INTERVIEW
ACME
2022.11.17UPDATE
2022年11月号掲載
Member:CHISA(Vo) 将吾(Gt) RIKITO(Ba) HAL(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
躊躇ない前進こそが未来へと繋がるのだ。日本のバンドとしてはいち早く"Unbreakable Tour 2021"で米国遠征を再開し、今夏にもUSツアー"FAKESTAR Presents ACME NORTH AMERICA SUMMER TOUR 2022 「WILD FIRE」"を敢行したACMEが、いよいよ11月19日から来年1月14日のSHIBUYA CYCLONE公演まで続く"ACME Live Tour 2022 IN JAPAN"で国内ツアーを再開することになった。同時に、このたびは3年ぶりのフル・アルバム『Resisted temptation』も完成。どこであろうと、どんなときであろうと、どんな状況であろうとも。タフなロック・バンドとしてサヴァイヴし続けてきたACMEだからこそ生み出せる頼もしき音は、もはやジャンルも国籍もすべてを超え響いてゆくに違いない。
-3年ぶりのフル・アルバム『Resisted temptation』がこのたび発表されますが、今作はACMEにとっての3rdフル・アルバムであり、最新シングル曲「Kagaribi」を筆頭に、"コロナ禍以降の軌跡"を集約したものにもなっております。日本のバンドとしてはいち早く"Unbreakable Tour 2021"でアメリカ遠征を再開したことや、今年の夏にもUSツアー"FAKESTAR Presents ACME NORTH AMERICA SUMMER TOUR 2022 「WILD FIRE」"を敢行したことを考えても、ACMEがこの3年間ずっと攻めの姿勢で邁進し続けてきたことは間違いなく、そのことがこのアルバムでは説得力ある力強いサウンドとして聴き手側に伝わってきますね。
CHISA:自分たちとしては、実を言うと3年ぶりにやっとアルバムを出したい! というような意識でいたわけでもなくて、基本的にはシングルをコンスタントにずっと出し続けていこうって姿勢でいたんですよね。というのも、コロナ禍を経て時代がまた変わってきたのもあって、日本でも最近は、サブスクとか配信で音楽を聴くっていうスタイルがだいぶ定着してきたじゃないですか。
-CDを買うために外へ出掛けずとも、簡単にいろいろな音源を聴くことができるようになりましたものね。
CHISA:僕らの場合はコロナ禍の以前から海外ツアーやってましたけど、そのときもわりとそうだったし、去年2年ぶりに向こうに行ってみたときには、もはやライヴハウスですらCDをかける機材を置いてなかったですから。
-えっ! それはさすがにまだ日本では考えられない状況ですね。
CHISA:ライヴのときに流すSE用のCDを現場に持って行ったら、PAの人に冗談だと思われましたもん。"おい、いつの時代の話をしてるんだ!?"って。
将吾:そうそう、シカゴでね(笑)。普段はメールでデータ送付するかUSBメモリでのやりとりをしてるみたいで、それが向こうでは普通だって言ってました。
CHISA:そういう経験もあったんで、僕らとしてはCDでアルバムを出すことは念頭に置かず、シングルを出し続けていたんですけど、ここに来てようやく2回の延期を経て日本でも大きなツアー"ACME Live Tour 2022 IN JAPAN"をやれることが決まったんで、それに向けて久しぶりにアルバムとして音源を出そうかとなったのが、この『Resisted temptation』だったんです。内容としてはこれまでシングルとして発表した曲をリマスタリングしたものと、新曲を入れた構成になってます。
-その新曲「Resisted temptation」は今作におけるタイトル・チューンでもありますが、この曲やアルバム自体を制作していく際に、アメリカ・ツアーなどでの経験がフィードバックされた部分というのは何かありましたか?
