COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第15回
この記事を執筆している現在、新型コロナウィルスによる被害が日に日に拡大している。
犠牲者の方にお悔みを申し上げると共に、闘病されている方、不要不急の外出を控えて耐えている全ての皆様に音楽を通して元気になってほしいと願い、筆を執っている次第である。
本日はフランスのバンドを紹介しようと思う。
そもそもフランスにロックやメタルのイメージはあるだろうか?
昨今はDAFT PUNKの功績もあってか、EDM系は盛り上がっているようだが、
基本はシャンソンやフレンチ・ポップのイメージが強いと思われる。
激ロッカーな読者たちは「フランスのバンド」と言われると、恐らく「PLEYMO」を思い浮かべるのではないだろうか?
2000年代のニューメタル・シーンに彗星のごとく現れた6人組ラップ・ミクスチャー・メタル・バンドだ。
LIMP BIZKITを彷彿とさせるDJのスクラッチや、ヘヴィネスでグルーヴィーなサウンド、フランス語による疾走感あるラップ・スタイルで、ヨーロッパのみならずアメリカやここ日本でもブレイクしたバンドだ。
そのお陰もあって、現在もフランスでは良質なニューメタル・バンドが排出されている。
(激ロックで取り上げられているSMASH HIT COMBOなどもその一つだ)
だがしかし、フランスのニューメタルの礎を築いたのはPLEYMOだけではないと敢えて言わせてもらう。
前置きが長くなったが、今回紹介するバンドはこちら。
WATCHA / Watcha
PLEYMOより3年早い、1994年結成の5人組ニューメタル・バンドだ。
パリの音大で出会ったメンバーを中心に結成されただけあって、演奏力は抜群。
しかしインテリほど変態なのは世の常である(誉め言葉)。
変拍子満載のプログレッシヴな曲展開、飛び道具満載のサウンド、叫びもメロもごった煮のクセしかない歌のオンパレード。
98年リリース1st LPである「Watcha」でこの完成度とは、凄まじい才能である。
折しも世はニューメタル戦国時代に突入。
当然WATCHAはフランス、そしてヨーロッパの代表格として世界に進出するはずだった......。
その矢先、99年に「Keçkispasse」でPLEYMOがデビュー。
LIMP BIZKITよろしくの分かりやすいサウンド、若者受け抜群のルックスも相俟ってか、フランス国内で大ブレイク。
負けていられない先輩WATCHAは00年に「Veliki Cirkus」をリリース。
1stより分かりやすいサウンドになったのは、やはりPLEYMOを意識してなのか。
(それでも十分変態ではある作品だが)
しかし追い打ちをかけるが如く、
PLEYMOは01年に名盤「Episode 2: Medecine Cake」をリリース。
メタル市場が少ないフランス国内だけで5万枚以上を売り上げる快挙を成し遂げる。
そしてこのアルバムでPLEYMOは世界のニューメタル・シーンに広く知られる事となる。
PLEYMOがフランス・ニューメタル界の「光」ならば、WATCHAは「影」。
私はその「影」に魅せられた一人だ。
03年「Mutant」も1stに負けず劣らずの名盤だし、05年「Phenix」もポップな新境地を開いた快作だ。
だが世の中のニューメタル・ムーヴメントの終息と共に、PLEYMOは07年活動休止、そしてWATCHAは08年に解散。
フランスのニューメタル魂は後続に託されることとなった。
光ある所には必ず影がある。
光であるPLEYMOは17年より活動を再開している。
影であるWATCHAの復活も私は心から待っている。
今なら彼等の前衛的なサウンドが世界に認められると信じているからだ。
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