INTERVIEW
Survive Said The Prophet
2022.10.11UPDATE
2022年10月号掲載
Member:Yosh(Vo) Ivan(Gt) Tatsuya(Gt) Show(Dr)
Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)
-ですよね。話は少し変わりますが、今作は慣れ親しんだ環境のポートランドのスタジオで、Kris(Crummett)とメンバー4人で約1ヶ月間にわたってレコーディングしたとのことですが、いかがでしたか。
Yosh:今回、今までと大きく違うところは、メンバーだけで行ったっていうところですね。だから余計な気は使わなかったし、Krisも慣れてるし。あとは、海外の生活は自分たちには合ってるので。
Show:なんか普通に生活してたよね(笑)。これまではUberとか使ってたんですけど、今回は車を借りて。運転してて思ったのは、普通にいけるなと。ずっと住んでたみたいに慣れ親しんだ感じはありました。
-じゃあ、帰ってくるときは後ろ髪を引かれる感じで?
Ivan:まぁ、どっちもありますよね。
Show:帰りたい気持ちと帰りたくない気持ちがどっちもあるのがいいんですよ。
-前作(『Inside Your Head』)のときはShow君だけが行ったんですよね。今回はどうでした?
Yosh:Krisは自分の音に責任を持ってくれるんですよ。そこに安心感はありますね。"今回はうまくいかなかった"みたいな言い訳がないんです。こちらが"これは違うよ"って言ったら、それに全力で返してくれる。だから、覚悟が違うんですよね。
Tatsuya:彼もアーティスト気質だから、自分の出してるものにプライドがすごくあって。だからサバプロとの相性が良かったんですよね。
Yosh:よく言われるセリフなんだけど、"プロデューサーも含め、俺らひとつのバンドなんだ"っていうフレーズ、バンドのDVDとかに必ず入ってますよね(笑)。でも、本当にKrisとは結構言い合っちゃえる仲で、今回初めてうまくいかなかった翌日に"昨日はごめん"って謝られて、"あぁ、本当に仲良くなったんだなー"と。
Ivan:だんだん俺たちが大人になってきたというのもあるかもしれないけどね。
Yosh:あとアメリカだとバンドが長続きしないケースも多いから、最初は気持ちをあんまり入れ込まないほうが仕事しやすいっていうのもあるのかも。だから、こんなに長い付き合いになったバンドはあまりいないって意味で、親しみを持ってもらってるのかもしれないですね。
-たしかに、海外だとバンドが続かないだけじゃなく、作品ごとにプロデューサーを変えることも多いですし。
Yosh:そうですね。この間も、改めてKrisの仕事を誉めたら純粋に喜んでくれたんですよ。そうすると、"今までいろんなバンドの作品に関わったけど、お前らとはやっぱり相性いいんだな"って。
-前作でも、ドラムだけは変えずにポートランドでKrisとやりたい、みたいなのがあったじゃないですか。
Show:音も当然いいですし、あと今回思ったのは、Krisが録ってミックスすると良くも悪くもデモの段階からかなり変わるんですよ。その"蓋を開けてみないとわからない"みたいな感じも面白いんです。録ったものがそのまま出てくるっていう人もいるんですが、そういうのが1回もない。逆に"プリプロのほうが良かったかな"って感じるときもあるんですけど、それを伝えたらちゃんとブラッシュアップしてくれる。彼も負けん気が強いので、自分のそのときのベストを思いっきりぶつけてくれるというか。今回の細かいところだと、ギターのパン振りとかが変わってて、最初僕ら的には違和感があったんですよ。それは折衷案として調整してくれたんですけど、"あ、こんなに更新してくれるんだ"って。それが合う/合わないはバンドとの関係にもよるんですけど、僕らとしてはいい経験になったなと。アメリカのほうがトレンド的には進んでるじゃないですか。だから、今はこれが主流なんだっていうのを知る機会にもなるし、面白いですよ。同じ人でも毎回違うアプローチでやってくれる。
-お互いがアップデートしてる感じですね。
Show:そうですね。また、そこから擦り合わせもして。
Yosh:"なんでこの音嫌いなんだ?"ってときも結構あるし、独特の世界観だよね(笑)。
-なるほど。そして、そうやって作られたアルバムなんですが、フル・アルバムであることの魅力ってあると思うんですよ。今はデジタルとか曲ごとのリリースもありますけど、今作のアルバム・タイトルでもある美しくも儚い壮大なインスト「Hateful Failures Pt.1」とか、こういうプロローグ的な曲を聴くと、"アルバムならではの醍醐味だな"と再認識させられます。こういう曲はシングルには入れられないですからね。
