INTERVIEW
ACME
2021.09.10UPDATE
2021年09月号掲載
Member:CHISA(Vo) 将吾(Gt) RIKITO(Ba) HAL(Dr)
Interviewer:山口 哲生
今年1月に、バンド名の表記をカタカナから英語に変更したACME。近年はアメリカを中心とした海外展開にも力を入れていて、今年3月にはサウンド・プロデューサーにSeann Bowe、レコーディング・エンジニアに山中大平、ミックス・エンジニアにZakk Cerviniという強力布陣で制作したシングル「Come Back to You」を発表するなど、新たな試みにも積極的にトライし、自身たちの音楽性を掘り下げている。今回のインタビューでは、海外での活動を含めた近年の足跡を振り返ってもらいながら、原点回帰をテーマに掲げた最新シングル『月光浴』について、メンバー全員に話を訊いた。
-今年の1月に表記を英語に変更されましたが、これはまたどういったところから?
CHISA:コロナのことが始まる前から、海外活動にも力を入れようということになって。あと、"アクメ 2nd ONE-MAN TOUR『No.13』"っていう13ヶ所14公演のツアーがあったんですけど、そのあたりから、いろんな曲がありすぎて、どういうバンドかわからないねっていう話が出てきて。自分としても、どういう着地点のライヴをしていいのかわからないところがあったんですよね。良く言えばバリエーションがあるんですけど、悪く言うと、毎回周年ライヴみたいな感じになっちゃうというか。
-いろんな曲をピックアップしすぎていくと、内容が膨らみすぎて、自分たちの軸が見えにくくなってしまうというか。
CHISA:お客さんとしては昔の曲を望んでいたりするし、まぁ、盛り上がったから良かったよねっていう気持ちも、自分たちとしてはあって。でも、2020年の1月にアメリカ4ヶ所を回って("WEST COAST COLLISION TOUR")、日本に帰ってきたときに、今後どういうふうにやっていくのか、結構話し合ったんですよ。それで、こんな音楽性で行こうというのと、リニューアルの意味も込めて表記も変えようって。
-そういう経緯だったんですね。
CHISA:ただ、その直後からコロナのことが始まって、いろんなことが先送りになってしまって。本当は、2020年の5月に3周年のライヴがあったんで、そこから表記を変えたかったんですよね。"盛り上がったから良かったね"ではない3周年ライヴにしたかったんですけど、僕ら今、2年連続周年ライヴができてないんで。まぁ、きっかけとしてはそんな感じでした。
HAL:最初の頃は、経歴もやってきた場所が違うメンバーが集まって、どんな音ができるんだろうというのが、まだわからなかったところもあって。でも、この3年間でいろんなジャンルの曲をやってきて、この4人でやるのであれば、これが一番かっこいいというのがだんだん見えてきて、じゃあ、そこに特化しようって感じでしたね。
-海外活動のお話がありましたけど、初めて海外でライヴをしたのは2019年にアメリカで開催された"Anime Milwaukee"でした。これはアニメのコンベンションみたいな?
RIKITO:そうです。
-初海外ライヴはいかがでしたか?
RIKITO:衝撃を受けました。
HAL:寒さに。
RIKITO:ははははは(笑)。
将吾:たしかにめっちゃ寒かった!
HAL:朝、起きたらホテルの周りを散歩したりするんですけど、初めてでしたよ。散歩していて、"死ぬな......"と思ったのは。その次に衝撃だったのが、お客さんのノリが良くて......。
将吾:それが一番やろ(笑)。
HAL:SEが流れた瞬間にワー! って声が上がって、メンバーが出てきたときに、もっと声が大きくなって。
将吾:誰かサンプラーで(歓声を)流してるかと思った。
RIKITO:びっくりしたね。
将吾:人もめっちゃおったし。
CHISA:初めて行ったときがそれだったから、やろうという気になったところもありますね、きっと。
RIKITO:正直不安もあったんですけどね。
CHISA:うん。最初は、やれるかどうかはわからないけど、やってみようぐらいの感覚だったんですよ。僕も英語をペラペラにしゃべれるわけじゃないし。"Anime Milwaukee"は、ワンマン・ライヴみたいな感じと、ファッション・ショーの途中でライヴをやるっていう形で出たんですけど、いい思い出しかないですね。
-ホームページに、"パフォーマンスを観ていたアメリカ3大テレビ局のひとつ「ABC」の記者からオファーを受け、その翌日、「ABC」の報道番組に出演することになる"とあったんですが、これは?
将吾:ABCの人がコンベンションに取材に来てたんですよ。で、俺らのライヴを観てたみたいで、"明日、朝7時からだけど出る?"って言われて、ふたつ返事で出ますって。
RIKITO:で、次の日に会場から生中継でテレビに出て。もう爪痕を残すことしか考えてなかったですね。藤井 隆さんの"ホットホット!"をやったりして。でも、あれって下ネタなんですよね(苦笑)。
-ですね(笑)。ライヴをしてみて、自分たちのどんな部分が受け入れられていると感じました?
