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COLUMN

NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第36回

NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第36回

激ロック読者の諸君は、「ケンタッキー」と言えば何を思い浮かべるであろうか?
恐らく大半は白スーツ白髪白髭のおじさん、もしくはからりと揚がった鶏肉をイメージするだろう。
だがしかし、拗らせたロック好きなら「ルイビル」という小さな街の名を連想するのではないだろうか?
今回はケンタッキー州ルイビルが産んだ、後のポスト・ロック、ポスト・ハードコアに多大な影響を与えた一枚を紹介しよう。


Spiderland / Slint


Slintの紹介の前にまず先に語りたいのが、ルイビルのロック&ハードコアシーンを語る上で欠かせないバンド「Squirrel Bait」だ。
サウンドの直球感は確かにハードコアなのだが、コード感や曲展開などは独特で、当時の80'sハードコアとは一線を画したバンドであった。
中心人物であるGt/Voのデヴィッド・グラブスはSquirrel Bait解散後にBastro、Gastr Del Solと、これまたポスト・ロックの金字塔的バンドで活躍する。
(ちなみにBastroのドラムは後にシカゴ音響派として知られるバンドTortoiseの中心人物であるジョン・マッケンタイア)
そして、同じくSquirrel Baitで活動していたGtのブライアン・マクマハンとDrのブリット・ウォルフォードで結成したのがSlintだ。
彼等はあのスティーヴ・アルビニ(知らない人は是非検索を)と共に1st AL「Tweez」を制作し、89年に自主レーベルよりリリースする。
ノイジーで攻撃的なサウンドだが、決してストレートではないマスロック的な要素もあり、以前このコラムでも紹介したFugazi同様、ポスト・ハードコアの夜明けを感じさせる作品であった。
しかし91年リリースの2nd AL「Spiderland」では全く作風が変わる。
ドラムはタイトに淡々とループ。静か且つスロウに不安定な音階を奏でるギター。そこに囁く様なボーカルが乗り、いつ破裂するか分からない緊張感の中で突然のハードコア大爆発......とまぁ、自分でも何を書いているんだと思ってしまう程に形容しがたい音楽なのである。
一部の音楽評論家等からは高評価を受けたものの、セールスは全く奮わず、光を浴びることなく埋もれてしまった作品であった。
理由としては当時まだ19歳だったマクマハンが精神的ストレスで活動が困難になり、リリース前にバンドが解散してしまった事が大きい。
だがしかし、後にMogwai等のポスト・ロックムーブメントの旗手達がインタビュー等でこぞってこの作品から受けた影響を語り、世の中がやっとSlintを「ポスト・ロックの始祖」として正当な評価をする事になったのである。
ポスト・ロック、ポスト・ハードコアのジャンルにおいて、ルイビルという地域がどれだけの影響を後世に残しているのか、少しでも理解していただけたら幸いである。
激ロック読者諸君には今年のクリスマスから是非Slintを聴きながらチキンを食べていただきたい。

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