INTERVIEW
HEY-SMITH×AUTHORITY ZERO
2017.12.20UPDATE
HEY-SMITH:猪狩 秀平(Gt/Vo)
AUTHORITY ZERO:Jason Devore(Vo)
インタビュアー:荒金 良介
-AUTHORITY ZEROの一番新しいメンバーはDanさんだと思うんですが、現在の4人編成になって、バンド内のムードも変わりました?
Jason:よりパワフルになったと思う。今のメンバーとは相性がいいんだ、音楽的にも人間的にもね。お互いにリスペクトしているからね。
猪狩:バックステージでも、みんなで曲を作ってますからね。
-へぇー、そうなんですか!
Jason:周囲に人がたくさんいても、自然と曲作りのモードに入れるんだ。今のメンバーとはキッズのころに仲が良かった友達のような関係性だし、曲作りもやらなきゃという義務感もないしね。
-Danさんは右手を失った状態にもかかわらず、右腕にリストバンドでピックを固定してギターを激しくかき鳴らすスタイルです。あの姿を観ているだけで、元気や勇気を貰えます。彼が加入した経緯を聞いてもいいですか?
Jason:Danは昨年に加入したんだけど、コロラド州のデンバーでWIREDOGSというバンドに入っていて、僕がアコースティック・ライヴをやっていたときに、一緒にツアーを回ったことがあったんだ。そのときに彼の家に泊まって、お互いに愚痴を言い合ったことがあってね。それで"もしかしたら、君をギターに呼ぶかもしれない"と言って、それから2週間後に本当に連絡して、"ギターで入ってくれないか"とお願いしたんだ。AUTHORITY ZEROのギターは複雑だから大変かもしれないけど、彼は人間的にもギターの腕前も素晴らしいからね。
-ステージを観るかぎり、Danさんは陽気なキャラクターなのかなと。
Jason:彼はとてもポジティヴな人間だよ。小さいころに事故に遭ってしまってね、12歳のころだったかな。
猪狩:そんなに前なんだ!
Jason:間違えて電線を掴んでしまい、手に電流が流れてしまってね。それから一生懸命ギターを練習したみたいだから、精神的にも強い奴だよ。
猪狩:Danはほんまにいい奴なんですよ。俺のお母さんや友達にも会わせたんですけど、ほんまにみんなに優しいし、ひとりひとりにしっかりと言葉を掛けてくれて、素敵な男ですね。
Jason:自分のやりたいことがあれば、どんなことをやってもその方法を見つけられるものだからね。
猪狩:ほんまそうなんですよね。できないことはないし、Danを見ていると、やる気が沸いてきますね。
-パンクの精神性で影響を受けた人はいますか?
Jason:繰り返しになるが、BAD RELIGION、PENNYWISE......それとMINOR THREATとかね。ネガティヴな状況に陥っても、ポジティヴな光を探そう、という気持ちにさせてくれるんだ。OPERATION IVYの歌詞にも元気をもらえる曲があるしね。僕らも歌詞の中で諦めちゃいけないと歌っているし、それは自分の生き方にも影響を与えるものだよ。
猪狩:BAD BRAINSの「Attitude」という曲が好きなんですけど、その歌詞の中に"P.M.A."(Positive Mental Attitude=肯定的精神姿勢)という言葉も入ってますからね。あと、NOFXもそうですね。昔は日本や世間にむかつくことがあったら、政治家になりたいと思ったこともあったんですよ。あるいは、政治家を応援するような集団だったり......日本を動かすぜ! と思っていたけど、NOFXを聴いたときに、そういうメッセージを歌って、そういう人たちを増やす方がいいと思ったんですよ。
-あぁ、MONGOL800のキヨサク君(Vo)も別の仕事に就こうと思ったけど、音楽の力でメッセージを伝えた方がより多くの人に広まるから、と言ってました。
猪狩:俺もまさかの英語で教職を取ってましたからね。昔はもう少し勉強してました(笑)。
-ちなみにJasonさんから見て、日本のバンドの印象は?
Jason:日本のバンドはスーパー・ハイパーだね。演奏もタイトだし、テクニカルだからね。
猪狩:Which Band Do You Like Best?
Jason:HEY-SMITH!
猪狩:ははははは(笑)。
Jason:それは当然だろ。
猪狩:なんか言わせちゃって、ごめんなさい。
Jason:あと、Dizzy Sunfistもすごく良かった。ヴォーカルの彼女はアグレッシヴで驚いたよ。
-女性ヴォーカルのパンク・バンドでいいなと思うバンドはいますか?
Jason:THE VENOMOUS PINKSというバンドがいて、RAMONESっぽいサウンドなんだ。ほかにBAD COP/BAD COPというバンドもおすすめだよ。
-最近、他にいいバンドはいますか?
Jason:HEY-SMITH!
猪狩:ははははは(笑)。
Jason:昔の音楽しか聴いてないからね。フロリダのTHE HARD RICHARDSはオールドスクールのスカだけど、かっこいいよ。
猪狩:結局、俺も昔の音楽ばかり聴いてますね。ただ、最近は18年ぶりにHi-STANDARDがニュー・アルバムを出してくれたので、あのころの気持ちに戻りました。9月にはOVER ARM THROWも新作を出してくれて、それもまたかっこよくて、嬉しかったです。あと、アメリカのGOLDFINGERというバンドのJohn Feldmann(Vo/Gt)は、ミックス・エンジニアとしてもすごくて、日本のバンドも手掛けてるんですけど、すごくいい音で、それも嬉しくて。歳をとった人が頑張っている姿を見ると、俺もここまではやれるんだなと思いますね。
Jason:あぁ、GREEN DAYもそうだしね。
-数日前にアメリカのパンク・フェス"Warped Tour"(※毎年100バンド以上が参加する世界最大の複合型ロック・フェス"Vans Warped Tour")が2018年で終わるというニュースが入ってきましたけど、それに関してはどう思いますか?
Jason:ロングランだよね。僕らは1994年にバンドを結成したけど、その翌年からずっと続いているからね。
-そうですよね。アメリカのパンク・シーンの移り変わりについてはどう感じますか?
Jason:1997年は最もパンク・シーンが熱かったんじゃないかな。そのころが懐かしいなぁと思うけど......僕らもHEY-SMITHも、新しい世代に繋げるためにパンクを鳴らし続けたいと思っているよ。"Warped Tour"に出演したのは2006年が最後になるけど、そのころからすでにいろんなタイプのバンドが集まってて、シーン自体が混乱しているように映ったからね。だから、そろそろKevin Lyman(※"Vans Warped Tour"の創始者)が止める時期だと判断したんじゃないかな。
猪狩:日本は1999年、2000年あたりがパンクやストリート・カルチャーが一番強かった気がしますね。海外のパンク・バンドが日本に来たら、大きな会場でもソールド・アウトになってましたから。今は大きなバンドが来ても、人がそんなに入らないという話を聞くし。でも、日本のバンドは、昔よりもかっこよくなった気はしますけどね。それに関しては、俺はすごく嬉しくて。ただ、パンク・シーンをもっと広げたいという気持ちはありますね。