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INTERVIEW

coldrain

2019.08.27UPDATE

2019年08月号掲載

coldrain

Member:Masato(Vo) Y.K.C(Gt) Sugi(Gt) RxYxO(Ba) Katsuma(Dr)

Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)

いい曲を作ろうということだけに集中してるから、これまでにないものが生まれるんです


-後ほど話を訊かせてもらいますが、今作『THE SIDE EFFECTS』収録の最新MV「COEXIST」に至っては、本当に日本のバンドかと疑ってしまうくらい、海外の方からのコメントでコメント欄が占められていますね。そういうところからもリリースのたびにすごく海外にcoldrainが浸透してきてるんだなって。

Masato:そうですね。気に掛けてくれる人たちがたくさんいるんだなと思いました。YouTubeもそうですけど、あとはSpotifyみたいな音楽ストリーミングサービスで、基本的にはアメリカのアーティストしか入っていないようなプレイリストにも入れてもらえることによって、新しいリスナーに届くような仕組みになってきているので、日本のバンドでも、そういうところにチャンスがあるんだなと思うし。まだまだ数としてはそんなに多くはないですけど、サブスクとかそういうところで広がっているのは、CDが売れなくなったと言われる時代でも、逆にいいところだなって。

Y.K.C:あとは、いろんなアーティストが少しずつ日本から海外に行くようになってきているので、海外のリスナーも日本の音楽に興味を持つ土台が、少しずつできてきているんじゃないかと思うんです。だから、他のバンドとも話すんですけど"俺らは日本語だし......"とか言ってても、全然海外行ってやってみてほしいし、そういう時代になってきたんじゃないかなって感じてますね。

-そうですね。海外で精力的に活躍しているバンドといえば、Crystal Lakeが挙げられますが、"Download Festival"では同じ日にステージに立ったんですよね。

Masato:そうですね。Crystal Lakeは、俺らからしたらもっと早く海外に行っててよかったと思うバンドのひとつだから、今海外で人気が爆発し始めて噂になってるのはまさに予想通りですね。日本のバンドがすごくいい状態でパンチを残せてるんで、いいなって思いましたね。僕らも海外でやってて感じるのは、知られてない状態から1回目のライヴをすると観客にとってはすごく衝撃があるんですよ。なので日本での経験値を持って海外に挑めるのは、海外でやる良さのひとつだなって思います。Crystal Lakeみたいなバンドは、今年観ていて、海外でもっと何倍もデカくなるバンドだなと感じました。

-武道館という大きなトピックから始まり、国内、国外フェス、ツアーも行いつつ、このたび、約2年ぶりのフル・アルバム『THE SIDE EFFECTS』が完成しました。前々作(2015年リリースの4thアルバム『VENA』)から前作(『FATELESS』)への流れも含め、フル・アルバムのリリースが2年周期に固まってきたようですね。制作スピードやツアーなどの活動を考えると、ベストなスパンなのでしょうか?

Y.K.C:やっぱり2年くらい経つと出したくなっちゃいますよね(笑)。新しいものを聴いてもらわないとっていう欲求は常にあるので。2年くらいの期間がないと浸透しないっていうのはありますけど、気持ち的にはバンバン新しいものを聴かせていきたいんです。そういうバランスを考えると、一番早いペースでちょうど2年なのかなって。

Masato:最短だよね。不可能なほどの無理を強いられたことはないですけど、2年は最短じゃないかな。

-昔の方が、スパンが短かったイメージはありますが......。

Masato:以前はミニ・アルバムを挟んでたからですね。

-たくさんリリースしてるような感じはあったけれど、実際作っている楽曲数的には変わらないんですね。

Y.K.C:そうですね。あとは若さじゃないですか(笑)?

Masato:今はもっと活動的に面白いことをやってるというか、いろんなことにチャレンジしているので。昔はただ自分たちのレベルを上げたい、バンドとして大きくなりたいって感じで、流れに乗ろうと頑張ってた。今は、流れを作るほうにシフトしてきているので、そういう活動を考えると、やっぱり2年が最短ですね。

-フェーズが変わったというか。

Masato:そうですね。今は、以前ミニ・アルバム作ってたぶんまでアルバムに注ぎ込んでる感じです。あと、昔はアルバムの収録曲数が少なかったんですよ。アルバム10曲と、ミニ・アルバム6曲って感じだったのが、今はアルバム1枚で12曲になりました(笑)。

-なるほど(笑)。前作は10周年、武道館を見据えての作品という、目的意識の強い作品だったと思いますが、そういった点で今作はいかがですか? 大命題がなくとも作品は作れると思いますが、前作のほうが明確に倒す相手が見えていたというか。

