INTERVIEW
G-FREAK FACTORY
2024.09.02UPDATE
2024年09月号掲載
Member:茂木 洋晃(Vo)
Interviewer:吉羽 さおり
-(笑)制作の中で、この曲は難航しながらもいい着地となったな、思い掛けない曲になったなという感触があるものは。
「HARVEST」ですね。冒頭のリリックもレコーディングの30分前くらいから書き始めて、これじゃダメだなって今の形、朗読に変えたんですけど、そういうミラクルがあったり。ダブ処理も、レコーディング・エンジニアさんがやるダブ処理ではなくて、普段の自分たちのライヴPAがダブ・アレンジをしたりしているんです。正直こうなるとは思っていなかったんですよね。もともとのイメージとしては、アルバムの最後のほうにぽんとあるような、エンディングみたいな感じで書いていたんだけど、レコーディングが進んでいくに連れて、メンバーが入れた息吹とかエンジニアさんの処理だとかで、パワーをどんどん得てきて。これはヤバいじゃんっていう。結構レコーディングあるあるなんだけどね。デモから大筋は逸れていないんだけど、めちゃめちゃ肉厚になったなと。
-特に曲の後半にかけどんどんドラマチックになっていきますね。
あの転調になったのもレコーディングの前の日でしたね、ちょっとこれ転調していい? って。転調というか、このままこのキーでお尻まで行くとしたら相当キツいから、前半を下げてくれって言ったんです。それがまた災い転じて良くなっちゃって。いいじゃんこの転調、みたいな(笑)。
-アウトロあたりで1本の映画を観終えて、エンドロールが流れている気分でした。そんなカタルシスが1曲の中に封じ込められてます。
なんかブワーッていう曲が作りたかったんですよね、こういうのがなかったから、G-FREAK FACTORYは。
-でもG-FREAK FACTORYのライヴのテンションってまさにこんなふうに、感情が思いも寄らないうねりを帯びていく感覚があるんですよね。
そのジュワーッていう激しさが出せたらいいと思っていて。細かいジャブじゃなくて、ブワーッていう。これこそ年を重ねないとできないもので。あとは若いともっといろいろやりたくなるし、Leo(Dr)だってもっとやりたかったと思うんだけど、でもこれはダブ処理があるからって音数を少なくしたら、そのまま採用になっちゃって。ライヴで再現できるか分からないけど。
-またそうした重厚なサウンドから少し雰囲気は変わりますが、G-FREAK FACTORYならではの歌心が冴える「ある日の夕べ」。こちらはどうですか。
これは珍しくヒューマンな曲ですね。昔「EVEN」(2012年リリースの3rdシングル表題曲)っていう曲で耳が聞こえなくなったらというのを書いたんですけど、さらに踏み込んで、俺がこうしてやるみたいな思いを一回書いてみよう、ってところから始めましたね。
-サウンド的なトーンとしては明るさもありますね。
この(アルバムの)中では明るいんですけどね、他のバンドと比べるとだいぶ暗いほうだけど。これはすげぇリリックに苦労しましたね(笑)。ちょうどレコーディングの狭間の時期で、最初にモチーフは決まっていたから簡単だろうくらいの気持ちでいたんですけど、一番時間がかかって、結局録ったのが最後になっちゃって。老若男女に届くもので、本音でという条件を出していくと、実はそんなに言葉がねぇぞみたいな。5、6回書き直しましたね。
-伝えたい思いとしては、分かち合って共に行こうというものですか。
特定の人といければいいっていうね。
-その感覚っていうのは茂木さん自身がずっと持っていたものですか。
なかったですね。コロナ禍とかコロナ後のこの感じってすごいもんね。人間の存在意義みたいなものとか、お金もそうだし、近い将来また全部見直されるんだろうなっていう感じがあって。例えばファミリーレストランでは、ロボットが注文を取りに来てロボットが料理を作って、無人のところでお腹を満たして、店を出たら勝手に決済されているとか、もうできるじゃないですか。これなんのために人間が必要になるんだろうって。要は(人類は)核兵器以来の悪事に手を染めてしまった感覚があるというか。AIに関する法律はまだ追いついていないし、例えば国益とか国が外交をするときに、今度はAIが強い国が一番強くなる。AIは不眠不休で24時間労働ができる、つまりエネルギーを生むことができる、じゃあ人間はなんのためにいるのかって言ったらAIのメンテナンスかAIを操るためで。で、近い将来には食糧難も来るでしょ。なんのために今があって、過去があって、未来があるんだろうみたいな。人間主体なんていう時代ではもうないんだなと思って。人間と人間のドラマっていうものがどんどん希薄になっていますよね。
