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INTERVIEW

ACME

2022.11.17UPDATE

2022年11月号掲載

ACME

Member:CHISA(Vo) 将吾(Gt) RIKITO(Ba) HAL(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

音なんて常識がどうこうじゃなく、聴いてカッコいいかどうかっていう話でしかない


-将吾さんの場合、ギタリストとして「Resisted temptation」の中で果たしていくべき役割とはどのようなものであると把握されていたのでしょう。

将吾:僕も今回は普段やらないことをしましたね。イントロの部分は自分のギターじゃなく、スタジオにあったエンジニアさんの私物ギターを急遽借りて録りました。

HAL:借りたくせに"弾きづらっ!"ってディスってたよね(笑)。

将吾:なんとなく自分のギターじゃちょっともの足りなくて、たまたま目に入ったそのギターを使ってみようかなと思ったら、音の立ち上がりとかは速いからこれはいいかもしれないと感じた反面、結構特殊なネック形状だったし、音の立ち上がりが速いぶんピッキングの強弱が大げさなほどすぐ音に出ちゃうんですよ。

HAL:あれはほんと繊細なギターだと思う。

将吾:だから、正直めちゃめちゃ弾きづらかった(苦笑)。でも、できた音を聴いたらあれを使って良かったなって自分もみんなも納得しましたよ。

-ラウドロック色の強い「Resisted temptation」においては、ギタリストとしての将吾さんの持ち味がいかんなく投入されたかたちとなったようですね。

将吾:今まで自分が研究してきた成果は充分に持ち込めたと思いますね。具体的なことはここではあんまり言いたくないけど(笑)。

-秘伝の技がふんだんに盛り込まれているわけですね。

将吾:結局、ギターの音作りについても海外でいろんなバンドと一緒にライヴをやるようになって学んだことが多いんですよ。もちろん電圧の違いとかもあるから、同じタイプのMarshallでも、日本とアメリカでは鳴らした瞬間に音が違うっていうのもあったりはしますけど。ただ、最も重要なのはそこではないですね。どのへんの周波数をいじればいいか、どんな録り方をすればいいかっていう考え方の部分で、向こうのミュージシャンからノウハウを盗んだ、と言うと言い方はアレですけど(笑)、アイディアを取り入れさせてもらったところがかなりあります。

-それは先ほどのドラム録りのときのお話のように、日本人の感覚からいけば半ば常識的なラインを越える大胆なアプローチでもあったりして?

将吾:まさに、そういうところがめちゃめちゃありますね。日本のバンドマンから"その音どうやって出してるんですか?"って聞かれて、設定を見せるとすごく驚かれることが結構あるんですよ(笑)。"普通に考えたらそんな機材設定はありえない!"ってみんな感じちゃうみたい。でも、音なんて常識がどうこうじゃなく、聴いてカッコいいかどうかっていう話でしかないじゃないですか。

-ごもっともです。それにしても、これだけ圧の高いダイナミックなサウンドが仕上がって来たときに、ヴォーカリストであるCHISAさんは、歌でこの曲の持つポテンシャルをどこまで引き上げてみたいとお考えだったのでしょうか。

CHISA:この曲に関しては歌メロも詞もHALさんが作っているので、そこをどれだけ自分がブラッシュアップできるのか? ということを考えながら歌っていきましたね。うちのバンドはどのメンバーが持ってきた曲なのか、詞なのかというところで、いろんなカラーの曲が生まれていくバンドでもあるし、そのレンジの広さも武器のひとつではあるんですけど、いずれにしてもそれをACMEらしく自分のものにして歌うという意味では、今回もそこはいつもと変わらない姿勢で臨みました。

-ACMEにはフィクション要素のある歌詞の曲もいろいろあったりしますけれど、こと今回の新曲「Resisted temptation」については、コロナ禍以降の日々でみなさんが感じてきたことをベースにしてあるような内容となっていますから、CHISAさんとしても感情移入がしやすかったところがあったのではありませんか。

将吾:ほんと、この詞は完全に自分たちにとっての日常です(笑)。

CHISA:それに、このところのHALさんの歌詞って基本"頑張れ!"って強めに言ってるようなものが多かったんですけど、これは違うんですよ。

HAL:"誘惑に負けちゃうこともあるよね。しょうがないよ!"っていう詞だからね(笑)。

CHISA:誘惑に負けた先の向こう側にある世界はこんなんでしたっていう歌なんですよ。

-こちらのヴォーカル・ディレクションはHALさんがされたのですか?

