INTERVIEW
HEY-SMITH
2017.06.23UPDATE
2017年06月号掲載
Member:猪狩 秀平(Gt/Vo) 満(Sax) かなす(Tb)
Interviewer:荒金 良介
-曲調が結構変化したので、そう思う人はいるかもしれないですね。
猪狩:まぁ、そうっすね。こっちの方向に行くんやと思う人はいるだろうなと。でも俺は、こういう曲でちゃんと認められたかった。
-というのは?
猪狩:最近はほんま、メンヘラな奴が多いじゃないですか。世の中、メンヘラだらけですよ!
-世相をバッサリ斬るなぁ(笑)。
猪狩:はははは。ライヴでも、曲よりもMCとかメッセージを聴きにくる奴が多い気がして。俺はそういうの、あまりよくわからないんですよね。曲の気分で、そいつの気分を変えたいんですよ。MCやメッセージで諭すんじゃなくて、曲だけのパワーでその人の気持ちを変えたい。だからこういう明るい曲で、歌詞も否定するんじゃなく、かっこいいことをやろう! という内容ですからね。曲の力でみんなの心に入り込みたかった。俺の中では、"これど真ん中でしょ?"って感じなんですよ。
-その意味では本当に前作と真逆ですよね。
猪狩:前作がシリアスすぎたんですよ。でも、あのころはほとんどの感情が怒りや悲しみやったんで。今もその状況は変わらないですけどね。
正直になって、気持ちよく生きる方が大事
-「Let It Punk」は普通のアメリカのロックっぽい感じををやりたかったと言ってましたが、具体的には?
猪狩:いや、わからないですけど、アメリカのラジオでよく流れるような曲ですね。数年前、アメリカをツアーしたときにレンタカーでめっちゃ遠くまで行ったんですよ。そのときにラジオでかかっていた、誰の曲かもわからない感じです。
-その経験が今、蘇ってきた?
猪狩:俺は思いっきりそうですね。アメリカの人たちは明るいし、すごく正直じゃないですか。それ込みで、こういう明るいイメージで行こうって。
-今作は無防備で無邪気な感じが出てますよね。
猪狩:うん。いつもは音を作り込んで、バキバキに仕上げるんですけど、今回は緩く録ってるんですよ。"せ~の、ドン!"みたいな音作りに変えましたからね。すぐそこで演奏している感じが欲しかったんです。
-自分では、なぜそういうふうに変化したんだと思います?
猪狩:最近はバンドでも、言っていいかわからないけど、ドラムなんて叩かなくてもCDはできるんですよ。ベースも、コピー&ペーストしたらできる。ぶっちゃけ、そういうCDが多くなってるんです。みんな制作費がないから、本質的にいいものを作るのが難しい世の中になってて。だから逆に、バンドってこういう音なんだ、というものを見せたいんです。音のズレだったり、生々しさをちゃんとパッケージしたくて。みんな同じ音のCDになってるんで、それが嫌やったんですよ。
-かなすさんはどうですか?
かなす:「Let It Punk」はド頭からみんなでコーラスを入れていて、女の子の高い声がメインで、私も一緒に歌ってるんですけど。HEY-SMITHに今までそういう曲はなかったから、ポップだし、それが新しいテイストになってると思うんですけど......(小声で)どうですか?
猪狩&満:はははははは(笑)。
猪狩:自信を持ってください(笑)。
かなす:これが男の子だけのコーラスだったら男臭くなっちゃうけど、女の子の声がメインになったことで、入りやすい曲に仕上がったなと。
-あと、曲名に初めて"Punk"という言葉を使っているじゃないですか。そこを含めて、今のHEY-SMITHはド直球モードなんだなと。
猪狩:そうですね。さっきも言ったけど、正直に生きたいという気持ちが出てるのかもしれない。"Punk"という言葉の入った曲名が今までなかったことは知らなかったです(笑)。
-マジですか。
猪狩:だって、絶対あると思いますやん(笑)。
満:ははははは(笑)。
猪狩:3曲目なんて、"Fucked"という言葉が入ってますからね。嫌われることが怖くなくなってきたし、みんなに好かれたい気持ちもなくなりました。もっと強くなった。正直になって、気持ちよく生きる方が大事だなと。
-自分の中にあるパンク観って言葉にできます?
猪狩:正直さ、ポジティヴさも含まれるけど、最初にかっこいいことをやってる奴じゃないですかね。いろんな意味がありますけどね。何か最初に行動を起こしたり、誰もやってなかったことをやったり、それがパンクな奴なのかなと。
満:パンクは永遠のテーマやな。酔いつぶれて、道端で寝てる奴もパンクやなぁと思うときもあるし。
猪狩:それもあるな(笑)。
かなす:曲を聴いた瞬間に、その人を突き動かす衝動みたいなものが生まれたらいいなと思って。私も猪狩君と近いけど、自分がやりたいことを突き通すこと。それがパンクだと思うので。"これがHEY-SMITHです! これが自分たちのパンクです!"という気持ちが曲を通して伝わればいいなと。