-そうですね。
例えばすごいムカついたやつがいても、たぶんシンプルにケンカしないし。もう連絡を取らなければ済む話だから。本当に仲のいいやつとは言い合うけど、そうじゃないやつはほっとけよで済んじゃう。このくらいの時代になってきて。人間とはどうだったんだろうみたいな、それを書きてぇなと思ったんですよね。生きてるうちにこんなことねぇだろうなと思っていたことが、全然あるから(笑)。
-先程の話ではないですが、時代に順応していかないといけない部分もあれば、守らなければいけない大事なものもある、その狭間にいる感覚ですね。
すごい難しさと葛藤がずっとあるかな、ローカルでやっていることもそうだし。それを全部素直にアルバムに持っていけたらいいなと思った。"とにかく頑張ろう、日本人"みたいなことは今言ってもしょうがないなとか。政治批判もそうだし、もう俺が言わなくてもそんなもんとっくにみんな分かってるよっていう。
-分かってはいるけれど、ただ今はどうしていっていいか分からない、モヤモヤとしたなかを生きている感覚はあるかもしれない。
音楽ってそうじゃん。パンク・ロックもそうだし、レゲエもブルースもそうだし、ずっとそういうフラストレーションとかモヤモヤの現状を打破する、そういったものがエネルギーになって爆発していくものだと思うから。じゃあ今のそれは何があるんだろうって、こんなにあったんだけど、それが通用しないし、コロナ禍で答えが出ちゃったよみたいな。今回はそれがすごく苦しかったな。
-感じて、考えて、手探りしながら今を生きている、それがそれぞれの曲になったからこそ、揺さぶられるものがあります。インストゥルメンタル「巡-meguru-」を除けば「Parallel Number」が最後となりますが、この曲を最後に据えたのはどんな思いからですか。
「HARVEST」が最後かなと思っていたんですけど、「Parallel Number」が最後がいいな、最後っぽいなとなりましたね。これは作り始めたときは"サッカー"という曲で、サブタイトルがサッカーだったんです。メンバーもアレンジでサッカーをイメージしてくれて。
-なぜまたサッカーが?
これは、地元のサッカー選手に1曲作りたいと思ったところからですね。細貝 萌という選手で、日本代表になって海外でもプレイをしたいわゆる地元の大スターだったんだけど、最後に地元に帰ってきてここでもう一花というときに身体を壊してしまって。彼の本"この道を正解にしていく。"で、長友佑都選手とか錚々たる有名人の中で俺のインタビューも入れてもらったんですけど、年齢を重ねてまだここでやっていくことの葛藤みたいなことを彼と話したんです。俺も一緒だから教えてくれって、何度も飯を食いに行ったり、彼は地元にフットサル場を作ったんですけど、そのフットサル場でやる大会も観に行ったりして。ボツネタになってもいいから書きたいなっていうところから始まったので。
-共鳴するところがあったんですね。
細貝が世界に行ったときは"すげぇやつが出てきたな"くらいだったんですけど、波乱万丈のサッカー生活を送ってて。それにエネルギーを貰いましたね。すげぇかっこいいなって。彼の背番号が33番だから、"Parallel Number"となったんです。
-9月21日、22日には主催する"山人音楽祭 2024"が開催され、10月からはアルバム『HAZE』を携えてのツアー[G-FREAK FACTORY "HAZE" TOUR 2024-2025]がスタートします。充実したアルバムだからこそライヴもまた期待してしまいますが、今回は2025年5月までというかなりのロング・ツアーになりますね。
そうですね。ぜひ来てほしいですが、今は予定を見ないようにしてます(笑)。