LIVE REPORT
ACME
2025.06.14 @shibuya CYCLONE
Writer : 杉江 由紀 Photographer:SACHI
水陸両用バスというものをご存知であろうか。その名の通り地上ではバスとして公道を走行する一方、湖や川や海においては船舶としての航行ができる面白い乗り物だ。思うに、ACMEというバンドはこの水陸両用バスに近い特性を持っているような気がしてならない。なぜなら、彼等は始動した2017年当時からいい意味での天邪鬼気質を持ったバンドで、ヴィジュアル系界隈ではメタルコア要素をいち早く我が物とし、それも単に既存のお手本をなぞるのとは違う、ACME流の粋な洒落っ気を孕んだスタイルとして見事に確立してみせたからだ。
ただ、ハイブリッドな面を持つバンドには、あらゆる意味で"1つの色には染まれない"という宿命が付きまとう。水陸両用バスが公道で目立ったり、水上でもすぐそれと分かったりするのと似ていて、ACMEはV系バンドと対バンしても、メタル系バンドと対バンしても、あくまでACMEでしかない音とパフォーマンスを常に提示してみせるのだ。よって、どの場でも彼等は"浮いて"しまうことにはなるものの、そのくらいにACMEの持つ個性は明確であり、ACMEは陸上だろうと水上だろうと、その都度自由に進みたい方向へ着実に邁進してきた印象がある。
"早いもので、ACMEは8周年を迎えました。体感的には3年くらいなんですけど、今までいろんなバンドをやってきた中で、こんなに続いたのはこのバンドが初めてです。皆さんのおかげで続けられています。ほんとにありがとうございます。10周年が先のほうに見え隠れしてますが、一緒にここからみんなと10周年を迎えていけたらいいなと思ってますので、これからも応援よろしくお願いします!"(CHISA/Vo)
このたび行われた"ACME 8th Anniversary Live Tour 2025 -Modern day witch hunt-"の東京公演においては、ヴォーカリスト CHISAがこのように言及しただけあって、セトリとしては、天邪鬼であり続けてきたACMEの8年間をぎゅっと凝縮した内容になっていたところが、痛快この上なかった。
特に、最新シングル曲「Modern day witch hunt」を聴けた場面では、もともとメタルコア要素をいち早く取り入れたACMEが、もはやそのフェーズを超えた次元で、世界を撃てる現代型メタル・サウンドをリアルに体現してくれていたところに、感銘を受けるに至った次第である。隙なしでどメタルな鉄壁リズム・ワークの中に遊び心をもチラつかせてくるHAL(Dr)、得意のフィンガリングに加え、ブレイクダウンではピックも使用して鋭いエッジ感をプラスしていたRIKITO(Ba)、ザクザクしたリフからトリッキーなタッピングまで巧み且つ派手にギターを弾き倒す将吾、そして、SNS社会の危うさを"現代の魔女狩り"になぞらえた英詞を、なめらかにして感情表現の豊かな歌で聴かせるCHISA。8年の月日を経て、ACMEは今最も研ぎ澄まされた状態にあるのかもしれない。
また、本編にて、オーディエンスが楽しそうに扇子を降りながらの横モッシュに興じていた「マグロ解体チェーンソー」や、アンコールで場内にサークル・ピットが出現した「テバナシライダー」等、今回のライヴではいわゆる初期曲も惜しみなく披露されたため、そうしたところでも"8周年"の雰囲気は目一杯に満喫することができた。
水上でも、陸上でも、どこでもございで天邪鬼気質なACMEの快進撃。どうやらここから10周年の節目に向けては、ますます勢いが激化していきそうだ。
[Setlist]
1. Kagaribi
2. ウルフへズナル
3. PARTY METAL ANTHEM
4. Modern day witch hunt
5. STAND UP
6. マグロ解体チェーンソー
7. MELODY
8. 洗 脳
9. 放課後の飼育
10. 「みなさんが静かになるまで3分かかりました。」
11. 激ヤミセレナーデ
12. Resisted temptation
13. Barguest
14. RISING SUN
15. ROTTEN ORANGE
En1. 絶唱謳歌
En2. テバナシライダー
En3. カノン
En4. SENKOU
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