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FEATURE

10-FEET

2013.06.11UPDATE

2013年06月号掲載

10-FEETの人間性が炙り出された3時間超えのライヴ&ドキュメンタリーDVD

ライター:荒金 良介

10-FEETの7thアルバム『thread』は過去作と比べて、最も日本語詞の割合が多い作品となった。全12曲中7曲を日本語が占めている。今作は行き当たりばったりで、1曲ずつ作り上げたそうだ。アルバム全体のバランスを俯瞰して、タイプが被らないように違う楽曲を準備するとか、用意周到に策を練った音源とは趣を異にする。目の前の楽曲に最大限の集中力を注ぎ、結果的にアルバムに足る曲数ができた、と言える。その解釈をもっと広げれば、日本語詞が多くなったのも心が赴くままに取り組んだ結果なのだろう。

“最初に込めた気持ちを活かすことが多かったので、伝えたい核にあるものが赤裸々になってる気がする。そういう意味では10-FEETの3人が真髄を見い出し始めたのかなと。アルバムの振り幅どうこうよりも、カロリーの高い曲ばかり選びました”と、アルバム取材時にTAKUMA(Vo/Gt)はこんな発言をしていた。だからこそ、今作はバンド史上最高にエモーショナルな音源になった。換言すれば、とてつもなく人間臭い、いや、今の10-FEETは“人間”そのものを鳴らしている。

その最新作に伴うレコ発ツアーは、昨年10月から今年5月までの8カ月に渡って行われ、これまでの中で最多の72本を敢行した。そして、今回ライヴ&ドキュメンタリーDVD『OF THE KIDS, BY THE KIDS, FOR THE KIDS! VI』が発売された。2枚組仕様3時間オーバーの内容だ。1枚目は42本目にあたるCLUB CITTA' KAWASAKI公演を全曲収録(111分)、2枚目は3月12日から20日にかけて行われた東北公演にカメラが密着(75分)した形で、熱狂的なステージの舞台裏や日常に焦点を当てた興味深い内容になっている。僕はツアー序盤戦にあたるZepp Tokyo公演(昨年11月6日)を観てきた。その日は最新作から「求め合う日々」を除く11曲がセットリストに組み込まれていた。毎回レコ発ツアーには足を運んでいるから、どんなステージングをするかをおおよその予想は付く。しかし、ライヴが始まってほんの数曲でただただ驚き、終了後も感動の余韻がずっと抜けなかった。決して誇張ではない。心からそう思った。これまでとは熱気や温度の質が違ったのだ。観客の盛り上がりは相変わらず凄かったが、その熱源たる10-FEETのパフォーマンスはズバ抜けていた。終始フルテンションで、観ているこちらが大丈夫?と余計な心配をしたくなるほど、飛ばしまくる。アジテーター兼メッセンジャーとしての役割は完璧だ。そこに笑いのスパイスを付加させ、彼ららしいエンターテイメント性を遺憾なく発揮していた。喜怒哀楽のすべてが極限でスパークしたライヴだった。今作に収められているCLUB CITTA' KAWASAKI公演を観ても、その時に感じたものと大きくは変わらない。ただ、改めてじっくり観返してみると、なぜ自分がいままでとは違う感情を揺さぶられたのか。それがクリアに見えてきた。それはアゲアゲでイケイケな熱さとは対極に位置する、ウェットでセンチメンタルなムードを感じたからだ。それが顕著に表れたのが後半の「淋しさに火をくべ」、「シガードッグ」、「CRYBABY」、「その向こうへ」の4曲の流れだ。どれも最新作に収録された日本語チューンである。楽曲への導火となる曲間に挟まれる言霊MC、この胸の内の感情は言葉で伝えられないと言わんばかりに叫ぶTAKUMAの姿に、涙腺を刺激された。しかも彼はライヴ中に“人生には良いことも悪いこともある……”と何度も語っていた。観客に告げながらも、自らに言い聞かせるように。もちろん、人生は楽しくて、笑って過ごせる日々ばかりではない。辛いことや悲しいこともたくさんある。楽しくて笑える道だけを歩けるなら、誰もがそうしたいだろう。しかし、辛さや悲しみも避けて通れない道として、ある。無視できるならそうしたいが、ある日突然向こうから降りかかってくることもある。ならば、その負の要素から目を逸らさず、真正面から見据えることで、今日、明日、未来を激しく生きるための正のエネルギーに変換できないものか。今の10-FEETのライヴを観ていると、悲喜こもごもの感情を観客と一緒に共有して、前に進んで行こうとする強靭な意志を感じる。そういう意味でちょっと大人になった10-FEETがいた。冒頭で僕は、今の10-FEETは“人間”を鳴らしていると書いた。TAKUMAの言葉を引用するならば“10-FEETの3人が真髄”を見せるようになった。つまり等身大で歳相応の自分たちを鳴らし始めたと解釈できる。汗かいて暴れて非日常のパーティーだ!でライヴが終わる。それもいいだろう。でもなぜ、普段大人しい自分がぐしゃぐちゃになって大暴れして、時間を忘れるほど楽しいパーティーに身を委ねているんだろう。ライヴハウスが楽しさを知る場所であると同時に、楽しいという感情そのものについて考える場であってもいい。それを知るためには、ウェットでセンチメンタルな情景を共有することも大切なのではないか。今作のライヴ映像を見ながら、そんなメッセージを受け取った。

もう1つの映像は先述した通り、ドキュメンタリー・タッチで東北シリーズを追ったものである。これがまた、メンバーその人となりを飾らずに描写した内容で実に楽しめた。例えば楽屋裏でTAKUMAがシリアスに呟いた後、KOUICHI(Dr/Cho)とジャレ合う虚実皮膜を捉えたやり取りや笑えるシーンも盛り沢山だ。その半面、東北が舞台ということもあり、復興していく街並みの様子、ライヴハウスに集まる観客の真剣な表情、現地でメンバー自らおいしそうにご飯を食べている場面もあり、なるべくフラットな視点で日常を切り取った映像に好感が持てる。観終わった後、10-FEETらしい仕上がりだなあと膝を打った。彼らは1997年に地元京都でTAKUMA、NAOKI(Ba/Vo)、KOUICHIの3人で結成された。僕が初めて聴いたのは記念すべきデビュー・シングル「april fool」(2001年発表)からで、当時から人懐っこいメロディに衝撃を受けた1人だ。それから現在に至るまで彼らに魅了されている。現在に至るまでのバンドの流れや人間関係、今感じることなどもそれぞれの視点で躊躇なく語ってくれている。今作を観れば、より一層10-FEETのことが好きになるに違いない。

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