Yosh:そうですね。僕はこのレコーディングの手前まで"FINAL FANTASY VII"のツアー("FINAL FANTASY VII REMAKE Orchestra World Tour")に参加させてもらってたんで、そこで聴こえたクワイアとかストリングスとかに結構影響されたところもあります。この壮大な感じはサバプロに合うなって思って。
-海外で行われたコンサートですよね。
Yosh:はい。だからレコーディングの前は、アリゾナとカナダに行って、それからポートランドに行った感じなんですよ。
-そういう経験も作品には生かされていると。その1曲目から続く「Mary」は疾走感あるエモーショナル・ロックですね。
Yosh:わりと王道なんですけど、やっぱり好きなんですよね。"ライヴで上がるよなー"って(笑)。
-ツアーの幕開けにもいいですね。
Yosh:そうそう。"このタイミングで照明がこうなるんだろうな"って予想もつくじゃないですか。そのイメージって結構大事で。それを外すか外さないかっていうのも大事なんです。
-そういう王道っていいんですよね。
Yosh:そういう王道を王道に感じさせないくらい歳とったタイミングって、おいしいなと思ってるんです。いろいろやりつくして、何が新しいとか何が古いとかじゃなく、常に新しいことをしてるつもりだけど、根っこには変わらないものがあるんだよっていうことを提示できる。
-今王道って言ってしまったんですが、もしかしたら今の10代の子たちにしてみたら、逆に新鮮かもしれないですよね。
Show:今まで聴いてきたものの感性で変わりそうですよね。
Yosh:スタジオでラッパーのやつらと会ったときに、"今新しいことやってるんだ"って言ってMGK(MACHINE GUN KELLY)みたいなの流してきますからね。僕らの世代にしてみたら懐かしいサウンドです。それは誰が間違ってるという話じゃなく、それでアガるんだったらいいやって話なんですけど。
-「Mary」は勢いだけでなく、メロディの紡ぎ方もとても丁寧できれいですよね。
Yosh:丁寧にきれいになりましたよね(笑)。もっとラフだったんですけど。
-歌詞も儚げなイメージで。
Yosh:ありがとうございます。日本語には訳せない部分もあるので、聴く人ひとりひとりに意味ができればいいなぁって。言葉がわからなくても、音を聴いて風景が見えてきたら正解だなと。どんな内容の歌詞を書いてても、聴く人が自分なりの上がるテーマを見つけられたらいいので。
-それが英語詞のいいところですよね。
Yosh:そうですね。
-日本語でそこに書かれている詞がすべてって思い込んでしまうんじゃなく、考える"間"がある。
Yosh:間違いないですね。妄想タイムって音楽にとって大事なんですよ。だから、通勤通学の何気ない時間に聴いてると意外と響いてきたりする。
-そうですね。次の曲の「Drive Far」は、すごくリラックスしたポップ・ソングですね。イージーコア・テイストも感じさせますが、「Win / Lose」ほどガッツリじゃなく、どちらかというとエッセンスとして使っている。そのポップな中にエッジの効いた表現を入れてくるところが、最近のサバプロらしいというか。
Yosh:ほとんどの曲は僕が書いちゃってるんで、どうしてもヴォーカル目線の作曲スタイルが出てきちゃうんですけど、「Drive Far」に関してはIvanが書いて持ってきてくれて。前作(『Inside Your Head』)の「Bridges」っていう曲もそうだったんですけど、彼がギタリスト目線の曲を出してくれると、幅が広がるんですよね。ギタリストの欲を達成できる曲がアルバムにあると、ライヴでもそれができるじゃないですか。まぁギタリスト的には演奏が大変な曲になっちゃうけど、それは彼が自分で作ってるので(笑)。
Ivan:やってみたいことをとりあえず全部詰め込んでやってみて......っていうのは「Bridges」からの流れではあるんだけど、せっかくギターで始まるなら、ほぼギターがヴォーカルくらいのイメージでちゃんと聴かせたいというか。
Yosh:彼は香港出身なので、やっぱり違うカルチャーが入ってくるんですよね。香港の人たちって僕らが洋楽を聴くような感じでJ-POPを大切にしてくれてるんですよ。だから、逆にJ-POPのエッセンスとかが曲に入ってくることもある。
-ギタリストとしてやりたいことが詰め込まれている一方で、ポップ・ソングという側面も大事にされていますよね。
Ivan:そのへんは長いことサバプロやってるんで(笑)。嫌でも自分のルーツには影響されるじゃないですか。それは出さないようにって思っても出ちゃうものだと思うんですよね。
Yosh:DNAに入っちゃってる。サバプロイズムとして。