LIVE REPORT
AA=
2022.02.26 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 吉羽 さおり Photo by Yoshifumi Shimizu
アルバム『story of Suite #19』を携えた、約2年3ヶ月ぶりの有観客ツアー"AA= LIVE from story of Suite #19"が、2月26日、LIQUIDROOM ebisuで最終日を迎えた。コロナ禍という時代性を映し、AA=作品の中でもコンセプチュアルで物語的なアルバム『story of Suite #19』を、ライヴという場でどう表現していくのか。開演の時を待つ観客の緊張感は高く、またそこに久しぶりの有観客、生のライヴを迎えた期待や興奮が織り混ざった空気を生んでいる。そして、会場内にはアルバムの通底音的な不穏で閉塞感のあるノイズが流れ、じわりと観客を作品世界へと引っ張り込んでいった。
スクリーンには、アートワークなどを手掛けるshichigoro-shingoのイラストを使用した「Suite #19」のMV"the short film Suite #19"が流れ、ステージに上田剛士(Ba/Vo/Prog)が登場した。物語の始まりを告げる「Chapter 1_冬の到来」のストーリーテリングに乗せて、ノイズを生み出し、閉ざされた世界とその中での感情の蠢きを、映像と緊迫したノイズとで表現。作品のストーリーに則って、「Chapter 2_閉ざされた扉、その理」、「Chapter 3_美しい世界」と進んでいきながら、ドラマー YOUTH-K!!!が登場し、ドラム&ノイズによるスリリングなブレイクビーツの掛け合いや、ドラム&ベースと生の楽器同士で、さらにボルテージの高いアンサンブルで会場の熱気を上げる。児島 実(ex-THE MAD CAPSULE MARKETS/Gt)が加わり、さらに白川貴善(BACK DROP BOMB/Noshow/Vo)が登場した4人編成で、ヒリヒリとした作品世界と物語の先にあるだろう明るい兆しを、繊細且つダイナミックな迫力あるアンサンブルで描いていく。より生々しい無骨さも露わで、ハードコアな印象も強い。映像、照明でイマジネイティヴに作り上げられたステージでもあるが、歪みがブーストされたザラザラとした残響やライヴハウスという場所の空気もあいまって、アルバム『story of Suite #19』をよりリアルに体感するライヴだ。
MCなどなしでアルバム世界を濃厚に表現した前半から、改めて"AA=です、よろしくお願いします"と挨拶をし突入した後半は、これまでの6作品のオリジナル・アルバムから新旧織り交ぜた曲で構成された。『story of Suite #19』の世界にガッチリと組み込まれ、またステージで起こることを逃すまいという緊張感が、「PICK UP THE PIECES」、「NOISE OSC」で一気に解けて、観客は拳を掲げ身体を揺らしながらその音に身を委ねていく。「2010 DIGItoTALism」から「憎悪は加速して人類は消滅す ~Hatred too go fast, Vanishing all human~」へという怒濤の流れと、その攻撃的なビートとバンド・アンサンブルとが生む勢いは凄まじい。コロナ禍ゆえのライヴ観戦における制限はあるが、フロアの温度が高まるのを肌で感じる瞬間だ。迸る興奮をなだめるようなメロディが美しい「Such a beautiful plastic world!!!」、そしてその甘美な残響の中で"来てくれてありがとう。最後まで楽しんでいって"(上田)と言うや、再び破壊力満点のブレイクビーツで「POSER」を突きつけ、「TEKNOT」の激しいノイズをフロアにぶちまけていった。アルバム『story of Suite #19』の世界観からグッと切り替わったようにも思えたが、変わらず世界は混沌としたままでもある、そんな今の肌感覚をより鋭利にしていくようなセットリストの流れにも感じる。「The Klock」からの終盤はエモーショナルに、また「ROOTS」で軽やかにステップを踏ませ、「posi-JUMPER」で再び高く拳を突き上げさせた。ラストに置いたのは「SAW」。"オレたちの闘争はまだ続く"と歌うフレーズが、パンキッシュなドラム、ノイジーなギターとともに大きく響いた。
アンコールでは、2年ぶりに開催できたツアーへの思いや来てくれた人、来れなかった人へ感謝を伝え2年前とは(ライヴでの)景色は変わっているけれど、今しかできないこと、今しかできない作品、今しかできないライヴをやってきたと、上田は語った。そして「NEW HELLO」、「FREEDOM」に続いて演奏されたのは、"本当は今日やるつもりはなかった曲"(上田)だったという「PEACE!!!」。ロシアのウクライナへの侵攻を受けての選曲だろう。ライヴのラストに演奏される定番の曲ではあるが、この日フロアに掲げられたピース・サインはより力強く今に突きつけるものになった。
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