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LIVE REPORT

"DARKEST HOUR - Deliver Us Japan 2023"

2023.09.29 @代官山SPACE ODD

Writer : 吉羽 さおり Photographer:Leo Kosaka

米ワシントンDCで活動をスタートし約30年、メロディック且つ猛烈なヘヴィ・サウンドでメタル・ファンを痺れさせてきたDARKEST HOURが11年ぶりの来日公演を行った。"Everlasting Fire Presents DARKEST HOUR - Undoing Ruin Vs. Deliver Us Japan 2023"と題した9月28日、29日の公演は、初日は4thアルバム『Undoing Ruin』(2005年)、2日目は5thアルバム『Deliver Us』(2007年)と、バンドの代表作をフィーチャーしたスペシャルなセットとなり、満員の観客が歓喜の拳を振り上げる熱い2日間となった。

今回の来日は、SABLE HILLSのTAKUYA(Vo)、Rict(Gt)が立ち上げた海外アーティスト招聘プロダクション"Everlasting Fire"によって実現。メタル/ラウド・シーンを盛り上げるべく汗をかき、また一音楽ファン、メタル・ヘッズとしての"このバンドが観たい"という純粋な目線が利いた活動は今後も注目したいところでもある。この原稿では、代官山SPACE ODDで行われた"DARKEST HOUR - Deliver Us Japan 2023"をレポートする。

まずフロアを沸騰させたのはTHOUSAND EYES。SE「Dawn Of Despair」から「Day Of Salvation」に突入し、のっけからフル・スロットルのビートと重厚なリフの連打で観客を揺さぶっていく。"お前らバキバキに温まってるじゃないか"とDOUGEN(Vo)と観客のリアクションの高さに笑顔を覗かせながらも、さらに容赦ないブルータルなアンサンブルでフロアに野太いコールを巻き起こす。

ちなみにDOUGENは学生時代、2000年代に開催さていたメタル/エクストリーム系ライヴ・イベント"EXTREME THE DOJO"でDARKEST HOUR(2004年に出演)のステージを観て衝撃を受けたとMC。そこから時を経て同じステージに立つ今の興奮を、アグレッシヴなサウンドに還元した。長髪をしならせるギターやベースの豪快なプレイにサークルを起こしていく濃厚な30分。一番手にして、バンド、観客共にこの日への熱の高さが窺えるステージだ。

続くSABLE HILLSは、Wataru(Gt/Vo)が正式加入した新体制後初のニュー・シングル「A New Chapter」で幕を開けた。イントロでのヘッドバンギングから、スピードを上げてサークルを生み出し、そしてTAKUYAのシャウトと共に拳が突き上がる。続く「On My Own」では"やろうぜ、代官山"とシンガロングを起こし、「Bad King」の華麗なギターのメロディアスなユニゾンでは大きな歓声を会場に響かせた。観客のボルテージも高く、またこの日がちょうどUEDA(Ba)の誕生日ということもあり、フロアの方々から"ハッピー・バースデー!"の声や拍手があったり(アンコールではケーキと共に誕生日が祝われた)、曲間ではSABLE HILLSコールが巻き起こったりといいムードだ。

今回はDARKEST HOURの来日公演がトピックではあるが、THOUSAND EYES、SABLE HILLS、DARKEST HOURによるカップリング・ツアーでもあるとTAKUYAは語る。その意図を汲んだメタル・ヘッズが揃った会場の熱気は、言うまでもなく高い。この勢いでDARKEST HOURまで駆け抜けられるのかという状態だったが、「Crisis」、「Snake In The Grass」と重量感も加速度も増していくアンサンブルに観客は抑えきれないエネルギーを爆発させた。Keita(Dr)のずしりと身体に響く重たい高速ビートに会場の温度が跳ね上がった「Embers」では、"頭を死ぬまで振っていこうぜ"というTAKUYAの声を合図に、観客は思い思いに爆音に身を委ねて叫びを上げる。ステージとフロアが渾然一体となった轟音の余韻が心地よい、そんなステージだ。

そしていよいよDARKEST HOURが登場する。ステージ背面のスクリーンにアルバム『Deliver Us』のアートワークが掲げられ、5人の登場前から観客のテンションが一気に上がって、バンド名を叫ぶ声や歓声、手拍子が起こり、前のめりでステージに食らいついている状態だ。熱気が立ち込めるなか、1曲目はもちろんアルバム『Deliver Us』を幕開ける「Doomsayer (The Beginning Of The End)」である。冒頭から会場を酸欠にするような音圧とエネルギーがステージから放たれると、フロアの足もとから興奮と歓喜の声が湧き上がっていく。

続く「Sanctuary」のリフと高速ビートにサークルの輪が大きくなり、「Demon(s)」でダークに、妖しくバウンスするギターに"オイ! オイ!"とコールが絡み合って会場を揺らす。アルバムのリリースから16年。観客は何千、何万回と聴き込んできた作品だろう。もちろん次にどの曲がくるかもわかりきっているわけだが、実際、目の前で豪快なカウントやギターの咆哮が繰り広げられる興奮、身体に感じるヘヴィだが心地よい振動がもたらす高揚感は何にも代え難い。この瞬間を全身で楽しんでやろうというパワーが、さらにバンドの演奏をエネルギッシュにしていく感覚だ。

昨年リリース15周年を記念してアメリカとヨーロッパで『Deliver Us』のツアーを行っていたが、それが11年ぶりのライヴとなった日本でも実現したことはバンドのファン、メタル・ファンには堪らないものだろう。さらに今回の日本の2公演は『Deliver Us』と『Undoing Ruin』の再現ライヴという、スペシャルなステージになった。『Undoing Ruin』でのライヴについてはDARKEST HOURからの提案だったそうで、日本での久々のライヴに向けたバンドの心意気が伝わる。このステージに溢れるパワーは、まさにその思いを体現するものだろう。

中盤のドラマチックな「A Paradox With Flies - The Light」から叙情的な「The Light At The Edge Of The World」で聴かせ、そして「Stand And Receive Your Judgment」ではJohn Henry(Vo)が大きく手を回して再びフロアをかき回していき、ライヴは早くも後半へと突入する。そのハイライトはうねりを帯びて壮大に展開していく「Tunguska」。2本のギターが掛け合い、またじっくりと編み上げていくサウンドでフロアを酩酊させて、ヴォーカルが渾身の叫びを轟かせると、観客は高く腕を掲げ、拍手や歓声を上げた。そこから矢継ぎ早に、ラスト「Deliver Us」までスピードを上げていくカタルシスは凄まじく、Johnがフロアへと突き出したマイクに観客は声を枯らしてシンガロングを続け、熱気で煙った会場内は天井知らずで盛り上がっていった。

アンコールに立ったDARKEST HOURは改めて今回の来日、ステージを共にしたTHOUSAND EYES、SABLE HILLSに感謝を述べると、さらに3曲をプレイ。「The Sadist Nation」ではSABLE HILLSのTAKUYAを招き入れ、特大のサークルを生み出して盛大に11年ぶりの日本公演を締めくくった。来年、ニュー・アルバムをリリース予定でもあるDARKEST HOUR。次なる日本でのライヴはそう遠くないかもしれない。

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