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INTERVIEW

ACME

2022.01.26UPDATE

2022年01月号掲載

ACME

Member:CHISA(Vo) 将吾(Gt) RIKITO(Ba) HAL(Dr)

Interviewer:山口 哲生

-そういうお国柄って面白いですよね。

将吾:あと、ライヴハウスでびっくりしたのが、SEの話をしていたときにCDで出すという話をしたら、"いつの時代の話をしてるんだ? 流す機械すらないよ!"って(笑)。たしかにそうだよね。今はMacとかもドライヴなんてついてないし。

CHISA:でも、CDを使ったほうが安全なところもあるんですよ。データ・トラブルとかあったりするんだけど、でもまぁそうだよな......と思っていたら、次のポートランドで事故ったんです。SEが1/2倍速で流れちゃって(笑)。

-なぜまたそんなことに(苦笑)?

将吾:CDJプレイヤーかなんかでSEを流してたんですけど、たぶん、誰かが何かの拍子で(フェーダーに)当たっちゃったみたいで。

RIKITO:最初、流れてるのが自分たちのSEだって気づかなかったですからね(笑)。

CHISA:でも、お客さんは"ワー!"って盛り上がってるし。

将吾:ステージの横にあった画面にも映像が流れ始めちゃったんですよ。リハは完璧だったのにね?

RIKITO:ライヴの前日に、僕とHALさんとライヴ・スタッフ全員でミーティングしたんですよ。

HAL:自己紹介から始めて、"明日よろしくお願いします"みたいな。

RIKITO:これでもう明日は大丈夫だと思ったし、当日のリハも完璧だったけど、本番が始まったらSEが1/2のスピードだし、1曲目が始まったら外音で同期が流れなくて。あのミーティングはなんだったんだ......! って(笑)。

HAL:将吾以外の3人はイヤモニしてるから、途中まで気づかなかったんですよ。だから、将吾がPAに向かって"同期が鳴ってない"って日本語で言い続けていて(笑)。

RIKITO:それでPAのところまで日本人のスタッフがダッシュして(笑)。

-日本語で言い続けたのは、なかなか強いですね(笑)。

将吾:言えば伝わるかなと思ったんです。PAを指差して、"同期が鳴ってない、同期が鳴ってない、同期が鳴ってない"って。

CHISA:でも、お客さんは何を言っているのかわからないから、それを観て"ウワー!"って盛り上がってて(笑)。

HAL:たぶん"お前らいけるか!?"みたいな感じに見えてたんだと思う。

一同:ははははははは(爆笑)!

-たしかに言葉がわからないとそう見えそう(笑)。

将吾:俺、ちょっと怒ってましたからね。向こうに住んでいる日本の人が観に来てたんですけど、その人は気づいてました。ファン・ミーティングのときに"あのときちょっと怒ってましたよね?"って言われたんで(笑)。

CHISA:それは途中でどうにか調整して、いいライヴができたんですけど、いつも最後の曲が終わったら、エンドSEを流すんですよ。で、みんなで写真を撮って、ありがとうー! みたいなことをしているんですけど、もう終わったんだろうなと思われて、フェーダー全部下げられて、マイクも使えないしエンドSEも流れないし(笑)。で、スタッフが"何か曲を流せ!"って言ったみたいなんですけど、なぜか「残酷な天使のテーゼ」が流れ出して(笑)。

一同:ははははははは(大爆笑)!

HAL:俺ら歌ってないしね(笑)。

RIKITO:もういろんな奇跡が重なってましたね。

-笑いすぎてお腹痛い......(笑)。そんなトラブルがありながらも、最後のコスタメサはいかがでした?

HAL:なんのトラブルもなかったですね。すごく良かった。

将吾:一番良かったよね?

RIKITO:うん。もしかしたら過去一番良かったかもしれない。

CHISA:たぶん、地元では有名なライヴハウス(The Wayfarer)なんですよ。欲しいものがちゃんと返ってくるし外音もいいし、中も結構やりやすくて、すべてが良かった。だから、みんなテンション上がって、その日は気持ち良く終われましたね。そこの店長さんも気に入ってくれたみたいで、"また次も来いよ"って言ってくれて。その次の日にディズニーランドでファン旅行のイベントをやってたんですけど、夜にまたライヴハウスに挨拶に行ったんですよ。そのときにセキュリティの人とかもみんな覚えてくれていて。バー・カウンターの人から"サイン書いてほしい"って言われたりとか。

将吾:"酒、タダで飲んで行っていいよ"とかね。

CHISA:たぶん珍しかったと思うんですよ。ヴィジュアル系バンドがやるような感じの会場じゃなかったので。

将吾:たぶんコスタメサにみんな行かんやろ?

