって、『SINNERS-EP』(2017年5月リリース)とか『SINNERS -no one can fake my bløod-』(2018年4月リリースのアルバム)を出したあとのタイミングで、あのときにはもうlynch.を確立するための時期は終わってたんです。だから、自信に溢れてたときだったし、今だったらどんなことをやっても面白いものにできるっていうんで、いろんなオマージュとかも入れたりしながら自由に作ったんですね。それがちゃんと人気を得るアルバムになったので、"もはやあんまり細かいことを考えなくても大丈夫なのかもしれないな"という感覚を持つことができたのが自分にとっては『Xlll』だったんです。

-きっと、その延長戦上にあるのが現時点での最新アルバム『ULTIMA』(2020年リリース)でもあるのでしょうね。そうなってくると、最後にデビュー10周年を経てなお第一線で闘い続けているlynch.は、ここから先に向けてどのような未来予想図を描いているのか、ということもうかがいたいのですが、そこはいかがでしょう?

葉月:5人組なんで、僕としては5人がこのバンドにいる理由というのをもっと大きくしていきたいですね。なんなら、作曲の面でも"自分の色はもうちょっと薄めてもいいかな"と思っているくらいだし、5人それぞれの色がわかりやすいほうがより魅力的かなって。

-なかなかこれは興味深いお言葉です。今の葉月さんからのご提案に対し、メンバーのみなさまはどのような思いを感じられますか?

悠介:僕はノーコメントです。

晁直:意見としてはいいと思いますよ。俺がそんなにカッコいい曲を生み出せるかどうかはわかんないけど、5人の色を強くしていくのはいいことなんじゃないですかね。

明徳:前までだったらちょっと抵抗を感じたかもしれないですけど、今までのかたちを崩してもいいよっていうGOサインがメイン・コンポーザーから出たんだとしたら、俺としてもその気持ちにはできるだけ応えたいって思います。

玲央:成立するかしないかは実際にそれぞれが曲を作ってみないとわかんないとはいえ、今回のボックスに入っているアルバムたちを見渡しても時期によって変化はありますからね。むしろ、長くバンドを続けていくうえではその時々で変化していかないほうが不自然で不健全だとも感じるんで、lynch.としてはこれからも様々な可能性を追求することはやっていくと思いますよ。まぁ、やってみてダメならそのときはもとに戻せばいいわけですし(笑)。これまでの10年がそうであったのと同様に、lynch.はみんなに失望ではなく希望を与えていくバンドであり続けられるように、これからもしっかりと進んでいきたいです。