LIVE REPORT
ROTTENGRAFFTY
2014.11.21 @Zepp Tokyo
Writer 山本 真由
盟友10-FEETと並び、京都を代表するバンドとしてラウドロック・シーンに君臨する"古都のドブネズミ"ことROTTENGRAFFTYがバンド結成15周年を迎え、東名阪のワンマン・シリーズを含む"15th Anniversary TOUR「ROTTENGRAFFTY」"を開催した。昔からロットンを支え続けてきたファンはもちろん、ここ数年どんどん勢いを増している彼らの新たなファンも詰め掛け、ツアーは軒並みソールド・アウトを記録。11月21日(金)にZepp Tokyoにて行われた、そのツアー・ファイナルにあたる東京公演もまた、大盛況のうちに幕を閉じた。
これまで、決してすべてが順風満帆というわけではなく、"苦労人バンド"というイメージの強いROTTENGRAFFTY。メジャー落ちから這い上がってブレイクするまでの苦闘、その泥臭い戦いがその身に刻まれているからこそ、努力の大切さも、人の温かさも一際理解し、またそれをファンや後輩たちに伝えてきているバンドだと思う。そして、すべてが与えられてきたわけではないからこそ、与えることの喜びを知っているバンドだと思う。今回のツアー・ファイナルを観て、そんなことを考えていた。
この日は、フロアを仕切る柵もまったく見えないほど満員の1階スタンディング・フロアはもちろん、2階席まで満席の完全ソールド・アウト。立ち見の関係者たちも大勢いて、人口密度はかなり高い。開演前から会場にひしめく熱気が、ライヴの期待感に拍車をかけていた。
少し時間がおして、まだかまだかとファンたちがそわそわし始めたとき、会場が暗転して、ステージ前に下りていた幕に映像が投影された。結成の1999年から、これまでを駆け足で振り返る映像のあと、"Are you ready?"の文字が! 大歓声が沸き起こり、続いて投影されたカウントダウンの数字とともに、フロア一体となったカウントダウンのコールが響く。"3、2、1!"カウントが終了し、1曲目の「世界の終わり」で、文字通りの幕開け!
"俺たちROTTENGRAFFTYの15年分の魂、受け止める覚悟できてんのかー?"という、NOBUYA(Vo)の言葉に、オーディエンスの闘志も燃え上がる! "どうやって恩返ししたらいいかわからないけど、ロットンらしくお前らと大ゲンカしたいんや!"というNOBUYA(Vo)の気迫に満ちたアジテーションの通り、ステージとフロアのこのアツい魂のぶつかり合いは、この瞬間からSHOWのラストまで熱を失うことはなかった。
まさにロットン印のメタルと日本的メロディの融合が際立つ「銀色スターリー」では思い切り踊り、懐かしい正統派ラウドロックの「暴イズDE∀D」でモッシュし、「I & I」では"テレビとかYou Tubeには映らない光景や! いくぞ!"というN∀OKI(Vo)の号令と共に、全員で天井のミラー・ボールに向かって特大ジャンプ! 昨年リリースした目下最新アルバム『Walk』の楽曲はもちろん、歴史のあるバンドらしい、新旧織り交ぜた楽曲で次に何が来るのかとわくわくさせられるセット・リストだ。
14年前、10-FEETと東京で初めてライヴをやったときは、会場に出演者しかいなくて、初めての東京でのライヴなのになぜか京都の仲間の前でライヴをやるという不思議な感じになってしまった......しかもそれが、マキシマム ザ ホルモンのダイスケはんがバイトしていた八王子のライヴハウスだったという、今では信じられないようなネタ的な思い出話も飛び出し、笑いをとりつつも、"諦めることを忘れて、とりあえず続けてくれ"と、信念を持って継続することの大切さが語られた。そこからシンガロング・パートが激アツな「灯」へ。"僅かな望みさえ消えそうになっても微かな願いを忘れないでと 燻ぶる灯心深く火を点け"という歌詞は、まさしくこの15年諦めることをせず、困難に立ち向かって生き残ってきた彼ららしい、ファンへのメッセージだ。そして、その勢いのままハードコアからスカまで振れ幅の広い「鬼ごっこ」ではロットンらしいカオスを生み出し、続く「ケミカル犬」では右手にタオル! "Zepp Tokyo、ダンスのお時間ですよー!"と始まった「D.A.N.C.E.」にフロアは一気にダンス・モードへ。そこからさらにダブステップの要素も取り入れたモダンなラウド・ナンバー「STAY REAL」でも、カラフルなレーザーライトに照らされたノリノリのフロアはツー・ステップ。本当に、息つく暇もないほど容赦ない選曲は、さすがAnniversary LIVE!