CHISA:そうかも。コスタメサはLAの外れにあるんですけど、そういう場所でワンマンできたことが嬉しかったですね。日本からすごく遠く離れた場所でやれたんだ......みたいな。やっているときはあまり実感がなかったけど、終わったあとに思いました。

-そのあとに、CHISAさんとHALさんは残って、ラスベガスのイベントに急遽出演されたと。

CHISA:もし音を出せる環境があったら、せっかくだから何かパフォーマンスしたいなっていう気持ちはあったんですけど、ふたりだし、できなければサイン会とか握手会でいいですっていう感じではあったんですよ。そしたら、アコースティックというか、ヴォーカルとキーボードだけでやる時間と、イベントの閉会式で時間を設けてくれて。

HAL:閉会式のときは、パソコンからカラオケ音源を流して、CHISA君が歌って、俺がパフォーマンスというか、煽る人みたいな(笑)。どういう立ち回りをしたらいいのかわからないし普段コーラスとかもやってないから、大丈夫かなと思ったんですけど、なんか盛り上がりましたね。

CHISA:良かったよね。

HAL:人がいっぱい来て、"写真撮ってくれ!"って言われたりとか。CDも売れたし(笑)。

将吾:マジで!? なんか、ラスベガスのあとから、絶対にふたりが何かしたのを観たんだろうなっていう感じのフォロワーの人が増えていったんですよ(笑)。

CHISA:日本人男性のゲストも、ミュージシャンも僕らだけで、他はモデルさんとか声優さんしかいなかったから、ちょっと異質ではあったんですよね。でも、ノリで行ったわりにはちゃんと結果も残せたし、主催の人から"来年は絶対にバンドで来てほしい"って言ってもらえたりして。

-ちゃんと爪痕を残してきたと。

CHISA:あと、ラスベガスはヴィジュアル系を好きな人が結構いました。日本の音楽とかアニメが好きな人が結構多い。そういうイベントがあると、遠くから来る人も多いんですけど、"どこに住んでるの?"って聞いたら、"ラスベガス"って言う人も多くて。日本人からすると、ラスベガスって住むような街じゃないイメージがあるじゃないですか。

-そうですね。欲望の街のイメージしかない。

CHISA:ですよね(笑)。でも、そんなことなくて、意外と住みやすいらしいんですよ。中心部からちょっと離れると、物価も安くて、家賃とかもテキサスとかとそんなに変わらないらしくて。

将吾:マジで!? めっちゃ安いやん。

-今日のインタビュー、めちゃくちゃ勉強になるなぁ......。

CHISA:僕らもずっとそういう感じでした(笑)。そうなんだ!? って関心することが多くて。

将吾:いいなぁ......。俺がアメリカで一番行きたいところなんですよ、ラスベガス。

CHISA:街も良かったよ。これは来れないのがかわいそうだなと思った。

HAL:中心部は電気ビカビカなんですよ。セブンイレブンですらビカビカだったから。あれはなんなんだろうね? 街でそうしなきゃいけないことになってるのか。なんか、京都の真逆というか。

将吾:逆京都(笑)? 俺、ふたりがいろいろしてるのをTwitterで見てて、いいなぁ......って。

RIKITO:しかも俺らは隔離期間中だったからね(笑)。

-でもなんか、アメリカって感染者数はかなり多いけど、これだけがっちりライヴもできて、ツアーも回るとなると、なんとなく大丈夫な気がしなくもないというか。

CHISA:しかも、めちゃくちゃ人と接触して、ありがとね! って握手とかハグとかしてたのに、メンバーはもちろん、ツアー・スタッフも誰もコロナにかかっていないし、具合が悪くなった人もいなくて。イベント中も"陽性の人が出ました"っていうアナウンスが出るんですけど、通常通りやってたんですよ。

将吾:あと、コンベンションだと、至るところに無料で検査できる場所があるんですよ。イベントのときはだいたいそういう感じになってて。

-なるほどなぁ。めちゃくちゃ貴重なお話ありがとうございました! 今日は1月26日にリリースされる新曲「Enchanted」についてもお聞きしたいです。タイトルには、"心を奪う"とか"魅了する"とか"魔法をかける"といった意味がありますけども、この曲はいつ頃に作り出したんですか?

