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INTERVIEW

AA=

2021.11.30UPDATE

2021年12月号掲載

AA=

Member:上田 剛士(Ba/Vo/Prog)

Interviewer:吉羽 さおり

みんなが同じ傷を負えるということが、プラスになって何かを生み出す可能性も秘めているかもしれない


-今後、有観客のライヴが復活していったあと、AA=としては配信ライヴという表現についてはどう考えていますか?

今までもちょっとやっていたんですけど、例えば、映像と音をリンクさせるのはひとつの表現としては面白いと思ったし、やってみたいものでもありますね。なんだかんだ言いながらも、それをやることで経験になるので、またこんなことをやりたいなというものが出てくるんですよ。

-今回のアルバムも、ストーリーで音楽を作っていくというものだからこそ、新しいサウンドの広がりなども窺えますしね。

シングル同様に、結局このアルバム自体も9曲でひとつみたいな感覚で作っていますね。一曲一曲分かれてはいるけれど、1曲だけ抜きとって"これが今回のアルバムの代表曲です"みたいなことは──まぁ、プロモーション的にはそういうのはあると思うんだけど(笑)、こちら側としてはあまりそんな気持ちはないというか。全部アルバムを聴かないと成立しないという、時代とはちょっと逆行しているものを作っているんですけど、それもいいかなと。そういった意味でもすごく特殊ですね。AA=としてもすごく特殊だし、自分個人としても特殊なものを作ることができたという感じです。

-今回のアルバムでは特に、ドラマーのZAXさんとのやりとりが多かったのかなというのを感じます。サウンドの中で、物語を動かしていく動力みたいなところがドラムに委ねられているなと思いました。

セッション的なニュアンスの曲もありますしね。実際セッションでは作っていないんだけど、ニュアンスとしてそういうものが欲しいというイメージで作っていたので。なので、レコーディングする際にも、かっちりするというよりは、エモーショナルにするほうをより重要視してやっていますね。自由にやってもらうところは自由にやってもらってもいるし。

-「Chapter 2_閉ざされた扉、その理」なども後半にぐっと温度が変わって、曲がうねりを帯びていく。そこでいい味を出していくのがドラムだったりします。メンバーのみなさんとは、作品についての話は重ねていたんですか?

説明みたいなことは特に何もしていなくて。いつも同じなんですけど、自分がデモを作って、それが基本的には完成形に近いデモなのでそれをみんなに聴いてもらって、そこからじゃあ例えば、ZAXだったらドラムとしてどうするかとか、ギターとしてどうするかってところに入っていくんです。もっとこれはこうしたいんだと伝えるとか。

-基本的なところはいつもと同じ方法なんですね。

ドラムとか、楽器を録るときにはもちろん集まってやっているんですけど、前段階ではリモートやテキストでのやりとりでいつものような感じですね。

-久々の顔を合わせてのレコーディングというのはどうでしたか?

普段から、メンバーに会うのもレコーディングやバンドで用があるときにしか会わないんですけど、まぁ、やっぱ会うのはいいねという感じですね(笑)。

-メンバーのみなさんもきっと、ライヴが減って、プレイする機会も減っていたりすると思いますし。同じ空間で、目を見ながら、話をしながらものを作っていくのはやっぱりいいですよね。作品の温度も変わってくると思うので。

みんなそれぞれキープしていくのは、大変だと思いますね。バンドに限らず、エンターテイメントの仕事をしている人はみんなそうだと考えているんです。ダンスができないとか、動きができなくなるとかもあるだろうし、そこはみんな頑張っているんだろうなと。その意味では自分は、普段からスタジオにこもって何かしらの制作をずっとやっているので、実はあまり変わっていないというか。ライヴができない以外は、変わらないので、もし次にライヴをやるという時点になったときは、ギャップにやられるかもしれないです(笑)。

-(笑)今までは普通にやってきたことが、とても大事なことだったなと気づくような時間ですしね。

それはみんなすごく感じる2年だったんじゃないかなと思いますね。これほど全員が共有できることってないと感じるんです。例えば、どこかで何かが起こったときに、そこの人たちがすごく苦しい、大変な思いをすることは、常にいろんなところであるけれど。これ(コロナの流行)に関しては、世界中レベルでみんなが同じ経験をしているので、そういうことが、いい方向に向くといいですよね。みんなが同じ傷を負えるということが、プラスになって何かを生み出す可能性も秘めているかもしれないので。

