LIVE REPORT
SiM
2014.10.13 @川崎CLUB CITTA'
Writer Reported by 荒金 良介 Photo by HayachiN / 半田安政(Showcase)
"i AGAINST i" TOUR 2014 Day.1 - ONE MAN SHOW -という題名通り、最新ミニ・アルバム『i AGAINST i』レコ発ツアー初日はワンマン公演で、しかも彼らの地元 川崎CLUB CITTA'で開催された。この日関東には台風が接近していたが(帰りも大丈夫でした)、会場は立錐の余地もないほど埋まり、SiMの出番を待ち受ける観客の熱さが開演前からひしひしと伝わってきた。
"川崎、声出せよ!"とMAH(Vo)は初っ端から闘志剥き出しで煽り、SHOW-HATE(Gt/Synth)とSIN(Ba)は楽器を体の周りでグルングルン勢いよく回し、GODRi(Dr)は激しいビートを叩き付けてくる。いきなり全力で駆け抜けるバンドのエナジーに応えるように、観客もクラウドサーフ&大合唱で迎え入れ、送り手と受け手で生み出す熱気の高さに驚いた。"拳を上げて、体をぶつけ合って......それは憎しみ合うことじゃなく、ひとつになることだから"とMAHが言うと、ステージ前方に4本の炎が打ち上げられる特効の仕掛けがあり、「RiOT」が放たれる。新作の中でも従来のラウド路線を継承した曲調ではあるが、オーオーのコーラスと相まってキャッチーさに磨きをかけた楽曲は好リアクションを得ていた。
続いてネガティヴな体験からポジティヴな教訓を引き出した歌詞も読み応え十分な「Fallen Idols」へと移る。レゲエ調のメロディ、緩急溢れる曲展開はライヴでより一層映え、フロアに大きなサークル・モッシュを作り上げる。またSHOW-HATEが途中でシンセを弾く場面があり、新たな色彩感とムードを現場に持ち込み、豊かな広がりをもたらすサウンドも効果的だった。その後も"もっと歌ってくれよ!"とMAHは曲中においても観客と濃密なコミュニケーションを図ろうと試みる。"翼がなくても関係ねぇ! だから、何度でも飛べるんだ!"と言ってのけ、性急なビートで畳み掛ける「IKAROS」をプレイ。その勢いに満杯のフロアに余白ができるほど、観客は激しく暴れ回る大フィーバーっぷり。曲の後半に差し込まれる日本語詞は立体感を持って迫り、また哀愁たっぷりのギター・ソロもフック十分で、ステージに注がれた黄色の照明も曲調にマッチしていた。
湘南発の彼らにとって、川崎CLUB CITTA'でライヴをやることはひとつの目標であり、憧れの場所だった。そこでワンマンを切り、ソールド・アウトになったこの日は格別な達成感があったことだろう。"神奈川で生まれた者として、バンド主催の"DEAD POP FESTIVAL"を野外でやるぞ! 俺はやるぞ! そのときはみんな見届けに来てほしい。"とMAHは熱く語りかけ、1stアルバム『Silence iz Mine』収録の「Rum」へ繋ぐ。そういえば、ステージ背面に飾られたバックドロップには"静寂は我の物なり"という意のSilence iz Mine(=SiM)が黒地に白文字でくっきり印刷されていた。荒ぶる激高ナンバーに注目が集まりがちだけど、こうしたスローでシンプルな曲調にもSiMの真骨頂が刻まれている。聴く者を広大な草原に、あるいは、境目なき青空に引きずり込むようなスケール感にシビれた。途中で天井から雪を降らせ、視覚と聴覚の両方に訴える演出も素晴しかった。
後半は地元 湘南の大先輩にも触れ、それから大きな夢をここで堂々と宣言する。"山嵐は湘南で野外イベントをやっていたけど、俺らも神奈川を盛り上げていきたい。それと、そろそろ武道館でやりたくて。日の丸の下で、日本人としてライヴをしたい。絶対登り詰めるから!"とMAHが言うと、大きな歓声と拍手が湧き上がった。そして、再びステージには4つの炎が舞い上がり、キラー・チューン「Blah Blah Blah」を披露。観客と夢を共有し、それに向かって一緒に突き進んでいく。そんな思いを分かち合うようにフロアも最大級の盛り上がりを見せ、SiMはツアー初日からとてつもないスタート・ダッシュを決めてくれた。
- 1