CHISA:聴いてくれていたんだろうなという満を持して感もあったけど、向こうの人ってマインドがオープンというか。打ったら響くじゃないですけど、音に対して自然にリアクションをしているだけの感じはしましたけどね。デカい音が鳴っているから、テンションがあがる、みたいな。
HAL:"Anime Milwaukee"のときは、どういう曲がウケるのかわからないから、激しい曲もバラード・ゾーンも用意していったんですけど、バラードになると人が減るんですよ。で、激しい曲になると、また人が戻ってくるっていう。みなさんロック好きだねー! っていう感じでした。その次に行ったテキサス("A-kon")では、バラード入れなかったですからね(笑)。
将吾:あと、アニメのコンベンションでライヴをやると、最後まで観ていない人が多いらしいんですよ。だから、コーディネーターの人から"最後までいるといいね"って言われていたんですけど、最終的に"ここまで残っていたのはあんまり観たことない"って。
CHISA:アニメのコンベンションとヴィジュアル系って親和性がすごく高いというか。なんか、アニメのキャラみたいに観てくれてる感じがあって。
将吾:俺ら、別にアニメのタイアップやってないのにね。
CHISA:そうそう。それこそテキサスに行ったときは、アニメやゲームの曲をやっている人たちと出たんですけど、その人たちに"ずるい"って言われるぐらい、メイクして衣装を着ていると、マウントを取れるというか(笑)。
将吾:そういうイベントでは、ヴィジュアル系は強いよね。有名なアニメの曲を持っていなくても、何をやってもOKっていうか。
-ただ、そういったコンベンションと、お話にも出ていた西海岸の4都市を回ったツアーは、特性が全然違いますよね。そちらのほうはいかがでした?
CHISA:楽器の音でテンションが上がる人は、コンベンションにも多いんですけど、ライヴハウスのほうが多い感じはしましたね。例えば、ソロ・コーナーも、日本だとジャンルによってはキツいじゃないですか。アメリカだと間が持つんですよ。
将吾:日本だとね、ソロ・コーナー始まったら"お、トイレタイムか?"みたいな感じやけど。
CHISA:そこまでではないけど(笑)、みんながみんな好きかというと、やっぱりそうじゃなくて。そういうところの違いはありますね。
-RIKITOさんはどうでした? 音を楽しんでくれている感じはありました?
RIKITO:そうですね。音楽を楽しみに来ている人が多いなと思いました。もちろん、見てくれを観に来てくれている人もいますけど、音に対して反応してくれている感じはあって。
CHISA:まぁ、それをシンプルに表現してくれている感じなのかもしれないですね。日本人って、自分の気持ちを出すまでにやりとりが必要だから。
RIKITO:あぁ。シャイだからね。でも、逆にちゃんと演奏できないと盛り上がらないっていうところはありましたね。ごまかせないし、それぐらい音に対して敏感な人たちが多いです。
将吾:スタッフとかも見てたもんなぁ。最初、バリなめられとって。"どうせお前らできんやろ?"みたいな感じで見られてたんすよ。
CHISA:"お前、そのアンプ使えんのか?"みたいな感じで言われてたよね(笑)。
将吾:言われた。でも、ライヴが終わったら"最高だった!"って向こうから言ってきて。
RIKITO:そういうのは嬉しいですね。
-なるほど。今って海外はロック・バンドが不遇な状況っていうじゃないですか。
RIKITO:そうですよね。アメリカのチャートを見ても、ほとんどバンドが入っていないっていう。
-でも、現地に行くと、盛り上がっている人たちもしっかりといる?
CHISA:まぁ、分母が違うっていうところはあると思いますけどね。好きじゃなければ、そういう場所に来ないっていうのもあるし。でも、バンドのほうがあんまり......っていうのを感じたのは、会場入りすると"バンドだったの!?"ってPAに言われるとか(笑)。"DJしかやったことないから、ドラムのマイク立てられないんだけど"とか言われて。
将吾:"バンドならバンドって言っといてくれ"って。
RIKITO:あと、空港で並んでいると、決まって"K-POP"って言われます(笑)。
HAL:"Are you K-POP?"、"No, J-ROCK"みたいな(笑)。
将吾:そうそう(笑)。あと、誰かが車に乗って爆音で流しているのも、バンドの曲とかってあんまりないしね。だから、分母が少なくなっているっていうところは、もちろんあるにはあるんですよ。でも、まだ楽器屋も結構あったりして、床に50万クラスのギターが普通に置いてあったりとかするし。自分らとしても、何ヶ所もついてきてくれる現地の人たちもいたけど、その土地だけでもこんなにおるもんなんやねって。びっくりしましたね。(俺らのことを)どこで知ったん!? って。だから、気になったら来るのかもしれないです。とりあえず行こうみたいな。
CHISA:あと、向こうって、本当に居酒屋に行くぐらいの感覚でライヴハウスに来る人もいるじゃないですか。飲みに出たけど、何をやってるんだろうってそのまま観に来る人もいるし。昼間は、スポーツ中継を観ながら酒を飲んでるおじさんたちがバー・カウンターにいて、その横でリハをするとかもしました。
将吾:おっちゃん、ノリノリやったな。