-そうあってほしいですね。本当にコロナ禍の最初の頃は、混乱と分断が浮き彫りになっていくだけでしたから。

それはたぶん、常に社会の中で内包していたものだと思うんですけど、それがすげぇ出てくるんだなっていう。

-もともとAA=としてはこれまでそういった社会、世界、人間の様をテーマとして描いてきました。ここにきて、それがより露わになった感覚ですね。

そうですね。ただ自分としてはそれをこの作品で、強くメッセージとして訴えるつもりは全然なくて。どちらかというと、自分の表現では俯瞰して眺めているような目線のほうが強いですね。

-形にするのが大変だった曲などはありますか?

作るのが大変だったとは違うんですが、「Chapter 7_ある日の告白、広がる銀世界 / COLD ARMS」は最後にできた曲で、これができたことでアルバムの形としてまとまることができたなとは思いました。もともと、これを作品として出そうか、出せそうだなという感じの話をスタッフとし始めた時点では、まだこの曲はなくて。でも、自分の中で作りたいものとしてずっと残ってはいたんです。最終的にこれができたことによって、やっと完成したなという感じでしたね。

-アグレッシヴな曲で、この曲あたりから、徐々に物語としても流れが変わっていくところですよね。

基本的には組曲で出したシングルのときと、流れやストーリーとしては変わっていないので、それを物語としてどう完成して、どうわかりやすく伝えるかという視点が強かったんです。その意味で、この曲ができて、やっと納得できたということですね。

-こうしてコンセプチュアルに曲を作っていく制作は、どうでしたか?

今までとは全然違う感じですね。もともとそういうストーリーみたいなものが頭の中にあって作っているので、音楽を作っているというよりも、物語を作っていくみたいな感じで。小説や映画みたいなものを作る感覚に近いかもしれないですね。自分は音楽家なので、それを音でどうやって表現するかというところで。

-ということでは、頭の中で映像的なものが浮かんでいそうですね。

そうですね。特にこのアルバムのモチーフに使っているshichigoro-shingoさんのイラストは、もともと彼が書いた絵の中にこのアートワークに用いている人物自体がいたんです。そういうのを見てイメージを膨らませることとかはしていましたね。より寓話というか、童話のようにイメージさせてくれたのは、shichigoro-shingoさんの絵の力もあるかもしれないです。以前彼の個展を観に行ったときに、shichigoro-shingoさんの絵に音をつけて、物語みたいになったら面白いじゃんって思って、そういうの作ればいいのにみたいな雑談めいたものをしていたことがあったんです。順番は逆になっちゃいましたけど、そういう意味ではあのときに話していたようなことをやれるかもって感じではありましたね。

-こうしたコンセプト的な作品もいいなと感じましたし、欲を言えばもっと聴いてみたいという思いもあります。

AA=でいうと、2010年の2ndアルバム『#2』が、今回ほどはっきりとコンセプチュアルではないですけど、ちょっとそういうニュアンスがあって作っていたんです。そういう手法は嫌いじゃないというか。例えば、映画の主題歌を書き下ろすときも、作品からイメージして作るというのはわりと好きなので。お題というか、自分なりのテーマみたいなものがあると作りやすいかもしれないです。

-これをもとに映像化してもまた面白いですよね。

今回、組曲としてシングル・リリースした「Suite #19」に関しては、MVを作ったんです。10分くらいの映像なんですけど、shichigoro-shingoさんの絵を前面に出したもので、長い時間をかけて映像監督と僕とshichigoro-shingoさんとで作ってきたので、観てもらえればと思います。

-ひとつの作品を作り上げて、今何か、今後へのヴィジョンみたいなものってあるんですか?

まだ今作ができたばかりなので、何も作ってはいないですけど。次のアルバムが作れるとしたら、ある程度肉体的な部分でのライヴとかそういうもので現状を体験、体感したあとじゃないかなと思っています。そこで自分がやりたいことの答えが何か見えてくるかなとは考えていますね。

-この作品をライヴでどう展開するのかも観てみたいですし、また先ほどのMVや映像作品のように、ここから派生するものも楽しみである。そういった想像が膨らむ作品だと思います。

いつもとは違った形のライヴをやれる機会でもあるかなと思いますしね。できないことばかりじゃなくて、今回ならできるというものも生まれると思うので、その時々での表現をリアルにしていきたいなと考えています。