LIVE REPORT
ROTTENGRAFFTY
2018.10.03 @日本武道館
Writer 吉羽 さおり
3月24日に神戸太陽と虎からスタートした"ROTTENGRAFFTY PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018"が、日本武道館で最終日を迎えた。ROTTENGRAFFTYにとって初の武道館公演となるこの日、オール・スタンディングのフロアには、背中に"610"とプリントされたおなじみのTシャツのほか、今回の全国ツアーで制作された各会場の都市名と市外局番がプリントされたTシャツ姿のキッズもいる。ツアーでは、それぞれの市外局番のTシャツを着て武道館に来てほしいと各地でMCしていたそうだが、バンドの想いどおりに、北海道や九州、そして彼らの地元関西からも、そのTシャツを着た人々がこの晴れの舞台に集まった。フロアは開演前からバンドを迎え入れるいいテンションとなっている。"やろうか、武道館"。N∀OKI(Vo)の声でスタートしたライヴは、最新アルバム『PLAY』から「寂寞 -sekibaku-」、「PLAYBACK」、「SHRED」を連投。レーザーなどの派手な演出もあるが、何よりもステージからのエモーショナルな熱波と、観客が押し合いへし合いしながら生み出す熱気とのせめぎ合いが凄まじい。観客は頭から、声をからしそうなほどの勢いで歌っている。
"ついに来たぞ、武道館。今日はとことんやろうぜ"(NOBUYA/Vo)という声から始まった「So...Start」では、スタンディング・エリアの各ブロックで大きなサークルができ、HIROSHI(Dr)と侑威地(Ba)による強靭なビートと、KAZUOMI(Gt/Prog)のノイジーなギターに沸き、アグレッシヴに跳ね回りながらシンガロングする。アルバム『PLAY』の曲を中心に据えつつも、"懐かしい曲を"と「毒学PO.P革新犯」(2003年リリースの3rdミニ・アルバム『SYNCHRONICITIZM』収録)といったような初期の曲を交えるなど、集大成的なセットリストにもなっている。尖ったフレーズやテイストをどんどんミックスしていく、傍若無人なアグレッシヴさを持ったサウンドでありつつも、ほろっと哀愁を滲ませるキャッチーなワードや熱い人生観を歌に込めていく、ロットン(ROTTENGRAFFTY)節と言うべきものは変わらない。そのバンドの19年を噛みしめるステージだ。
"ロットン史上最長ツアーが、ついにここに辿り着きました。濃いライヴばかりやった。ほんまにありがとうございます"(N∀OKI)と述べながらも、"え、俺らが武道館!?"と、N∀OKIとNOBUYAが声を合わせる。そして、1999年に結成し、不器用な5人だと言われ、遠回りしながらもここまで来たことを語り、"俺ら今、ロットン史上一番アガってます!"(N∀OKI)と叫び、さらなる攻撃の狼煙を上げる。中盤は「「70cm四方の窓辺」」など激情感のある曲や、"目一杯デカい声で! この声で何かが変わる"とNOBUYAが盛り上げながら「響く都」で盛大なコール&レスポンスを起こし、「STAY REAL」、「零戦SOUNDSYSTEM」とグイグイと観客に汗をかかせる曲を連投。「零戦SOUNDSYSTEM」では、KAZUOMIがギターを置いてステージの上手から下手へと走り回って、フロアの熱を指揮する。会場を汗だくにしたあとは、今この武道館という場所に立っている想いや感謝を、5人それぞれが改めて語る。結成時は"周りは全員敵だ"という姿勢でやっていて、ふと気づいたときには、"もう後輩のバンドや10-FEETしかおらへんかった"と笑いつつ、"それでも濃い仲間が多い。バンドマンの温かさに支えられて、19年間紆余曲折はありながらも、今ここに立っているのがすべて"だというメンバーの言葉に、会場が大きな歓声に包まれた。"全国のライヴハウスをくまなく回り、たたき上げでここまで来た。続けてきたからこそのもので、そこに真実がある"と語る力強さは胸に響く。NOBUYAは"もう1回武道館やってみたい。今はそういう気持ち。そのときはお前ら頼むぞ"と語った。また、KAZUOMIは、"松原、見てるか!"と現在ガンと闘う彼らの所属事務所社長、松原 裕氏に呼び掛けると、続く「アイオイ」は松原氏のことを書いた曲だと語り、全力で響きわたらせた。この武道館は、ROTTENGRAFFTYとしてなんとしても見せたい景色だったのだろう。普段、全国のライヴハウスで公演を行い、泥臭い活動を重ねているバンドのひとつの夢の舞台として、あるいは充実したツアーの集大成としてこの武道館というステージを実現する、その想いを叶えるエネルギーというものを、松原氏はもちろん、観客にも身をもって示したかった。その想いを感じる。
後半は「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence」や「D.A.N.C.E.」、「金色グラフティー」といったライヴの鉄板曲を連投して大合唱を巻き起こし、"なんでもいい、声を聞かせてくれ!"とさらに煽っていくと、「Rainy」では観客が叫びのようなコーラスを轟かせる。本編のラストに選んだのは、2013年の5thアルバム『Walk』から「Error...」。感動的なシーンもいくつもあったが、最後の最後は大団円......でなく、あくまでROTTENGRAFFTYというバンドの姿勢やスピリットを示すように、アグレッシヴに締めくくった。攻撃的に拳を上げ、負の感情をポジティヴなパワーに変えながら歌い、"俺らが、京都からやってきたROTTENGRAFFTYだ!"というNOBUYAのシャウトとともに、ステージ背面に"ROTTENGRAFFTY PLAY ALL AROUND JAPAN TOUR 2018 in 日本武道館"の文字が大きく映し出される。観客の汗まみれの笑顔や歓声、高く突き上げる拳越しの、そのタイトルに改めてグッと気持ちが高まる、記念碑的な一夜となった。
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