LIVE REPORT
BULLET FOR MY VALENTINE Japan Tour 2008
2008.05.19 @川崎 CLUB CITTA'
PROTEST THE HERO
BULLET FOR MY VALENTINEのオープニング・アクトに抜擢されたのは、セカンド・アルバム『Fortress』のヒットを受け、再来日が期待されていた PROTEST THE HEROだ。PUNK SPRING07で初来日を果たし、彼らにとってはこれが二回目の来日公演となる。開演前、フロントマンのRodyにインタビューをすることが出来た。激ロックとしてのインタビューはこれが2度目になるが、今回は初めて私が担当させてもらった。いやはや、Rodyの痛快なキャラに驚いてしまった!言いたいこと一切オブラートで包まず、全て直球で返してくれるのだ。そのインタビュー内容はコチラで。
会場が暗転し、オーディエンスの歓声とともにバンドが登場する。
「Bloodmeat」のイントロが鳴った瞬間、音質があまり良くないことに気付く。かなり篭っており、どうにもクリアに聞こえてこなかったのだ。変則的なリズムや圧倒的な演奏力が、あの場にいたオーディエンスの全ての方に伝わらなかっただろうと思うととても残念ではあるが、それでも彼らの凄みは十分に伝わったはずだ。
PROTEST THE HEROをお目当てとして会場に足を運んだファンも決して少なくはなく、オーディエンス前方のカオスな暴れ方につられるように、会場は徐々に熱を帯びていく。
強靭なテクニックを必要とするので、ヴォーカルのRody以外のメンバーは派手なアクションは一切ない。ネクタイを締めたRodyは、変則的なリズムを体全体で飲み込むように、揺れ動きながら歌い上げていた。だが、例えば「BULLET FOR MY VALENTINEまで盛り上がっていこうぜー!」というようなオープニング・アクトにお決まりのMCや、オーディエンスを煽るようなMCは一切無い。持ち時間の30分間、ストイックに曲をプレイしている印象だ。そして、最後のヴォーカル・パートを歌い終わるなりRodyはすぐにステージ袖に引っ込んでしまった。やっぱり痛快な人だ(笑)
ライブ後、周囲からは「凄い、凄い」という声が聞こえてきた。確実に、BFMVのファンを魅了していたようだ。次は是非、単独公演での来日に期待したい。
BULLET FOR MY VALENTINE
"メタルの未来"とまで呼ばれた男たちが魅せる世界制覇への第二章。全世界待望の新作『Scream Aim Fire』を引っさげての公演で、その幕がここ日本でも下ろされようとしていた。オープンニング・アクトのPROTEST THE HEROのライヴ終了後も最前列をキープするファンの数、会場に漂う熱気、その男たちへの期待すべてが前回の来日時とはケタ違いであった。
ステージを包み込む赤く染まった巨大な幕に、おぼろげに浮き出てきたのはマイクスタンドの影。まるでアルバム・ジャケットを彷彿とさせる荘厳なSEが会場に鳴り響き、ひとつ、またひとつと人影が現れてくる度に、会場のテンションは指数関数的に上昇する。大歓声を切り裂くような力強いドラムが会場に轟いた瞬間、さっと振り落とされたその幕の奥から登場したのは、まぎれもなくBULLET FOR MY VALENTINE(以下BFMV)である。
PadgeとMattにより生み出されるアグレッシヴかつスラッシーなギター・リフにより瞬く間にモッシュ・ダイヴの嵐。カオスと化したフロアをさらに煽るようにMattが絶叫。喉の手術後ということもあり心配されていたMattであったが、そんな不安を微塵も感じさせることなく、持ち前の迫力ある歌声とスクリームをこれでもかと解き放つ。激しさの中にもどこか心地よさのあるJayのスクリームもMattの歌声と絡みあっていい感じ。BFMV、絶好調である。
これまで挑戦したことのなかったメジャーキーを採用し、新しいBFMVサウンドを呈示することに成功した「Disappear」、前作「The Poison」より名曲「4 Words (To Choke Upon)」などで序盤にして完全にフロアのテンションを支配する。「Tears Don't Fall」演奏終了直前あたりから、ディストーションがまるで牛の涎のように、いやらしいほど長く鳴らされる。焦らしに焦らされた後、ギリギリまで圧縮されていたテンションが「Suffocating Under Words Of Sorrow (What Can I Do)」で大爆発、フロア大炎上である。
ライヴ中盤には、新作より珠玉のロック・バラード「Say Goodnight」、Mooseのドラム・ソロの勢いのままに繰り出された「Take It Out On Me」、彼らのルーツ丸出しの「Eye Of The Storm」、シンガロング必至の「Deliver Us From Evil」と演奏されていく。Mattが突然、"歌いたい奴はいるか?"と会場に質問を投げかける。
あまりにも突然のことで会場の大半は語尾の"?"にしか反応できないでいたのだが、最前列にいるファンは彼らの指名を貪るように猛烈アピール。おそらく先日のZEPPでのライヴを見たファンであろう。もちろん、筆者もその中にいたのだが・・(笑) 結局、選ばれたのは日本人と外国人の二人。ステージに上がった二人にMattは"Hand of Bloodは歌えるか?"と質問。日本人男性はテンションマックスの様子、しかしもう一方は「ファックー!!」と一言・・・。どうやら・・・、彼は歌えないらしい・・・(笑)
度重なる来日公演のキャンセルもあり、日本嫌いなのではないかとまで噂されていた彼ら。フロアにいたファンをステージに上げるという演出は、彼らの忌まわしい疑惑を払拭するのには十分すぎるほどのものであると同時に、見ていてとても微笑ましいものだった。またこの日のライヴでは、間奏中にJayがビートに合わせた手拍子をフロアに要求したり、MattがMCにて"アリガトウ"と日本語を多用し会場を盛り上げようとしている姿からも、エンターテイナーとしての成長を垣間見ることができた。
BFMVのポップでキャッチーなセンスが冴え渡る名曲「Hearts Burst Into Fire」でライブ終盤に差し掛かると、以前の来日公演では聞けず終いでずっと生で聞きたかった「Room 409」でサークル・ピット参戦し、ライヴではおなじみの「Spit You Out」でモッシュ・ダイヴ・シンガロングと、着々とフィナーレを迎える準備が整っていく。
Mattが興奮を抑えられない声で"これで最後の曲だ"とサークル・ピットをフロアに要求。「Waking The Demon」のイントロにより、大歓声とこの最大のサークル・ピットが巻き起こる。サークルの中心に生じたハーコーダンス祭りを軸にしてそのサークルが徐々に膨張していき、最後の最後までその盛り上がりは衰えることがなかった。
彼らのライヴ終了後もアンコールを催促する声が鳴り止まない。前日のZepp TokyoでMETALLICAの名曲「Creeping Death」が最後の最後に演奏されただけにその声は小さくなるどころか、どんどん大きくなっていくように感じた。無常にも場内アナウンスによりその宴の終焉が告げられる。それでもステージを見つめ続けるファンの姿やすれ違うファンからこぼれる笑顔から彼らのライヴがいかにすばらしいものであったのかを再確認して会場を後にした。
(吉野 将志)
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