ここで、これまでのバンドの軌跡が少し語られる。中学のときに父親から勉強机代としてもらったお金でエレキ・ギターを買って、ボコボコに怒られたというNOBUYAのルーツとも言える少年時代のエピソードや、メジャーでの悔しい思い、そしてつらい時期に支えてくれた人たちへの感謝。それらすべての"意味のある偶然"をもう1度確認するために......感動的なナンバー「Synchronicitizm」が披露された。そして、シリアスな雰囲気は一転して「響く都」でお祭りモードに。地元を愛するロットンらしい1曲だ。
さらに、この日はゲストとして「かくれんぼ」と「零戦SOUNDSYSTEM」にDJ YASAが参加。軽やかなスカを取り入れたミクスチャー・ナンバーの「かくれんぼ」と、ステージに炎の演出も飛び出した迫力のあるラウド・ナンバー「零戦SOUNDSYSTEM」に、DJ YASAのクールなスクラッチがに見事にマッチ。普段の5人でのライヴとはまた違った自由度高いパフォーマンスに、オーディエンスのテンションも駆けのぼる! 続く「夕映え雨アガレ」では、お祭り騒ぎのビートにモッシュ・ピットの激しさも絶好調に。
"ここ何週間、みんなへの言葉を探してたけど......やっぱり、ありがとうしか出てこうへん。ほんまにありがとう!"とKAZUOMI(Gt/Prog)が、これまで支えてくれたファンのみんなへ感謝の思いを語る。"もし周りに人生のどん底にいると思ってる奴がいたら、声をかけて助けてやって"自分たちが周囲に支えられて、つらい時期も乗り越えてきたことが力になっているバンドだからこそ、その言葉には説得力がある。そして、"みんなの人生に捧げます"と言って、奏でられたのは「Walk」。優しいメロディと、しっかりした日本語詞が胸を打つ。雪が舞うようなドラマティックな演出に大合唱、感動的な一幕だった。そして、"オレたちとお前らの大事な歌"と言って「Familiarize」が披露され、ラストは「金色グラフティー」でテンション大爆発!
もちろんこれで終われるわけはなく、オーディエンスからの拍手とROTTENGRAFFTYコールが響く。そして、アンコールに答えて再びメンバーが登場! ここで侑威地(Ba)が、"今日は今まで言ったことのない言葉を贈ります。愛しています、ありがとう!"と、ファンへのメッセージを語ると、HIROSHI(Dr)は、用意して来た手紙を読み上げた。率直な文章で綴られた感謝の気持ちと"これからはオレがみんなを支えてくから! ついてこい!"という頼もしいセリフにフロアからは歓声が上がった。メンバーからのツッコミも入りつつ、この一連のやりとりというか、こういう親しみやすさと、真っすぐでアツい一面のバランスの良さもまた、彼らが愛される所以だと思う。
アンコールでは「マンダーラ」、「Bubble Bobble Bowl」、「切り札」が披露され、「Bubble Bobble Bowl」ではウォール・オブ・デスではなく"ウォール・オブ・ソウル"とか"ピース・オブ・ソウル"とか、もはや原型の無い名前(笑)になった、左右のブロックが平和的に入れ替わる試みも。なんだかよくわかんないけど楽しい! みたいな雰囲気に包まれ再び終演を迎えるが、これでもまだ足りない! という会場の熱気に答えて、ダブル・アンコールまで! 終始気合の入ったライヴで、まだこんなにやれるのかと思うくらい、「TIME IS OVER」と「毒学PO.P 革新犯」ラスト2曲の最後の最後まで"15年分の魂"がこもったパフォーマンスだった。
ROTTENGRAFFTYというバンドの魅力。畳み掛けるような独特のリリックと、NOBUYAとN∀OKIの息の合った掛け合いヴォーカルは、このバンドの強い武器だ。そして、もちろんスラッシーなフレーズもメロディアスなフレーズも情感たっぷりに弾きこなすKAZUOMIのギター、踊りながらヘドバンしながらパッションで奏でられる侑威地のベースも、そしてタフなドラミングとはギャップのあるHIROSHIの愛されキャラも......何ひとつかけてもそれはROTTENGRAFFTYではない。この5人で15年という歳月をかけて作り上げてきた、素晴らしい楽曲、パフォーマンス、そして唯一無二のROTTENGRAFFTYというバンドそのもの。その魅力すべてが集約された素晴らしいステージだった。
この夜は、これまでの歩みに一区切りをつける特別なライヴではあったが、もちろんROTTENGRAFFTYの旅はこれで終わりではない。これからも、ライヴで、作品で、新しい景色を私たちに魅せてくれるに違いない。
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