INTERVIEW
PassCode
2023.06.21UPDATE
Member:南 菜生 高嶋 楓 大上 陽奈子 有馬 えみり
Interviewer:吉羽 さおり
もがいてるところから未来に向かって進んでいくストーリーは、今のPassCodeの状況とも重なる
-そして「Melody from the Bumbling Clash」。これもまたライヴで新たな流れを生んでくれそうです。
高嶋:あそこ大好き、最後のところの(笑)。
有馬:これは全体的に私がシャウトを考えた曲で、かえちゃん(高嶋)が言ってくれてるのは、ラスサビで巻き舌しながらシャウトしているところですね。それは特にディレクションで言われたというより勝手にやったんですけど、いいねっていう感じだったので。
-シャウトがリズミカルでグルーヴを生んでいて気持ちがいいんですよね。あとは、スラップ・ベースとメロディがバチバチでやり合うところもテンションが上がる、ダンサブルなロック・チューンだけどそれだけでない面白さが詰まってます。
南:バンドも頑張ってくれている曲ですね。
高嶋:何よりライヴでバチッとハマったら、歌ってても口が気持ちいいだろうなっていう。
南:あとはちょこちょこと挟まってくるえみりのシャウトがみんな大好物で、楽屋とかで聴いてきゃっきゃ笑って楽しんでます。それこそライヴっぽい感じのシャウトがあって。ライヴではいつも、曲間とかでちょいちょいおかずのようにシャウトを挟んでいくタイプなので、それが曲にもCDにもなった感じがあって、ライヴを重ねて成長していくグループが出す音源、というものにすごくぴったりな曲だなと思います。
有馬:シャウトがある曲って、シャウト・パートはシャウト・ヴォーカルが作ることが多いと思うんですけど、これまでPassCodeではシャウトをしないサウンド・プロデューサーの平地さんが作っていて。私も長いことシャウトをやってきたなかで、自分のパートは自分で作ることが多かったのを平地さんに伝えていたので、この曲では"作ってみてくれる?"って言ってくれたんです。それでまだ歌詞がない状態のときに、家にある機材でシャウト語みたいな感じでシャウトのリズムを録ったものを平地さんに送って、そこに歌詞がついた感じで。ポイントとしては、今メタルコアとかそのへんのジャンルで、シャウトで3連符のリズムを使うのがトレンドなので、それを入れてます。
-でもそのシャウトのリズムや語感やパワーを壊さずに、新たに歌詞を組み立てていくのもすごいですよね。
南:今回歌詞をやっているKonnie(Aoki)さんはわりとそれが多いですね。もともと平地さんの曲も、平地語というか適当英語みたいな感じでニュアンスで歌ったものがあって。その耳に入ってくる語感で、ここは変わったら気持ち悪いなというところを踏まえてちゃんと英語詞にして、歌詞として成立するものにするという。あれはすごい技だなって思います。
大上:すごいよな。
南:Konnieさんは「Seize Approaching BRAND NEW ERA」とかも作詞してくださっているんですけど、英語詞にするならKonnieさんがいいっていう話でお願いしたんです。シャウトもそういう感じだったよね。
有馬:大変やったろうな、シャウト語と平地語を歌詞にするのは。
-両方を汲み取って翻訳するみたいな感じですかね(笑)。
南:平地さんの曲に詞をつけるのってすごく大変で(笑)。ただ音だけのメロディならまっさらやから、好きなようにできると思うんですけど、平地さんの"これ"っていうのが提示されてくるから、そこはいじられへんっていうのが結構あるらしくて。それを英語でやるっていうのがすごいなって毎回思います。
大上:毎回、最初のデモとできあがった歌詞を見てびっくりする。
南:ニュアンスを汲み取ってるよね。以前は日本語詞だと、平地さんが昔の歌詞を応用して当てはめて歌っているのが多かったんですけど、そうするとその歌詞がハマっちゃったときに、それ以上のものが出てこなくなるからというのでやめて。平地さんも自分で歌詞を考えて、仮歌を録るようにもなっていて、たまに作詞クレジットに平地孝次って載っていると、平地さん喜ぶんですよ(笑)。
高嶋:"今回採用されてん"って(笑)。
南:ずっと変わらないチームでやってきて、そのやり方を少しずつ変化させながら、よりやりやすく、より良いもので、となっているんです。
-そしてラストがタイトル曲「GROUNDSWELL」です。
南:曲が短いですよね。
有馬:シャウトがめっちゃ多いんですけど、勢いがあってすぐに終わるというか。
-短いけれど、そのぶん旨味とパンチ力が濃厚に詰まった1曲で。こういうコンパクトでキャッチーな曲がタイトル曲にというのは、PassCodeでは珍しいですね。
南:PassCodeでタイトル曲とかシングルになる曲って、展開が多くて複雑でいろんなメロディがあって、というものが多いんですけど、今回は聴きやすい感じになっているんじゃないかなと。PassCodeとしてはかなりシンプルだなって思います。
有馬:この曲はとにかくギター・リフが好きですね。最初に、"GROUNDSWELL"っておちゃらけた感じで始まるんですけど──
南:真面目だもん!