CHISA:レコーディングをしたのは9月ですけど、選曲会をしたのは8月の頭ぐらいでしたね。アメリカに行く前に終わらせておかないとっていう感じだったので。

-かなり独特な空気感の曲になってますよね。ヘヴィさはありつつも、前作の「月光浴」と比べると打ち込み要素がかなり多いし、ミディアム・テンポで、シャッフルで跳ねている感じもあって、ものすごく面白いバランス感で成り立っていて。この曲を選んだ決め手みたいなものはあったんですか?

将吾:かっこ良かったから(笑)。

HAL:光ってたからね。

RIKITO:うん。今までにない感じだったし、「月光浴」との差もあるし、聴いたときに演奏してみたいなって。

CHISA:ただ、この曲は僕がデモを作って提出したんですけど、僕だけ全然ピンときてなかったんですよ(笑)。

RIKITO:僕ら3人は"これがいい"って言ってたけど。

CHISA:うん。自分の中ではリード・トラック用に作っていなかったから、それ!? っていう感じだったんですよ。でも、みんながいいっていうなら、それを信じてやってみようかなと思って、フルを作って、ヴォーカル録りもして、ミックスまで終わってようやく"これいいかも"って。

-作った本人がそこまでピンとこないってなかなかですね(笑)。作り始めた段階ではどんなものにしようと考えていたんですか?

CHISA:トリッキーな感じにしようとは思ってたんですよね。ヘヴィで、シャッフルで、こういう曲調のものってあんまりないかもと思って。でも、自分のやりたいことをやった感じではありますね。いつもなら、例えばヘヴィでカッコいい曲を作ろうと思ったら、基本は引き算していくんですよ。いらないものをどんどん削ぎ落としてシンプルにしていくんですけど、この曲は真逆で、普段だったらこれはいらないなって思うものも、入れたいと思ったら詰め込んでいく感じで作りました。

-ヘヴィさもあるし、いろんな音を突っ込んでいるんだけど、休符をうまく使っているのも面白いなと思いました。

CHISA:ヘヴィだけどラフに聴ける感じにしたかったんですよ。ライヴのセットリストを考えたときに、ヘヴィでガツガツやる曲が多い中で、ヘヴィだけどゆったり聴ける曲があると便利かなって。あと、アメリカでMVを撮る話もあったので、アメリカってなんだろうってテーマが自分の中にあったし、向こうでMVを撮るのであれば、どんな景色で撮ろうかなとか想像しながら、僕が思うアメリカっぽい感じというか。今までACMEが出していない感じのものを作ってみようかなって。

-将吾さんはこの曲にどう挑みました? ギターのリフがめちゃくちゃ耳に残りますけど。

将吾:あれは最初からあったんですよ。変えようかなとも思ったけど、そればっかりが頭にあって。ということは、これがいいフレーズなんだろうなと思ったし、CHISA君に"これがテーマ"って言われたから、なるほどねと。でも、この曲に関しては、フレーズどうこうというよりは、音をどうするか考えてました。今回は音色を結構使っていて3、4段階ぐらいゲインが違うものを弾いたりしてるんで、全体のバランスを見て組み合わせていくのがちょっと大変ではありましたね。いつも通りにやるとうるさすぎるし、ちょっと変えると弦のおいしい鳴りの部分が出なかったりしたので。

-RIKITOさんは、デモを聴いたときに演奏してみたいと思ったと。

RIKITO:僕はファンクとかR&Bを聴いて育ってきたので、自分の好きな感じとドンピシャだったんですよ。ちょっと跳ねている感じだったり、休符が多かったり。だから、そこまで考えなくても、パっとフレーズが出てきて、それをそのまま録った感じでしたね。日本の音楽というよりは、R&Bを演奏している向こうのベーシストが弾きそうなフレーズを弾いているので、日本のヴィジュアル系の中ではそこまでないようなフレーズを入れてます。アメリカでMVを撮っているときも、曲を聴きながら弾いていてすごく気持ち良かったし、早くライヴで演奏したいですね。

-HALさんはいかがでしたか? シャッフルというワードもありましたけど。

HAL:最初の印象は、とても大人だなぁと思ったんですよね。僕がやってきたパンクやメタルコアとか、今までの感じでは表現できないなと思ったので、他のアーティストの曲を聴いたり、どういうフレーズがいいか考えたりして、自分の引き出しを増やすための作業をしてました。今までの曲は、ダダダダダ! って1個ずつはめていく感じなんだけど、それをやっちゃうとこの軽い感じは出ないし、そこを出すために、自分としては新しい引き出しなんだけれども、ちょっとだけ手癖のような感じを入れないといけないんですよ。そこは大変だったんですけど、慣れてくるとその気持ち良さとか楽しみ方がわかってきて、大人の階段を登った感じはありましたね。またさらにACMEの音楽に広がりが出たし、次のランクに行けたかなという希望が、この曲にはあります。

