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INTERVIEW

HEY-SMITH

2021.07.28UPDATE

2021年08月号掲載

HEY-SMITH

Member:猪狩 秀平(Gt/Vo)

Interviewer:荒金 良介

-猪狩さんはモッシュやダイブなどのカルチャーを守りたい気持ちはありますか?

やりたいことをやれる環境を守りたいんですよ。モッシュ、ダイブは一番大事ではないですね。

-お客さんが自由に騒げる場所が大事だと。例えば、コロナ以前はモッシュ、ダイブ、2ステップが様式化している部分もあり、こうして騒ぐのが当たり前みたいな空気もありました。でも本来は、聴いてどうしても騒がずにはいられないから騒いでしまったり、自分でも抑えられない衝動を喚起させられたりするのが音楽ですよね。

そう! 俺はそっちを大事にしたいんですよ。誰かがやっているからそうなるんじゃなくて、そうなっちゃうみたいな気持ちが大事ですからね。

-この曲の最後で"Back to basics now"と猪狩さんは叫んでいますが、このベーシックとは?

ライヴハウスとか、俺らの生活とか、従来の形に戻ってほしいというイメージですね。あと人と比べるとか、人がやっているから自分はこうするとかじゃなく、対自分というものに戻りたい気持ちはデカかったです。すべてが横並びで、みんなの意見を尊重しすぎやと思うんですよ。みんな違うけど、それでいいやんって世界じゃなくなってきているのが気持ち悪くて。この曲も"ひとつになろう"と捉える人もいるだろうし、1サビでは"Be the first"と歌詞で言っているんですよ。最初のひとりになれよって。どう捉えるかは聴いた人が決めてくれたらいいのかなと。

-他の楽曲にも触れたいんですが、「Proud And Loud」はHEY-SMITHらしいホーンをフィーチャーしたインスト曲です。曲名をデビュー作『Proud and Loud』(2009年リリースのミニ・アルバム)のタイトルから持って来た理由は?

あの頃の思想が一番純粋というか......自分の中の純粋なもの、ベーシックなものを考えていたら、『Proud and Loud』が一番純粋でベーシックになってるなって、そこでリンクしたんですよ。

-当時はどんな気持ちで音楽と向き合っていました?

売れたい、評価されたいとかじゃなく、とにかく出てきた音楽を表現しようと。音楽を楽しみたい、いいものを作りたい、それしかなかったんですよ。そういう気持ちですね。

-今もそういう気持ちになってきたと?

そうですね。いろんな経験を経て、自分が本気で愛していたり、信用していたりするものは音楽しかないなと思って。ほんまに人を感動させられるのは音楽なのか? という疑問はまだありますけど、これしかないなと感じたんです。音楽しか信用できないから。あと、インストは昔からやりたかったことなんですよ。ボーナス・トラックで緩い曲をやったことはあるけど、こういう感じでインストをやったのは初めてですね。

-ライヴのオープニングにも映えそうですね。

そうそう! ライヴでやるのが楽しみですね。

-そして、「Fellowship Anthem」は、Asian Man Recordsらが手掛けたコンピ『Ska Against Racism』に提供した楽曲ですよね。

ブラック・ライヴズ・マターに対して、Asian Man Recordsらがコンピを出すということで誘ってもらったんですよ。これも昨年の夏に作ったもので結構ストレートに作りました。いつもは自分から湧き出たものを曲にしていたけど、これはほんまにブラック・ライヴズ・マターにフォーカスを絞ってイメージしたら、すぐにできましたね。今までの中で一番あっさりできたかもしれない。歌も1、2回しか歌わなかったですからね。ホーンのイントロ、ソロや間奏だったり、管楽器だったりの雰囲気も好きなんですよ。どこでも踊れるし、お気に入りですね。

-自分の作品ではなかなかやれなかったアプローチ?

そうですね。スカ! って感じですから。いつもはいろいろミックスしたがるけど、今回はずっと裏打ちで展開も多くないんで、シンプルにやれたなって。マイナー進行で始まるけど、サビはメジャー進行なんですよ。ちょっと自分の中では初期衝動すぎて、『Proud and Loud』を作っている頃なら恥ずかしげもなく出せたんですけど、今は、急にメジャーになるのは照れるんですよね。でも今回は"Back To Basics"やし、照れてなんぼやろうと(笑)。

-この曲は人種差別のことを歌っていますが、それは今のコロナ禍においても響くメッセージになってます。

そういう差別は嫌いで、意味がわからなくて。自分もツアーに行ったときに、小さなことだと、"サーティワン(サーティワン アイスクリーム)"で並んでいたら、白人の人がいきなり横入りしてきて、何か言おうとしたら、後ろの黒人がやめな! って制止してくれたんですよ。でも、大きな道路で写真を撮っていたら、家から鉢みたいなものを投げられましたからね(笑)。アメリカのそういう部分はめっちゃ嫌いです。これは機会を与えてもらえたから、できた曲ですね。それと自分たちのアメリカ・ツアーで黒人の人も観に来てくれて、俺らのライヴ中に踊ったりするんですけど、他の人に当たったら"ごめんね!"みたいにいちいち謝っているんですよ。そしたらほかのやつが"もっと来いよ!"みたいに言って、温かく迎え入れる空気が生まれたんですよ。その情景もこの曲に落とし込まれていると思う。

-最後になりますが、8月から全国ツアー("Back To Basics TOUR")が始まります。これはやはり47都道府県を全部回ろうという気持ちから?

全県というのがテーマでしたね。『STOP THE WAR』でも全県ツアーをやったけど、そこでやめようと思っていたんですよ。もうね、全県ってマジでつらいんです。精神的にも体力的にも......仲も悪くなるんでね。でも、タワレコ(TOWER RECORDS)主催の"LFLH(LIVE FORCE, LIVE HOUSE.)"に参加して、ライヴハウスの生の声や店長さんの話を聞いたら......。

-やらずにはいられなくなったと?

そんな感じですね。来てもらえるのが嬉しい! とみんなが言うので、それなら全県行きたいなと思って。最終的に帰る場所はライヴハウスやし、そこがなくなったら、俺らの存在はないですからね。個人で頑張っているライヴハウスや、バンドと付き合いのあるライヴハウスを中心に行こうと思います。

-各地のお客さんも自分たちの街に来てくれるのは嬉しいですからね。

うん、それも大きいですね。各地の人に会いたいし、県またぎの移動を気にする人もいるだろうけど、これなら来てくれる人もいるだろうから。

-そして、ファイナルが千葉LOOKというのも熱いですね。

サイトウ(ヒロシ)さんという店長がいるんですけど、いつも朝まで飲んじゃうんですよ。ツアー初日をLOOKにすると、つらいことがわかったから、最後に思いっきり飲んだろうかなと(笑)。