COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第11回
あなたには「夏になると聞きたくなるアルバム」はありますか?
私が毎年夏になると必ずと言っていい程ヘヴィローテーションするアルバムがある。
So Long, Astoria / The Ataris
1996年、アメリカ合衆国インディアナ州アンダーソンにて結成されたThe Ataris。
初期こそ疾走感と荒々しさを擁する「王道」のポップ・パンクだった彼等だが、
2nd、3rdと作品を出すごとに徐々にエモーショナルなサウンド、歌唱へと進化していった。
そしてインディーズシーンで着実に人気を集めていった。
結果、彼等はメジャーレーベルと契約を結び、
2003年、通算4枚目にしてメジャーデビューアルバム「So Long, Astoria」をリリース。
このアルバムはまさに彼らの集大成とも言える作品になっている。
1stの疾走感、2ndの荒々しさ、3rdのエモ感を非常に高次元で融合している。
インディーの頃と違い、サウンドディレクションの質も大幅にアップし、
鍵盤等も導入され、非常に洗練された傑作に仕上がっている。
湿度の無いカラッとしたアメリカの夏の印象を与えつつ、
青春の泥臭い青臭さ、夏の終わりの寂しさや儚さ等、聴き手の感情を揺さぶりながら様々な景色を見せてくれるこの作品。
正直泣ける。超泣ける。まさにエモ中のエモ。
事実、この作品は各方面から評価され、シングルカットされた曲も含め大ヒットを記録した。
The Atarisは00年代のポップ・パンクを代表するバンドとなった。
彼等以降のポップ・パンクバンドは全てこのアルバムの影響下にあるといっても過言ではないだろう。
それだけの作品を彼等は作り出したのだ。
リリース後暫くはこの作品をひっさげたツアーやライブを精力的に行っていた彼等だが、
2007年に新作「Welcome the Night」を発表。
すっかりThe Atarisの虜になっていた私は、当然のごとく発売日に購入。
期待に胸を膨らましCDを再生した......。
「こういうのじゃないんだよなぁ......」
もともと彼らは作品ごとにカラーが変化していくバンドではあったが、
良く言えば大人っぽくなったというか、悪く言えばむさくるしくなってしまった。
それ以来私は「The Atarisは『So Long, Astoria』だけでいいかな......」となってしまった。
バンド自身は稀に楽曲をインターネット上で発表したり、
新作の制作を匂わせてはいるものの、現在まで特に目立った活動は無い。
2013年に「So Long, Astoria」発売10周年イベントをしたり、
2017年に、過去に出したEPと未発表曲等を収録した自主製作のコンピレーションアルバムを発売したくらいだ。
しかし今回このコラムを執筆するにあたり、彼等の近況を追い、初めて近年の彼等の楽曲を聴いたのだが、
私が愛したThe Atarisが返ってきた!と、非常に前向きな感覚を覚えた。
ニューアルバム「The Graveyard of the Atlantic」を制作しているというアナウンスだけはあるので、気長に待とうと思う。
彼等が「So Long, Astoria」を超える作品を果たして世に出すことが出来るのかは分からないが、たとえどうなろうともこの作品が名作であることには変わらない。
もしあなたがこの夏に聴くべきアルバムに出会えていないのであれば、
私は自信をもってこの一枚をお勧めしたい。
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