INTERVIEW
HEY-SMITH
2016.05.16UPDATE
2016年05月号掲載
Member:猪狩 秀平(Gt/Vo)
Interviewer:荒金 良介
-あと、Track.7「Truth Inside」、Track.13「States Of War」ではブラック・メタルみたいなギター・リフが入ってますね。これは驚く人もいるんじゃないかと。
HEY-SMITHっぽくないですよね? ブラック・メタルやダブステップとか、夜中にそういううるさい音楽を聴くのが好きなんですよ。これも俺の中では"広い意味でのロック"を表現できた曲ですね。メロディックでもなければ、ギター・ロックでもないし、みんながあまり聴いたことがない曲調に仕上げられたなと。お気に入りの曲ですね。
-もはやHEY-SMITHのバンド・カラーはあまり考えなくなってますか?
そうですね。聴いたことがない音楽を自分も聴きたいから。
-そういう意味ではTrack.10「What They Hide」も今までにないオルタナっぽい不穏なギター・フレーズを入れてますね。
この曲の原形はトランペットの(イイカワ)ケンが考えたんです。トランペットでプピプピ吹いたものを、ギターでやってほしいと言われて(笑)。音感はいいけど、ギターは1ミリも弾けないから。それでもいろいろ試しながら作ったし、曲の取っ掛かりがまったく別のところから来ていて、自分にはないものが引き出された感じはありますね。
-新体制の色合いも出ていると。
ホーンはそれが顕著に出てますね。ホーンのフレーズは引き出しの数が違うので、多すぎてイライラしたことや、どれがいいか決められないこともあったけど、結果的に最高なものを入れられたと思う。
-Track.12「Before We Leave」のゴージャスなホーンも新鮮でした。
これはバンドが活動休止しているときにできた曲ですね。"Before We Leave"は"俺らがどこかへ行く前に"という意味なんですけど、バンドがいつ再開できるかもわからなかったので、最後にこの曲を残そうという気持ちで作りました。去年作っていたときは気持ちが切なかったから......それが出てるんじゃないかな。作曲してる最中はしんどい気持ちになったけど、今はまた別の気持ちで歌えるんですよ。いろんな時期を過ごしたから、大切な曲になりました。
-そして、Track.9「Radio」はカバー曲ですよね?
これは大阪のKNUCKLESというバンドのカバー曲です。俺、KNUCKLESもこの曲も大好きなんですよ。中学生のころに初めてこの曲を聴いて、これがきっかけでパンクを聴くようになったから、この曲をみんなが聴いたことないなんてあり得ないと思って。自分なりにアレンジしてカバーしました。
-"2回目の青春"という曲名(Track.5「2nd Youth」)もありますけど、10代の気持ちを思い返すことも多かったんですか?
17歳のころって、自分でも気づかないくらい青春してるじゃないですか。何もかもが衝撃的なあのころの感動はもうないし、17歳に戻りたいなと思っていたけど。ここに来て、あのとき以上に青春してるなということを感じるんですよ。子供になってるというか。めっちゃ怒れるし、めっちゃ感動できるし、どうでもいいやという気持ちがなくなりましたね。
-精神的にもリフレッシュしたんですね。
自分が思いっきり楽しまないと......いつ死ぬかわからないですからね。あと、歌詞は他の誰かに向けた内容が増えたかもしれない。「Don't Worry My Friend」(Track.4)は完全に人に向けて歌っているし、それは今まであまりなかったことですね。だって、"Don't Worry My Friend"ですよ? そんなことをこんなおっさんが言うかって話じゃないですか。
-ははは。
でも高校生のころはそんなことも平気で言えたでしょ?
-たしかに。
大丈夫だよ!って。今は一周回って、めっちゃ熱くなれるし、めっちゃクサいことも言える。それでこういう曲も書けたのかなと。
-バンドが一度止まったことで、深く考える機会が増えたんですかね。
それはありますね。結局自分がどうかしなきゃいけないけど、途中で周りの人に助けてもらいましたからね。
-今回は歌詞に"可能性"という言葉も多いけど、未来に向けた内容も増えましたね。
"俺たちについて来い!"という立場じゃなく、新しい音楽を聴くことで自分も熱くなれるし。"わあ、こいつらかっこいい"と思うことで、自分ももっとかっこいいものを作りたいと思いますからね。次の世代とか、まだ会ったことがない奴に会いたい。でも若いバンドと話したら、"Fat Wreck ChordsからCDを出したい"と言うけど、"送ったらどんな反応やった?"と聞いたら、"送ってない"と言うんですよ。意味がわからなくて。言うだけでやらない人が多いんだなと。やれると思ってないんでしょうね。
-「States Of War」の歌詞で"We all will die/without you I won't suffurr(※訳:俺たちはいずれ死ぬ/でも人によって殺されたくはない"という部分にもグッときました。自分たちの自由や可能性は誰にも潰されるものじゃないし、もっと人間の可能性を信じろよ、というメッセージ性を感じました。
そうですね。もっとワガママになってもいいのになって。日本に生まれてきた時点で1番目か、2番目くらいにラッキーなことだと思うんですよ。やれる選択肢がたくさんあるのに、やらないのはあり得ない。やったら絶対目標に近づくから。もうね、俺が(アントニオ)猪木やったら、全員ビンタしたいですよ(笑)。ほんまに今はそれぐらいの気持ちがありますね。