-あ、南さんが言ってるんですね。こういう遊び的なフレーズだったから楓さんかなって思ってました。
南:私なんです。私も決まる前は楓さんかと思ってました。
高嶋:今回は他でたくさん遊びはやったから、譲ってます(笑)。
有馬:南さんだとわからないくらい"グラァンスウェルッ"っていう遊びがあるじゃないですか。でもそこから硬派なギター・リフで始まり、PassCode特有のシンセの動きがあったり、という感じで好きな曲です。
大上:で最後はピアノでこんなにきれいに締めるんやっていう。
高嶋:振付の先生が困ってたよね。
南:もともとは最後のピアノの音がなかったんです。先生が振付をしてくれる日に、"何これ、ピアノが加わってる!"って驚きながらやってました。
大上:それでちょっと増えたもんな、振りが。
南:でもすごくライヴ映えしそうだなって思います。
-全曲、このままライヴに持っていって違和感なくハマるし、どれも鉄板曲になっていきそうです。
南:ただ「GROUNDSWELL」はキーが高い(笑)。陽奈子がレコーディングで、どんな感じで歌ってるのかな、高いところは裏声で歌ってるかなって聴いてたら、地声で歌ってるなと。これ私も地声でって言われるんやろうなって思いながらレコーディングして。もう、握りこぶし作りながら歌いました。
大上:顔しわくちゃにならないと出ないくらい高かった。
南:ライヴも大変かも。でも「GROUNDSWELL」もそうだし、1曲目の「Lord of Light」もそうだけど、もがいてるところから未来に向かって進んでいくというストーリーになっているのは、今のPassCodeの状況とも重なるなって思うし。ライヴがうまくできない3年間があって、これから徐々にみんなと一緒に進んでいけるっていう希望が見えてきたところなので。ライヴでハマるんじゃないかなっていうふうに思いますね。
-お客さんも含めて、コロナ禍で感じたジレンマやいろんな思いを爆発させる作品だと思いますし。ようやく"ライヴ"というものが帰ってきたなかでの作品でもありますが、PassCodeとしてはこの先の活動について、思い描くものはありますか。
南:いろんなところにライヴをしに行けたらいいなって思います。今もZeppツアーをさせてもらっていますけど、まだ東名阪と、行けても福岡、仙台が多かったから、待っていてくれた人のためとか、まだ職場の環境で県外には出られないという話とかもお客さんから聞いたりするので、自分たちから会いに行けたらいいなと思っています。今年、来年で、いろんなところに行けたらいいなって。
-夏の大型フェスもそうですけど、大きなイベントが帰ってきたのも嬉しいところですね。
南:今年3月にFear, and Loathing in Las Vegas主催の"MEGA VEGAS 2023"に出させてもらったんですけど、やっと少しずつ帰ってきたなって感じがしますね。声出し解禁もそうですけど、こうやってPassCodeって好きになってもらってきたなと思い出しました。以前はフェスやイベント、対バンとかで初めて観て、そのあとにワンマンに来てくれるというのがあったんですけど、最近はフェスとかが減って、そういう機会が減っていたので、自分たちの中だけでライヴをやっている感覚だったんです。でも、こういう感じだったなっていうのを久々に感じました。
-"MEGA VEGAS"も何か手応えはありましたか。
南:今回の"MEGA VEGAS"は1番手だったんです。でもすごく会場の後ろまでたくさん人が入ってくれて。"MEGA VEGAS"開催が2017年以来で、その2017年のときも1番手だったんですけど、同じ1番手でも今回は意味合いが違うように感じて。安心してステージを任せてもらっているんやろうなって思ったら、ちゃんとその期待に応えたかったし、1日目の1発目をちゃんと盛り上げられたら──勝手にですけど、最後まで楽しくイベントが進むんじゃないかなと思ったので、気合は入ってました。でも楽しくできたね。
大上:うん。初めて出させてもらったときは、"全員、掴み取ってやるぞ"くらい闘志メラメラで。
南:だいたいメラメラやった(笑)。
大上:楽しかったけど、それ以上にそのメラメラが強くて。そこにちょうど良く、楽しんでくださいっていう要素も含まれて、6年前よりも楽しい空間になったかなと。
南:全然、心持ちも違ったもんな。昔は見返したいとか、自分たちのことを見てくれよっていう感覚でしたけど、今はそれよりも、その日が素敵になるひとつの要因であれば嬉しいっていう思いが強くて。もちろん好きになってもらえたらいいですけどね。
-それだけステージの数も踏んできましたからね。そこで培ったものや、気持ちの強度も上がっているからこそ歌える曲もあるし、PassCodeについていきたいって思わせるライヴにもなっているのが、今なんじゃないですか。
南:自分たちのライヴに自信も持てるし、やることをやれば好きになってもらえるだろうなと、今は思います。