LIVE REPORT
摩天楼オペラ
2013.06.08 @Zepp Tokyo
Writer 沖 さやこ
2012年10月に"喝采と激情のグロリア"というテーマを掲げた摩天楼オペラ。同名のアルバム、全国ツアーのsceneⅠ~Ⅲと、半年間表現されてきたこの物語が、Zepp Tokyoという摩天楼オペラのワンマン史上最大のキャパシティでグランド・フィナーレを迎えた。開演前、ステージの前には赤い緞帳が下がり、場内にはクラシックの合唱曲が流れていた。その荘厳な空気に重苦しさなどは微塵もなく、オーディエンスの背中からはテーマの集大成を全身で感じようとする熱気が溢れる。
SEが流れるとフロアは手を高く掲げ、力強いクラップと歓声でバンドを歓迎する。1曲目は「GLORIA」。メンバー5人は清々しい笑みを浮かべ、1音1音に歓喜の感情を込める。フロアからは合唱が起こり、紫と白い光のペンライトも美しい。悠(Dr)の轟くツーバスと燿(Ba)の低音、苑(Vo)突き抜けるビブラート、彩雨(Key)の鮮やかなでスマートな音色、Anzi(Gt)のダイナミックなギター・リフ、全てが鮮やかでパワーが漲っている。「Psychic Paradise」の後、苑が"今日は最高の夜をお前たちに与えに来たぜ!"とテンポの良いMCでフロアを沸かす。"(フロアが)ひしめきあってるけど、(みんなが)楽しんでるのが分かるぜ"と語る苑は心から幸せそうな表情だ。「Plastic Lover」「落とし穴の底はこんな世界」とカラフルなライティングやLEDスクリーンの映像が楽曲の持つドラマを更に拡張する。"頭振れ東京!"と苑が煽るとシンフォニックな合唱曲「Justice」へ。妖艶な歌謡曲的なメロディとハードな音像の交錯で、摩天楼オペラの音世界へと引きずり込む。「悪魔の翼」は胸が張り裂けそうになるほどの切ない激情と緊張感。そこからのハード・ロッキンなアンセム曲「Innovational Symphonia」への流れは圧巻だった。メンバーひとりひとりから自分自身の音と、5人が作り出す音への誇りを強く感じ、その崇高とも言える意識の高さに息を呑む。
ドラム・ソロ、ドラム&ベース・ソロを挟みライヴは後半戦へ。"もっともっと飛ばしていこうぜ! 乗り遅れるんじゃねえぞ"と疾走感が爽快な「CAMEL」「RUSH!」へ。フロアとのコール&レスポンスもばっちりで、歓喜の感情は更に高まってゆく。シリアスでクールなのに、喜びの感情を奮い立たせるサウンドスケープ。それは5人全員が"届ける"ということを強く思い、音を奏でているからだろう。それはまさしく音楽から生まれる人間の生命力の発散だ。「Adult Children」「SWORD」「ANOMIE」と畳み掛けた後"お陰様でこんな広くて涼しい会場で、今日も(汗で)びしょ濡れです"と観客を笑わす苑。"今回のツアーはお客さんからも俺たちを楽しませようというのが伝わってきた""摩天楼オペラとオペラー(※摩天楼オペラのファンの俗称)が音楽を共有できたツアーだったと思う"と続けた。
"自分たちの音楽を絶やさないように、その願いを込めて歌います"と語り演奏された壮大なロック・バラード「永遠のブルー」、それに繋げられたインスト曲「Midnight Fanfare」。彼らの気迫と堂々とした主張に、感情全てが支配される。するとステージ上部に、黒装束を纏った合唱隊が現れ、「喝采と激情のグロリア」へ。苑の声、合唱隊の声、オーディエンスの声――人間の体の中から生まれる音であるそれの持つ力を全身で受け、奮いが止まらなかった。ラストには1曲目に演奏した「GLORIA」を再び披露。現在進行形でバンドが更新されたことを証明するパフォーマンスだった。
アンコールで揃いのツアーTシャツで登場した5人。"喝采と激情のグロリア"で得られた数々のことに感謝し、悠は"夢はまだまだ高いところにある"、燿は"この5人でもっといい景色を見たい"、Anziは"逆風も全部追い風に変えてやる"、苑は"未来に進む現実味が帯びてきた"とそれぞれの言葉で更なる展望を語った。秋口にシングルのリリースを考えていることを告げた苑は、12月に新木場STUDIO COASTにてワンマン公演を行うことを発表。"まだまだ僕たちの栄光への道筋は始まったばかり"――より加速し、スケールを増す彼らの描く世界は、まだまだとんでもないものが待ち受けているだろう。
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