INTERVIEW
10-FEET
2016.07.15UPDATE
2016年07月号掲載
Member:TAKUMA(Vo/Gt) NAOKI(Ba/Vo) KOUICHI(Dr/Cho)
Interviewer:荒金 良介
-この曲は歌詞から先にできたんですか?
TAKUMA:いや、曲からです。歌詞は最後につけました。
-曲のモチーフはどこから?
TAKUMA:最初はサビしかなくて。スタジオで簡単にAメロはこんな感じ、Bメロはこんな感じと進めて、それをそのまま採用しました。サビの譜割とメロディをどうやって活かそうかなって、それしか考えてなかったですね。で、どうしたら"ロック"に感じてもらえるかなと。
-この曲で意識した"ロック感"とは?
TAKUMA:わかりやすいロックの表現だと、激しく歌うことやアップテンポにすることだと思うんですよ。だけど、静かな曲やゆっくりした曲でも熱量を感じるものがあるだろうし。"この曲はロックな感じで聴いてもらいたい!"と思って、失敗したこともありますからね。この曲の良さをどう活かせばいいのか......サビがすごくいいと思ったから、そこを一番いい形で押し出したいなと。
NAOKI:いろんなリズム・パターンも試したけど、ニュアンスを変えるだけで、サビの聴こえ方も全然変わるんですよ。今のAメロはそこまで激しくないけど、このパターンに落ち着いたときに、サビが一番サビっぽく感じたから。歌メロは同じでも、リズム・パターンが違うだけで、ロックっぽさがなくなったり、出てきたりするんだなと。それは作ってるときも楽しかったですね。
-なるほど。
NAOKI:こういうタイプの曲調をシングルで切るのは、僕らにしたら珍しいかもしれないけど。その結果、1枚通して聴いたときにバンドっぽさ、ロックっぽさを曲全体で感じられると思うし、激しい曲に聴こえる展開になったと思います。
KOUICHI:メロディがいいから、それを活かすことしか考えなかったですね。歌から始まるところとか、今までやってなかったこともやってるし。完全なる歌モノではないというか、バンド・サウンドならではの仕上がりになってると思います。
-「アンテナラスト」はTAKUMA君のアカペラで始まるところから心を掴まれてしまいます。このアイディアはどの段階で思いついたんですか?
TAKUMA:サビがデモの段階で出てきたときから、最初の案としてありました。いつもの10-FEETっぽいアプローチもいっぱいあったけど、それだとサビの聴こえ方が変わってくるから。ぶっちゃけ、最初はアカペラで始まってるけど、Aメロのテンポ感が速くない以外は、わりといつもの10-FEETとそれほど大きく変わらなくて。だけど、そういうAメロがあるだけで、ゆっくりで静かな曲という印象を与えるのかなと。そういう意味でも曲が持ってる良さを出せたと思います。
-あと、曲名もユニークですよね。
TAKUMA:"ラスト(Rust)"は青錆、鉄錆とか"錆びたアンテナ"という意味ですね。錆びたアンテナでしか受信できないものがあるんじゃないかと。
-それが今、自分たちが置かれている状況にも当てはまる?
TAKUMA:自分たちというか、いろんな人に話を聞くと、そう思いますね。みんな命を削りながら闘っているなと。
-"錆びたアンテナ"という言葉は、いろんな解釈ができますよね。年老いていくことや感受性が鈍ることだったり。
TAKUMA:心が擦れたり、拗ねたりとか、そういうイメージでつけたんですけど。人によって解釈が違ってもいいかなと。傷ついたり、傷つけたりして、人の良いところも悪いところもいろいろ知るじゃないですか。余計なこともたくさん覚えたり、知ることもあるだろうけど......擦れて性格が悪くなったり、人と接しすぎて冷たくなったり、人の言葉を透かして見るような奴になっても、別に腐ることはないよ、というか。だからこそわかる純粋さもあると思うから。拗ねると寂しい思いもすると思うんですよ。自分の中にあるそういう部分を、みんなのそれと重ねたくて。それが良いか悪いかわからないし、正解はないんだけれど、重ねることで僕とあなたの中で答えが生まれるのかなって。
-歌詞の内容自体も悲しいというか、根底に切なさがありますよね。
TAKUMA:ネガティヴになりすぎるのも、どうかと思うけど。悲しいことをエネルギッシュに歌うことが本来、音楽のあるべき形な気がして。悲しいこと、切ないことを熱量を持って歌う。すごくポジティヴに歌ってほしいときもあるけど、中途半端にポジティヴに歌うなら、ただただ悲しいことをありのままに歌ってくれた方が感情移入できることもあるから。言ってることは悲しいことかもしれないけど、ここにも同じ思いをしてる人がいるんだなって。そう感じてもらえたら、ポジティヴなメッセージとして受け止めてもらえるかなと。友達と飲んでるときに"そっちも頑張ってるなぁ"と言い合えたときに救われるところもあると思うんですよ。"歌"って、そういう力を持ってると思うから。BEGINさんの曲も優しいメロディとコード進行だけど、歌詞はものすごく悲しいことを歌ってたりして。そこに、歌の力を感じる瞬間がありますからね。