INTERVIEW
ACME
2025.04.28UPDATE
2025年05月号掲載
Member:CHISA(Vo) 将吾(Gt) RIKITO(Ba) HAL(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
美しいけれど凶悪。"Modern day witch hunt"と題されたACMEの2025年第1弾作品は、現代の魔女狩り=SNS社会の功罪について英詞で描く一方、モダンにして"鬱蒼としたダークと耽美なゴスのエッセンス"をも取り込んだ最新鋭のヘヴィ・サウンドが詰め込まれた、秀逸なる仕上がりだ。なお、マスタリングを担当したのがAC/DC、KISS、METALLICAをはじめとして、YELLOW MAGIC ORCHESTRA や米津玄師等も手掛けたTed Jensenである点にも要注目!
重たい音楽の中でも"これが新しいよね"っていう部分は絶対入れたい
-2024年5月に発表された、4thアルバム『PARTY METAL ANTHEM』から約1年が経とうとしているこのタイミングで、ACMEにとって19thシングルとなる「Modern day witch hunt」が世に出ることとなりました。あのアルバムについての取材(※2024年5月号掲載)ではHALさんが"もうここまでやったら、次に何をやっていいか分からないくらいです(笑)"、そしてRIKITOさんも"これ以上のものってあんのかな? って完成したときに感じました"とおっしゃられていたのですが、この2025年第1弾作品に向けてバンド内ではまずどのように方向性を定めていくことになられたのでしょうか。
HAL:たしかにあのアルバムを一生懸命作ったのは間違いないし、あの時点では"次にどうしよう"とすぐに思い付かなかったのも事実です。ただ、だからといって"これでもう終わりだー"ってなったわけではないんですよ(笑)。
RIKITO:もう何も作れない、みたいな感じになってたわけではなかったです(笑)。
将吾:だから、普通に"そろそろ新しい曲、出しますか"って作り始めたのが「Modern day witch hunt」だったってことですね。
CHISA:ちなみに、時期で言うと今年1月からの1ヶ月間は曲作りに集中してました。というのも、去年12月にツアー・ファイナルのライヴ("ACME Live Tour 2024 -ACMETAL PARTY-")で"4月には新曲を出してリリース・ライヴもします!"って、まだその時点では何もできてない状態なのに僕が宣言しちゃってたからなんです(笑)。
-そういえばそうでした。つまり、あのフライング発言でCHISAさんは自分たちに発破を掛けたわけですね?
CHISA:そういうところもあったし、逆に言うと自信もあったんです。"絶対そこまでにはいいものを作れるだろう"って。
-その後の約1ヶ月の間に、何曲くらいの候補曲が上がったのですか?
RIKITO:HALさんが3曲くらいだっけ?
HAL:全部で7曲くらいはできてたと思います。
-だとすると、その中から「Modern day witch hunt」が勝ち抜いた理由がなんだったのかがとても気になります。
将吾:純粋にカッコいい曲だったから、です!
RIKITO:決まるの早かったもんね。
将吾:俺がまず"これやりたい!"って言って、みんなの意見もすぐまとまりました。
HAL:っていうか、曲ができる前のまだみんながちゃんと聴いてない段階からすでに"それで行こう!"っていう雰囲気になってました(笑)。
-曲ができる前から? それはどういうことでしょう?