RIKITO:それはいろんな面でめちゃくちゃありますね。英詞も増えたし。
HAL:楽曲にしても、歌詞にしても、そこの影響はかなり色濃く出たと思います。特に「Resisted temptation」に関しては曲を作り始める段階で、アメリカのライヴハウスで演奏しているみたいなイメージが湧いた状態で作ったところがありましたね。っていうのも、向こうはもう普通に声も出せるし、もともと日本人より掛け声がデカかったりもするので(笑)、これから日本で久しぶりに大きいツアーをやるんだよなと思ったときに、本来ACMEが思い描く理想のライヴの光景とは? って思い浮かべたら、どうしてもアメリカ・ツアーのときのことが甦ってきてしまったんですよ。
-どういうわけか、日本ではまだまだ規制が多くて自由にライヴをすることが叶わないのが現状ですものね。それだけ、この「Resisted temptation」にはACMEの切なる願望が詰まっているということなのでしょう。実は、この曲を聴いたときにまず頭の中に浮かんできたのは、あのダイナミックなイントロが始まると同時に、ハコの中にいるオーディエンスが一斉にサークル・モッシュを始めるという光景だったりもしました(笑)。
HAL:そうなんですよ! まさにこの曲はそういう図を想定しながら作ったんです(笑)。
-やはりそういうことでしたか。音からその感覚がリアルに伝わってきます。
HAL:このアルバムの5曲目に入ってる「WALK」もそうなんですけど、やっぱりこのところ作っている曲には、自分たちの願いを込めてるところがすごくありますね。声だけじゃなくてみんなでまたモッシュできたらいいよね、とかそういう素直な気持ちをそのまま音として表現しているんですよ。
将吾:アメリカの場合は今やダメなことってほぼないですからね。
CHISA:去年はまだ場所によってマスクしてくださいくらいのお願いは出てたけど、それも実質ライヴ中はみんな取っちゃってましたから。今年の夏はもう何も規制はなかったし、街中でもマスクしてた人は1割いるかどうかくらいだったと思います。
-いち早くその空気感をアメリカで感じてきたACMEだからこそ、今この音が作れたという事実は非常に注目すべき点だと思いますが、新曲「Resisted temptation」はどのようなプロセスで生まれたものだったのですか?
RIKITO:種となるものを最初に提示してくれたのはHALさんでした。もともとは新曲候補の種が他にもいくつかあって、そこから選ばれたのがこれでしたね。決め手としてはテンポ感にしても雰囲気にしても"今ライヴでやるんだったら、きっとこういう曲があるといいよね!"っていうところが一番大きかったです。
-そんな「Resisted temptation」を仕上げていくなかでは、この音を聴くにサウンドメイクの部分でこだわられたところも相当あったのではありませんか。
RIKITO:たしかに、この「Resisted temptation」は今までで一番って言ってもいいくらいそこに時間をかけた曲になりました。
HAL:なんなら、一時的には"出す/出さない"問題まで行っちゃったくらいです(苦笑)。
将吾:作ってる最中に"こんなんじゃ出せねぇよ!"みたいになったんですよ(笑)。
CHISA:今になって客観的に考えると、メンバー全員が"そこまで気にするか!?"っていうくらい細かいところまでこだわりまくってましたねぇ。
HAL:曲の最後のブレイクダウンのところなんかは、ミキサーさん的にはご法度だったんでしょうけど、こちらからは"もっと音が割れるくらいバスドラを大きくしてください! というか、むしろ割れてもいいです"っていう要望を出したんですよ。
将吾:そうしたら、ミキサーさんのほうも"だったら俺がやらなくたっていいじゃん"となっちゃって(笑)。
RIKITO:向こうからしたら音を割らないようにしながらきれいに整えるのが本来的な仕事だからね(笑)。
-なるほど。バンド側とミキサーさんとの激しい攻防戦を経て、これだけ迫力と音圧の高い音が生まれたのですね。
HAL:結果、ギリギリのところでやってもらう感じになりました。この「Resisted temptation」は歌詞も自分が書いていて、直訳すると"誘惑に抵抗してみた"っていう意味になるんですけど、そのあとそのまま誘惑に負けてしまうのか? それとも抵抗して我慢した末に自分の内にあるものを放出するのか? だと、そこは違いがあるなと思っていて、ここではその後者の感覚をバスドラのあの割れんばかりの音で表現してるんです。
-それだけの音圧で迫られたときに、音の面での相方であるベーシスト、RIKITOさんはその状況に対してどのように対処されたのですか?
RIKITO:いや、そこはバスドラの音に負けて良かったんですよ。HALが言ってるバスドラっていうのはあくまでも曲の中の1セクションなんで、そこはHALが前面に出るべき場面ですからね。
HAL:まぁ、あれはドラム・ソロみたいなもんかもな(笑)。
RIKITO:だと思うよ。そこは理解したうえで、あとは自分のやるべきことをやっていっただけですね。音的にはベースもこれは今までで一番歪んでるかもしれないです。そして、この曲はアルバムの2曲目に入ってる「Come Back to You」に続いて、作曲者であるHALさんからの依頼に応えて、2回目のピック弾きレコーディングをしました。
-あえてピック弾きに変更した理由は、音にアタック感やエッジ感を持たせたかったからということになりますか?
RIKITO:それもあるし、曲調や音色との相性という意味でも、ドンシャリな音を出すには指弾きよりピック弾きのほうがより適切だろうということになったんですよ。おそらく自分個人の判断だったらそういうやり方はしてなかったと思いますけど、原曲を作った人の意向を汲んだことによって自分も今回またひとつ新しい発見ができました。