HAL:原曲と詞を作った人間として、当然そこは立ち会いました。英語の部分とかは、事前にLAにいる友達のバンドマンに歌詞を送ってネイティヴの発音で歌ってもらって、それをCHISAと共有して参考にしてもらったりもしましたね。やっぱり、日本人だとわからない"ここの音は発音しないんだ!?"みたいな部分はネイティヴの人間に監修してもらうと完成度が変わってくるんですよ。

CHISA:コロナ禍を挟んでのここ数年は向こうとのツテもできているので、最近はそれを活用させてもらってます(笑)。カナダやアメリカのメタルコア・バンドと対バンして築き上げた、ひとつの財産みたいなものになってるなと思います。

-これは余談になりますが、現地の人々からするとACMEの存在というのはどのように映っているのでしょうね。ちょっと興味があります。

将吾:これは冗談でもなんでもなくて、マジで"こいつらうめーな!"って思われてるみたいですよ。

RIKITO:なぜなら、リハ前とリハ後ではまったく態度や対応が違うんです(笑)。

将吾:最初は"日本から小僧たちが来たな"みたいな感じなのが、1回ちょっと演奏すると掌がいきなり裏返るっていう。

HAL:急に"お前らすげーな!"ってなるよね(笑)。

CHISA:そうそう(笑)。

-素晴らしい。音で異国の人々をやすやすと納得させることができるだなんて、誇らしいにもほどがありますね。今回のアルバム『Resisted temptation』は、きっとまた海外勢にも聴いていただけることでしょう。ところで、ここで改めて今回アルバムのタイトルについて、"Resisted temptation"と冠した理由をぜひ教えてください。

HAL:そもそも「Resisted temptation」の詞は、自分が山を登っていたときに遭難しかけて、暗い山道をひとりで彷徨った経験から生まれたものだったんですよ。登ったのはそこまで高い山でもなかったし、実は家からそこそこ近い山でもあったんですけど、そこはちょっとナメてたんでしょうね。ほんとの暗闇って怖いんだなって思い知ったときに、歌詞の中では諦めちゃってるんですけど、現実には諦めずに歩いて山の避難小屋まで辿りついて一夜を明かしたことがあって。そのときに20キロの装備を背負って歩きながら感じた"死にたくない"っていう率直な気持ちが、この詞を書く大きなきっかけになりました。

将吾:ちなみに、そのときの様子はYouTubeのHALさんのチャンネルで観られます(笑)。

HAL:あれはほんとにリアルなやつだからね(笑)。いやでも、あのときに感じたんですよ。"なんだかんだあっても、生きてれば勝ちだな"って。

CHISA:そんなことも含めつつ、次のツアーに向けたアルバムということを考えても、これは"Resisted temptation"ってタイトルしかないよねって、今回は満場一致でアルバムのタイトルが決まりました。

-いやはや、このアルバム『Resisted temptation』を携えての"ACME Live Tour 2022 IN JAPAN"が楽しみになってまいりましたよ。

将吾:海外と違って日本でのツアーでは、"音が出ない"とか謎のトラブルに見舞われる可能性がまずないし(笑)、いろんな面での環境は間違いなく整ってるんで、バンドとしてはやりたいようにやりたいことができるツアーになりそうだなと思ってるんですよ。ライヴ自体に集中してやれるっていうのは、ほんとに嬉しいですね。1本ずつやりながらさらにカスタマイズしていくような余裕も持てるだろうし、久しぶりの日本でのツアーでもあるので、これはACMEにとって大事なツアーになっていくと思います。

RIKITO:最近"ACMEはアメリカびいきしてるんじゃないか"とか言われたりもするんですけど(笑)、今度のツアーでは、今までコロナ禍で行けなかった日本のいろんなところに行けるというのもあるし、久しぶりに観てもらったら、絶対に前よりライヴ・バンドとしてレベルアップしてることは保証するので、ACMEとして伝えたいことを日本のみんなにしっかりと感じてもらえるようなツアーにしたいですね。

HAL:自画自賛っていうわけではないんですけど、楽曲の完成度にしても、ライヴの演奏にしても、自分たちはACMEというバンドに対して自信を持ってまして。現実には絶対無理なんですが、自分自身もACMEのライヴをフロアで楽しみたいなぁってよく思うんですね(笑)。まだライヴハウスに行くのは冒険だって感じる人もいるかもしれないですけど、ロックの本場、アメリカでも通用するACMEの音をぜひみなさん体験しに来てください!

CHISA:僕はとにかくやる国がどこだろうが、ライヴが好きだしツアーが好きなんですよ。制作したり準備したり練習したり、バンドで動いてる時間にはいろいろありますけど、ステージで歌ってるときがやっぱり一番大好きなんです。ある意味そのために生きてると言っても過言ではないんですけど、当然ライヴっていうのは各会場にみなさんが来てくれることで成立するものでもあるので、今回のツアーでは一ヶ所一ヶ所のライヴを大切にして、素敵な時間をみんなと共有していきたいなと思ってます。会場で会いましょう!