将吾:いや、たまたまCHISA君から"今、こんなの作ってるんだけど......"っていうまだ作りかけの曲をちょろっと聴かせてもらったことがありまして。その段階で僕としては直感的に"これがいい!"ってなったんですよね。
RIKITO:で、我々も"将吾君がそう言うなら間違いないやろ!"となったわけです。
HAL:将吾君が間違ったことなんて1回もないですからね。だから、曲を聴く前から今回はこの曲で行こうっていうモードになってました。
CHISA:僕は夏休みの宿題を早めにやっちゃうタイプなんで(笑)、今回の曲作りもみんなより前倒しで年末から始めてたんですよ。1月に入る頃にはもうだいたい形になってたんで、将吾君にはそれを聴いてもらってたんです。そうしたら"いいじゃん、これで"って言われたんで、そこからフルで完成させたものを2月に入ってからの選曲会でみんなにも聴いてもらいました。
将吾:その選曲会のときにはすでに俺がギターのアレンジも1回してあったし、歌詞もあったもんね。だから、7曲くらいが揃ってて選曲会もちゃんとやったけど、今回はもう"これだね"って半ば決まってた感じだったんです。
CHISA:なんか歌詞も思い付いちゃったから、全部バーッて書いちゃってたんですよ。
HAL:夏休みに入る前に宿題が全部終わってたパターンね(笑)。
-そもそも、CHISAさんはこの曲を作り出すときにまずどのようなことをイメージされていたのですか。
CHISA:今回はどちらかというとテーマとか歌詞の内容のほうが先でした。前回のアルバム『PARTY METAL ANTHEM』がああいうハッピーなテイストだったこともあって、その逆を行くようなちょっと暗くて重たいシリアスな曲を作ってみようかなと。
-"PARTY METAL"ではなく、いろいろな意味で"HEAVY METAL"のほうに寄った感じだったわけですね。とはいえ、ACMEはこれまでもラウドさやハードさを追求した曲であっても、歌メロやサビでは必ずACMEならではのポップ・センスが活かされてきた経緯がありますし、この「Modern day witch hunt」ではその部分にさらなる磨きが掛かった仕上がりになっている印象です。
CHISA:そこは自分の中でのメロに対する考え方が変わった、っていうのが大きいかもしれないですね。前まではメロに対して"オケができてたからまた変えてもいいか"くらいの感覚を持ってたところがあったんですけど、最近はメロとか歌にもっと強いパワーを持たせたいということをすごく思っているんですよ。だから、オケ以前に歌詞とメロディのほうを優先して何パターンも作ってから、それをどんどん練っていって、そこからさらに全体像を完成させていくやり方をするようになったんです。
将吾:最初に聴かせてもらったときと、次に送ってもらったときだと少し違かったもんね。
CHISA:早めの時期から作り出すことの利点って、歌詞でも曲でも"もうこれ以上は無理"っていっぱいいっぱいになったとしても、一旦寝て脳を休めてからまた次の日に聴くと"あれ、まだできるな"っていうのを何日もかけてできることなんですよ。それもあって、最近は1ヶ月くらいかけて聴き直しては変えてを繰り返して、最終的に選曲会でみんなに提示する形になってます。
-例えば、料理だと何回も味見を繰り返しているうちにだんだん正解が分からなくなってしまうことがあったりするのですけれど、時間をかけて曲を練っているうちにそのような事態に陥ってしまうようなことはありませんか。
CHISA:あぁ、それに近い感覚になることはたまにあります(笑)。でも、曲作りの場合はバージョンごとに全てバックアップを取ってあるんで、必要な場合はもとのバージョンにすぐ戻れるんですよね。過去のものと最新のものを比べることができるんです。もっとも、ブラッシュアップすればするほど良くなるのも確かなんで、実際にはあんまり前に戻ることはないかな。今回もそういう感じでした。
-早いうちから「Modern day witch hunt」に対しての可能性を見いだしていた将吾さんからすると、この曲の完成に向けて"さらにこの部分をもっと伸ばしたい"と感じていらしたのはどのような点だったのでしょう。
将吾:僕としては全然そこまでいじる必要性を感じない曲だったんで、アレンジ的には途中にブレイクダウンを入れたりはしましたけど、あとはもう細かい部分を調整したくらいですかね。曲自体がこのチューニングなら、ブレイクダウンはもう1オクターヴ下げようとか。それ以外だと音色くらいです、この曲に合わせて考えたのは。うちのバンドはみんな1人でも全部アレンジを仕上げられる人たちなんで、ほんとにどの曲も最初から完成度は高いんですよ。そこにレコーディングでは各プレイヤーの持ってる個性も重なっていったという流れですね。
CHISA:それと、サウンド面で言えば将吾さんは今回こういう系の曲に必要なトレンド感の部分を監修してくれてます。
将吾:重たい音楽の中でも、やっぱり"これが新しいよね"っていう部分は絶対入れたいですからね。2~3年前はもちろん、大げさに言うと1年前と同じことをやったら"もう古いよね"となっちゃうんで、まずは自分たち自身も音に飽きたくないっていうのがあるんです。チューニングにしたって、今や"どこまで行くんよ?"って感じだし(笑)。もっと言えば、今日作ってすぐ出すくらいのスピード感じゃないと厳密には"最もトレンド"な音にするのが難しいくらいなんじゃないかと思います。
-サブスク文化が浸透して以降、ヘヴィ・シーンのみならず音のトレンドに関するサイクルは加速しているのが現実なのかもしれません。
将吾:「Modern day witch hunt」もできて数ヶ月は経ってるんで、きっと今作ってたら"こう"はなってないでしょうね。ほんとそのくらいサイクルが速くなってます。