-歌詞は、"夢の続きが見たいなら 掴みとれ一筋の光"という前を向いた言葉もあれば、"けどな薔薇色の人生に届かない"という後ろ向きな言葉も出てきて、いろんな感情が入り混じっている感じですけども。

CHISA:前回に引き続き、自分たちにしか作れないものを今回もやりたいと思っていたんですけど、時期的にアメリカ・ツアーに行く前に歌詞を書いていたので、そのときの自分の素直な気持ちをわりと書いているというか。それこそ海外でライヴをすることとか、自分が追いかけていたものとか、そういう夢はありつつも、現実はまた違う部分もあって。自分が昔思い描いていたロック・スターと、今実際にやっていることは違っているとか、自分に合ったスタイルとか昔と時代が違うこととか、いろんなことがあるんだけど、でも前に進まないとっていう。

-歌詞にはそういう熱さもあるけど、サウンドに軽さがあるというか、ほど良く肩の力が抜けているところもあるから、言葉が入ってきやすいですね。

CHISA:コロナの問題が出てきてから、僕らはどうにかバンドを続けられているけど、夢を諦めた人もたくさんいたと思うんですよ。やっているときは"気合でどうにか"みたいに思っているんだけど、いざヘヴィな現実が突き刺さると、そうは言っていられないというところまで追い込まれてしまう人もいて。そういうなかで、あんまり前向きすぎるものを押しつけることはしたくなかったんですよね。今も夢を追いかけているけど、だからといって、思っていたような薔薇色の生活をしているわけではないけどね? っていう。だから、Enchanted=魔法にかけられて音楽を始めて、まだ魔法にかけられているのか、魔法がとけそうになっているんだけど、まだかけられたままでいたいのか、どっちがいいのかな、みたいな。そういった夢と現実の狭間にいる感じを書きたいと思っていました。

-狭間にいながらも、着地点としては、前に進んでいく気持ちを持ちながら書いていたと。

CHISA:いろいろあるけど、最終的にはそろそろ重い腰を上げようよっていう気持ちもあるから、"そろそろ火つけろ導火線"と入れる形にしていて。ウチらも、終わってみたら良かった感じではあるんですけど、アメリカ・ツアーに行くまで結構大変だったんですよ。細かい書類の申請とか、向こうの弁護士さんとのやりとりとか。結局ブランクがあったから、ビザが失効しちゃってたんですよね。そういう大変なこともいろいろあるけど、でも行こうか? みたいな意味も込めて書きました。だから、わりと自分の心情に素直に書いた感じではありますね。

HAL:たしかに大変だったもんね? 普段行くよりもハードルがめちゃくちゃ多かったんですよ。それこそビザの申請とか、ワクチン・パスポートを取らなきゃいけないとか、行く前にPCR検査で確実に陰性を出さなきゃいけないとか。そういう項目がたくさんある中で、ひとつでもバツがあったら行けなくなるし。

RIKITO:特に、最後に陰性を出さなきゃいけないときの、ここでダメになっちゃったらどうしようっていうプレッシャーはすごかったですね。

将吾:俺はワクチンを打てるかどうかのプレッシャーがすごかった。メンバーみんな予約が取れたけど、俺だけ何回トライしても無理で。ネットでSupreme買うより難しかった。

一同:(笑)

CHISA:ワクチンを2回打って、一定の期間を空けてからじゃないとパスポートが取れないんですよ。

将吾:嫌じゃないですか。俺のせいで、バンドで行けなくなって迷惑かけちゃうのは。でも、あまりにも予約が取れなさすぎて、メンバーに言いました。"次にダメだったらごめんだけど諦めるね"って。そしたら、たまたま家の近くの病院で予約取れました(笑)。

-近場で良かったですね(笑)。このリリースが2022年の第一声になるわけですが、いろいろと予定も決まっているんですか?

将吾:2月に地底人のバンドとライヴします("Rorschach.inc Presents Rorschach.inc 2MAN LIVE 2022 Vol.1「絶頂地底人」")。

CHISA:あとは、このリリースをしてから徐々に情報が出ていく感じですね。海外に行く予定もあるんですけど、まだどうなるのかちょっとわからないところもあって。オミクロン株のせいでどうなるのかわかんないんですよ。

-あぁ......なるほど。ただ、未確定なこともあるけど、すでにいろいろと動いてはいると。

CHISA:はい。止まらずに行きます。

RIKITO:そうだね。今年以上にスピーディにやっていけたらいいなと思っています。