LIVE REPORT
SiM
2016.10.16 @横浜アリーナ
Writer 吉羽 さおり
2016年4月にリリースした4thアルバム『THE BEAUTiFUL PEOPLE』を携えた全国ツアー"THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR 2016"の最終章となるライヴ、[THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR 2016 GRAND FiNAL "DEAD MAN WALKiNG"]が横浜アリーナで開催された。会場に入ってまず驚くのが、装飾の施されたステージ。昨年行った初の武道館公演ではアリーナ中央にステージを組み、ほぼ全方位が観客に囲まれるという死角なしの状況で、バンドのありのままの姿をソリッドに見せるものだったが、今回はバンドや作品の世界観で観客を取り囲むかのようなイメージだ。ホラー要素が満載の墓場のセットには、巨大なガーゴイルが鎮座し、静かに地を這うようなスモークが不気味さに拍車をかける。この舞台装置と、メンバーそれぞれがゾンビに扮したオープニング映像で、会場の興奮度が上昇。そこへ、地底から這い出たように、舞台のせり上がりからSiMのメンバーが登場すると、スタンディングのアリーナが大きく波打って歓声を上げた。
客席まで熱を感じる特効の炎が立ち上る「THE KiNG」でスタートし、「NO FUTURE」、そして「Abel and Cain」など『THE BEAUTiFUL PEOPLE』収録曲を中心にした序盤から、MAH(Vo)は凄まじいパワーで会場を掌握していく。屈強且つ痺れる爆音でモッシュを起こし、レゲエ・チューン「Abel and Cain」ではシンガロングとともにステップを踏ませる。"伝家の宝刀、「TxHxC」!! 回れ!"というMAHの咆哮で、アリーナのあちらこちらに大きなサークルが生まれ、SHOW-HATE(Gt)とSIN(Ba)はステージの端から端までアグレッシヴに飛び回り、コブシや頭を振る観客に燃料を投下。始まりから高いテンションで観客を振り回し、会場を大きく揺さぶるステージだ。
"ただのライヴではない。ただのショーでもない。今日は、みんなででっかいアトラクションに来たと思って楽しんでほしい"と、MAHが語る。この横浜アリーナでライヴを行うことは、昨年の武道館公演の際にアルバムのリリースとともに発表された。ラウド・シーンでもロック・シーンでも、この規模の会場を埋められるバンドは数少ないし、挑戦的なスケール感でもある。"久しぶりにやる曲"と紹介した「FUCK iT ALL」をプレイする前にMAHが、"この曲に限って写真や動画を撮っても構わないから、今から起こることを世界中にばらまいてください"と呼び掛けた。アリーナが一面もみくちゃになって熱気を巻き上げ、"飛ぶぞ"のコールで一斉ジャンプする。バンドで、このスケールで、ライヴハウスのピュアな熱量を何十倍にもしたライヴができるんだという、SiMの自負を見せつけられた感がある。結成から10余年、決して順風満帆だったとは言えないが、常に少し先の姿を思い描いてひとつひとつ形にすべく奔走してきたSiMだからこそのステージ。"やってできないことはない"とMAHは語ったが、それはバンド主体でここまで走って来たからこその言葉だろう。"バンドやってる奴いる? 俺らもやったから。次は君の番じゃないですか。楽しみに待ってます、SiMを倒しに来てください"と語り、"やり続けても叶わない夢もあるけれど、夢を叶えるのはやり続けた奴だ"というMAHの言葉が、すべてだったように思う。
武道館でのライヴに続いて、この横浜アリーナでも中盤にアコースティック・コーナーを設けた。『THE BEAUTiFUL PEOPLE』から「If I Die」、その対になる曲「Paradox」、また、ライヴでやるのは2回目くらいだといって「Misery」を披露した。重厚な響きとは一転して、静かにストーリーを語るように歌い、家に帰って改めて歌詞を見てみてほしいとその思いを伝えた。
再びバンド・セットへと戻り「GUNSHOTS」でスタートした後半。SHOW-HATEの頭上にはワイヤーが。武道館のときはドラマー GODRiがワイヤーで空中へという展開があったが、今回はバンドのWEBサイトやチケットにも"※ワイヤーアクションはありません"とわざわざ記していた。それだけに、何かやらかすのだろうと観客も思っていたが、まさかの曲中にギターだけがグングンと上昇し、爆破! 実はステージ袖で盟友であるcoldrainのSugiが弾いていたというオチ。友人を巻き込んでの、やりたい放題である。そしてここからラストまで、もうひと暴れ。間髪いれずに、アグレッシヴなアンサンブルで会場をかき回し、「f.a.i.t.h」ではMAHが両手でグッと扉をこじ開けるような仕草で、フロアの観客を左右に分け、横浜アリーナでのウォール・オブ・デス。"結局いつもどおり、すいませんでした!"というMAHの言葉を合図に、フロアがカオスと化した。熱気とともに笑顔も弾ける会場に、力強いグロウルが響き渡った。
終演とともに、来年3月から[THE BEAUTiFUL PEOPLE TOUR -season II- "ONEMAN SHOWS 2017"]と銘打ったワンマン・ツアーを行うことが発表され、さらに各公演で新曲解禁と、早くも次なるフェーズへの突入をアナウンスしたSiM。この横浜アリーナは、まだまだ通過点のひとつにすぎない。
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