COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第21回
一部のメタラー待望の映画「ロード・オブ・カオス」が遂に公開となった。
この映画は実在したノルウェーのブラックメタルバンド「 Mayhem 」と、その周りのバンドマン達が起こした様々な事件(主に放火や殺人)を描いた非常に衝撃的な映画だ。
主人公は「 Mayhem 」のギタリストであるユーロニモスと、「 Burzum 」のヴァーグだ。
このヴァーグ、アーティストとしては非常に優秀なのだが、思想や行動含め色々とやばい奴で......。
まぁ、そんなこんなでブラックメタルというジャンルは彼等のお陰?せい?で悪名と共に世界中に広がった訳なのだが、
ブラックメタルのアーティスト全てがこうも過激な訳ではない。
ちゃんと音楽的に評価を受け、現在も第一線で活動しているアーティストも沢山居る。
本日は映画「ロード・オブ・カオス」では語られなかったブラックメタルの名盤をご紹介。
In the Nightside Eclipse / Emperor
そもそもブラックメタルってどんなジャンルなのか?
音楽性は兎に角爆速ブラストビートにトレモロで刻み続けるギターリフ、そしてギャーギャー叫ぶ金切り声ボーカル。
悪魔崇拝、反キリスト、反社会制度等の思想を謳い、
コープスペイントと呼ばれる白塗りでステージに立つ。
この説明で聴きたくなる人は皆無だろう(笑)
だが今回紹介する「 Emperor 」はブラックメタルサウンドの凶暴性に北欧特有の叙情的な旋律が絶妙なバランスで融合されている。
加えてシンフォニックなオーケストレーションも相まって、新しいメタルサウンドの構築を実現させた。
1994年にリリースされたこのアルバムは世界中で称賛され、多くのアーティストに影響を与えた。
今ではブラックメタルの教科書的作品として語り継がれている。
他のブラックメタルバンドが音楽そっちのけでいかに凶暴性を表現できるかを競い合っていた中、ギターボーカルのイーサーンは純粋に音楽的価値の向上を目指していた。
イーサーン以外のメンバーは様々な犯罪(凶暴性の表現)を犯し捕まってしまったが、
彼だけは法に触れるような活動はせず、真摯に音楽家として研鑽を積んでいった。
その後、よりプログレッシヴで芸術的なサウンドを求めたイーサーンと、
より攻撃的なサウンドを目指した他のメンバーと意見が分かれ、
結果として2001年にEmperorは解散した。
(ちなみに筆者はイーサーン色が最も強いラストアルバムも大好きだ)
2002年にはその功績が称えられ、イーサーンは出身の街から文化賞的なものを贈られている。
ノルウェー中を震撼させたブラックメタル。そのジャンルの中心的なアーティストがこうして認められたのは、偏に彼が純粋に音楽家として努力した結果であろう。
(事実、彼がリリースした作品は50万枚以上売り上げている)
イーサーンはその後も精力的にソロ名義やサイドプロジェクト等で第一線の音楽活動をしている。
凄惨な事件のイメージが付きまとうブラックメタルだが、
音楽自体には何の罪も無い。
なので読者の皆もどうか怖がらずに新しい激ロックの扉を開いて欲しい。
ただし癖の強い音楽ジャンルである事には変わりがないので、
好きになれるかどうかはまた別の話だ(笑)
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