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LIVE REPORT

UNEARTH

2023.01.17 @代官山UNIT

Writer : 吉羽 さおり Photographer:Leo Kosaka(UNEARTH/SABLE HILLS)、秋和 杏佳(Graupel)

米マサチューセッツ州出身のメタルコア・バンド、UNEARTHが2015年以来8年ぶりとなる来日公演"UNEARTH JAPAN TOUR 2023 with SABLE HILLS"を行った。今回のジャパン・ツアーと台湾公演には、ドイツで開催された世界最大級のメタル・フェス"Wacken Open Air"の"METAL BATTLE"で日本人初のグランプリを獲得したSABLE HILLSを帯同。SABLE HILLSにとってUNEARTHは、10代のときに聴いて以来、自身の教科書のような存在だという。そんなバンドとツアーで行動を共にする興奮と共に、ステージでは容赦なくプライドをぶつけていくSABLE HILLSのライヴと、コロナ禍も相まって飢えに飢えていた日本のメタルコア、メタル・ファンに超重量級のリフとビートとシャウトを存分に浴びせるUNEARTHのライヴで、久々にフロアが加速度的に沸き立つ感覚と痺れるような轟音を味わう夜になった。

今回レポートする1月17日の代官山UNIT公演には、東京発のメタルコア・バンド、Graupelも出演した。この日が2023年の初ライヴとなり、またそれが海外のバンドとの対バンだということで、溜めに溜めたエネルギーを一気に爆発させるパフォーマンスで、「Bereavement」からブラストビートとシャウトを放ち、エクストリームなサウンドでフロアに殴り込んでいく。観客も待っていたとばかりにこの音に応戦し、勢いに乗り遅れまいと温度を上げていく様子で、冒頭からフロアとステージとのいいコミュニケーションが生まれていた。ダイナミックに魅せるプレイと、フックやキャッチーさがあるサウンドのグリップ感と迸る熱量には、確実にチャンスをものにしていくバンドの気概がある。これは、次に続くバンドにもいいプレッシャーだろう。そのいいテンションが会場に満ちている。

ヘヴィな音に身体が馴染んだところで登場したのはSABLE HILLS。"ぶち上がる準備はできてるか"というTAKUYA(Vo)の声から「Snake In The Grass」になだれ込むと、重厚なリフとグロウルでフロアにヘッドバンギングを巻き起こす。メタリックなギター・リフやユニゾンによるきらびやかさがある一方で、全体でグルーヴしているうねりやスピード感が気持ちいい。新世代のバンドとして、またメタルの未来として期待を受けるSABLE HILLSのサウンドは馴染み深くも新しい。キャッチーでメタルコアのアイコニックなリフやリズム、展開がありつつも、定型やメタルコアのトレースに陥らない面白さがある。クラシックなヘヴィ・メタルやハード・ロック、プログレやロック、ハードコア・パンクなど幅広く吸収、解釈してきたものを、自分たちのヘヴィ・サウンドへと昇華し、様々な奥行きを見せるものとなっている。多様な角度で惹きつける旨味があり、迫力のあるパフォーマンスを叩きつけるのが痛快だ。さらにこの日は煽りもMCも熱い。"首の骨、全員で破壊しようぜ"とフロアを波立たせるようにヘッドバンギングさせ、今日がライヴ初めの人もメタルの心を取り戻したんじゃないかと、メタル愛を全身で表現させて、拳が突き上がるフロアは歓声と共に熱を発していくのが気持ちいい。

SABLE HILLSとしては、リスペクトするUNEARTHを空港に迎えに行ったところからこのライヴまで3日間、行動を共にしライヴをしと濃密な時間を過ごしている微熱感が、演奏にも言葉にも宿っている。昨年リリースしたアルバム『DUALITY』の曲を中心に、また「The Chosen One」ではGraupelのSota(Vo)が登場。ふたりのスクリームで暴れまくった。今年は3月に"LOUD PARK"の復活開催が決定し、また同月にはSABLE HILLS主催の"FRONTLINE FESTIVAL 2023"があり、国内外のバンドがラインナップされている。ラウドなバンドは特にコロナ禍で思うライヴができない状況が続いたが、日本でもようやくメタル・ファンが戻ってこれる現場が復活し始めている。このUNEARTHのジャパン・ツアーがその先陣となればという思いもあったようだ。バンドの思いに応えるように、ラストの「The Eternal」での"かかってこい。全員こい!"の号令と共に観客が跳ね回り、フロアも最高潮となった。

そしていよいよ、UNEARTHの出番である。セッティング中から明らかにこれまでを凌ぐ爆音が響き渡っていて、いやでも体温が上がる状況の中、大きな拍手喝采に迎えられて5人がステージに登場するや、Trevor Phipps(Vo)の咆哮で「Giles」からライヴをスタートした。重たい高速のビートがフロアを蹂躙して、ギター、ベースが鋭く空気をえぐっていくサウンドで、観客のリミッターがあっという間に外れていくのがわかる。この日のセットリストは、2001年のアルバム『The Stings Of Conscience』から2018年の『Extinction(s)』に至る中より、まんべんなくセレクトされた曲で構成され、長くこの日を待ったファンにとっては最高の流れで、どのイントロが来てもそのたびに凄まじいリアクションが巻き起こっていく。「My Will Be Done」ではSABLE HILLSのTAKUYAも登場。続く「This Lying World」ではフロアが割れ、大きなうねりやジャンプ、ヘッドバンギングで観客もビートを刻みすでに会場は汗だくだ。そこに畳み掛ける高速ドラムからの「This Glorious Nightmare」では、これぞUNEARTHというキレのある緩急と縦横無尽のビートに、観客が待ってましたとばかりに暴れ、コール&レスポンスで興奮を爆発させる。

またこのツアーでは、新曲「The Wretched; The Ruinous」もリリースに先駆け披露された。UNEARTHにとってリリースとしてはアルバム『Extinction(s)』以来で、また近日にリリースが予定されるニュー・アルバムからいち早く披露されたこの曲は、MVを日本で撮ったものになっており、今回のツアーの熱量が閉じ込められた映像となっている。マシンガン的なビートの攻撃性とプログレッシヴなサウンドが最高な1曲だ。そこからの中盤は、2000年代初期の曲が続く。中でも会場のテンションがぐっと上がるのは、2006年の3作目のアルバム『III: In The Eyes Of Fire』の曲たちだろうか。Terry Dateがプロデュースを手掛け、よりハードコア色の強い東海岸のシーンを牽引する存在となっていったアルバムからの「March Of The Mutes」や「Sanctity Of Brothers」に突入した際のフロアの歓喜は凄まじい。最初の来日が2005年のラウド、エクストリーム系のイベント"EXTREME THE DOJO Vol.13"だったが、その頃から追いかけてきたファンも多かったと思う。

終盤では改めて、ニュー・アルバムをリリースすることと今回のツアーが実現したことへの感謝を告げると、「The Great Dividers」、そして「Black Hearts Now Reign」までフルスロットルでタフなアンサンブルを響かせ、昨年から再びバンドに加わったMike Justianが、ダイナミックにジャンプしてドラムを打ち鳴らし白熱のジャパン・ツアーを締めくくった。このあとはオーストラリアを回り、台湾で再びSABLE HILLSと合流したUNEARTH。ライヴを観る限りでも、かなりいいテンションでアルバムが制作されているようで楽しみに待ちたい。

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