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LIVE REPORT

GALNERYUS

2014.11.23 @渋谷公会堂

Writer 村岡 俊介(DJ ムラオカ)

初のヨーロッパ・ツアーやSUMMER SONIC 2014出演など、J-METAL布教に余念のないGALNERYUSが、10周年を総括する2枚のセルフ・カバー・アルバムのリリースから1年、オリジナル・フル・アルバムとしては約2年ぶりとなる『VETELGYUS』を9月24日にリリースした。そのリリースから間もない10月10日の福岡 BEAT STATIONを皮切りに行われた全国ツアー"THE VOYAGE TO THE BOUNDLESS UNIVERSE" TOUR 2014は、GALNERYUSにとって全16箇所という過去最多の公演数を記録したツアーとなった(※10月13日松山サロンキティ公演は台風のため延期)。そのツアーの工程で『VETELGYUS』の魅力的な楽曲たちが如何に再現されるかを確かめるべく、渋谷公会堂に向かった。
僕が渋谷公会堂に到着したのは開演間際であったが、結構な数のお客さんがまだ入場口に並んでおり、一目見て盛況であることが分かる。客層は他のトゥルー・メタル・バンドより圧倒的に幅広く、革ジャンを着た40代もいればカジュアルなファッションをまとった20代の若いお客さんもいる。彼らのサウンドがコアなメタル層に留まらず幅広い音楽ファンに刺さっている証拠だろう。そして会場に入りステージを見渡すと前方ステージより坂を経てキーボードとドラムセットが一段高くなっており、またその後方はさらに一段高いひな壇のようなセットになっている。またバックドロップの代わりに前述の坂の斜面に"GALNERYUS"のロゴが浮かび上がっているという、ファイナルに相応しい凝ったステージセットだ。

予定時刻より若干遅れて、『VETELGYUS』のオープニングを飾る荘厳なSE「REDSTAR RISING」が会場に流れ、ドラムのJun-ichiとキーボードのYUHKIは中段に置かれたそれぞれの楽器の元へ、ヴォーカルのSHOとギターのSyu、ベースのTAKAは最上段に現れる。そしてアルバム通りの流れで日本語詞のメロスピ・チューン「ENDLESS STORY」へ。疾走感のあるツーバスや早弾きのギターも非常にテクニカルで頭っからフルスロットルで突っ走る。実は本日のセットリストだが、『VETELGYUS』のアルバム忠実再現とまではいかないまでも、『VETELGYUS』収録の全11曲のみで既存曲を全く挟まずに連続でプレイしたことをまず先に述べておこう(アルバム・ラスト収録のインスト・バラード「THE VOYAGE」はエンディングSEとして使用)。引き続きアルバム通り「THERE'S NO ESCAPE」をプレイ。モダンでグルーヴィな縦ノリのアプローチが今までの彼らにないスタイルの曲だが、間奏でリズムに合わせてSHOがジャンプしたりとあまり目にすることのない光景だ。今までにないタイプの曲だが観客のウケもすこぶるいい。今後こういった方向性の曲も増えてくるのではないだろうか。そしてオーセンティックなヘヴィ・メタルの「ULTIMATUM」が終わるとSHOによるMCへ。ファイナル公演だが力むことなく百戦錬磨のバンドならではのSHOのMCが会場をリラックスしたムードに変えていく。その後アルバムでは10曲目に収録されている「THE GUIDE」へ。楽曲の持つ緊張感にリンクした赤基調のスリリングなライティングも素晴らしい。SHOがMCで言っていたが、視覚的にも楽しめるファイナルならではのスペシャル感が満載なステージである。山あり谷ありの劇的な8分近い大作「ENEMY TO INJUSTICE」が放たれると後半の勇壮なシンガロング・パートでは会場中が一体となってコブシを振り上げる。その後一旦SHOがステージを後にし、アルバム・タイトルのインスト曲「VETELGYUS」では楽器隊のテクニカル且つエモーショナルなプレイを堪能。「VETELGYUS」が終わりステージが暗転すると「THE JUDGEMENT DAY」の荘厳なイントロを背に再びSHOが登場。スピード・メタル・ナンバーでさらにギアを上げていき圧巻のハイトーン・ヴォーカルが会場中に鳴り響く。MCを挟んで10月からオンエアされているアニメ"曇天に笑う"のタイアップ曲にしてアルバム随一のバラード「ATTITUDE TO LIFE」へ。Syuのメロウでエモーショナルなギター・ソロも、柔らかく歌い上げるSHOのクリスタル・ヴォイスもシーンを見渡してみても孤高の存在というほかない。ピアノの絡み方やベース・ラインがアダルトな「SECRET LOVE」ではミラーボールがムード満点に回るディスコのような照明のなか、SHOの動きに合わせお客さんたちが左右に手を振っている光景は一体感に溢れていて感動的ですらある。「THERE'S NO ESCAPE」もそうだが、この曲もGALNERYUSの楽曲の幅を大きく広げた1曲と言えるだろう。

Jun-ichiのドラム・ソロを挟んで『PHOENIX RISING』より「BASH OUT!」を披露。この曲が『VETELGYUS』以外から演奏された始めての曲である。ステージに2台設置されたパイロが絶妙なタイミングを見計らい火を噴く。会場一体となって雄雄しいシンガロングが巻き起こるなか、パイロとスモークと派手なライティングが何倍もの相乗効果となって会場のボルテージはさらにヒートアップしていく。そして再び『VETELGYUS』からメロスピ・チューン「I WISH」が放たれる。派手なパイロにムービングを駆使した劇的な照明も相まって会場は大いに盛り上がり全員のコブシが掲げられクライマックスを迎えたところで本編が終了した。
アンコールではシングル『ATTITUDE TO LIFE』のカップリング曲「MY FAITH」、続けて『ANGEL OF SALVATION』から覚醒感の強いメロスピ・チューン「THE PROMISED FLAG」を披露し、惜しみない拍手を背に再びメンバーは舞台袖に消えていく。Syuのギター・ソロも行わず終演することなどないとファンは知ってか、メンバーが去っても誰一人帰ろうとするものはいない。そして期待通り再びステージにSyu、YUHKIが現れ超絶テクニックに裏打ちされたプレイで2度目のアンコールがスタート。そして『THE IRONHEARTED FLAG Vol.2 : REFORMATION SIDE』随一のアグレッシヴなメロスピ・チューン「RISE UP」へと繋がっていく。さらに3回目のアンコールではSHO加入の記念すべきアルバム『RESURRECTION』よりYouTube再生回数200万回弱という彼らの代表曲「DESTINY」を披露。SHOも最後の力を振り絞るようにハイトーンを駆使して絶唱、そして各楽器隊の超絶テクニカルなプレイも長時間のライヴによって衰えることもなく最後まで最高のクオリティで聴かせてくれた。これぞ日本が世界に誇るメタル・バンドだということを再認識させられた。
こうして大円団を迎えたTHE VOYAGE TO THE BOUNDLESS UNIVERSE" TOUR 2014ファイナル公演だったが、最も印象に残ったのは素晴らしい楽曲を数多く世に出してきた彼らが、あえて最新アルバム収録曲だけでアンコール間近までセットリストを組んでいたことだろう。これは最新作に相当の自信を持っていてもそう簡単には決断できない"攻めの選択"だと思う。10周年を越えても守りに入ることなく攻め続ける姿勢のGALNERYUSをこれからも応援していきたいと改めて思わされたライヴであった。

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