Y.K.C:そうですね。でも、それはマイナス方向ではなくて、逆に明確な目的がなくて良かったというか。ただ曲を作って演奏する、アーティストの本分としていいものを作りたいっていうのだけを考えてできたので、すごくニュートラルな状態で自由に曲作りができたという意味では、今回はすごく良かったですね。今まではちゃんとバンドとしてのその先が見えてるものだったんですけど、今回出すものってそこを経ているので。今作は、武道館などもあったから、これまで以上にいろんな人が手に取ってくれる作品だと思うんですけど、そういう人たちに、"coldrainってこういうバンドなんだよ"って伝えられる作品になったのかなと。

-たしかに10周年とか、武道館とかいうのは、わかりやすい目標で、そこに対する熱量ってすごくなるのかもしれないけど、根本的なアーティストとしての原動力って、やっぱりいい曲作っていいライヴすることですよね。

Masato:1回全部置いて、ただただ曲に向き合うのは本当に新鮮でしたね。曲を作っていると、やっぱり歳を重ねるごとに"もうこういう曲あるから!"ってなるんですよね。例えば、"合唱させるような曲を作りたい"と思っても、"もうすでにあるから、もうやったから"ってなる。だから、こういう要素を入れようとかじゃなく、ただただ曲を良くするっていうことだけを考える。すると、いい曲を作ろうということだけに集中してるから、これまでにないものが生まれるんです。僕らも、ミックスが終わってから、初めて形になった状態でアルバムを聴くんですけど、今作は、誰がどの曲を好きになるかがわからないアルバムだなと思って。こういう客層だったらこういう曲を推したいとか、そういうのがいろいろあったんですけど、今作は人によってどの曲が一番いいかっていうのは変わるだろうなと。本当に、12人の人がいたらそれぞれ12曲異なる曲を気に入ってくれるんじゃないかなっていう自信はありますね。なので、蓋を開けてみないとわからない不安もありつつ、その不安とワクワクが両方ある状態です。

-現在すでにTrack.11の「REVOLUTION」とTrack.2の「COEXIST」が公開されていて、すごく評判もいいですよね。各曲については後ほど詳しくうかがいますが、全体として前作が傑作だったので、方向性含めてその流れを汲んでいるように感じました。今作で再びプロデューサーにElvis(Michael "Elvis" Baskette)を起用したのは、前作で満足のいく作品ができたからでしょうか?

Y.K.C:あまり意識はしていなかったですが、前作『FATELESS』でプロダクションに携わってる人たちの仕事にはすごく満足していたし、もちろんプロデューサーとの関係値もさらに上がっていたので、次またやればより良い状態でできるっていうのもわかっていたので、できあがりに対して不安なく作ることができました。サウンド面でも"Elvisってこういう音だよね"っていうのがわかっていて、そういう意味では、前作からの流れがあって、あまり余計なことを気にせずに曲作りに集中できたのはありますね。でも、楽曲の方向性に関しては、前作を意識していませんでした。最初のうちは考えたんですけど、途中からどうでもよくなっちゃって(笑)。今回は今回かなと。例えば、日本のキッズたちの顔がチラつくような、前作の「ENVY」みたいな曲は"みんな好きなんだろうな"と思ったりもするんです。なので、今作から先に公開した「REVOLUTION」って曲は、2回に分けてのレコーディングのうち、1回目に録った内のひとつなんですけど、ああいうハーフ・ビートの"THEサビ"みたいな感じって、自分たちの中ではどうなんだろうって思ってたんですよ。でも、意外とその反応も良かったので、それから"じゃあ、今回は自分たちが好きなようにやればいいか"ってモードに入れました。だから、もちろん全部繋がってはいるんですけど、感覚としては1回ゼロにしたっていうか。ただ、それでもまとまって聴いてもらえるってことは、プロダクションとかそういうものがうまくいってるんだなと思いますね。聴く人によっていろんな捉え方をしてほしいアルバムだし、あとは、"全然前作と違うじゃん"ってマイナスに取られるのは嫌ですし(笑)。

-個人的には、今作で異なるプロデューサーでゼロからのスタートではなくて、Elvis続投で良かったなと思いました。例えば『THE REVELATION』(2013年リリースの3rdアルバム)の音像は丸すぎて物足りなさがあったりと曲はかっこいいのにもったいないな、と思っていたので。

Masato:『THE REVELATION』って基本的にマスタリングが全然違うんですよ。特に日本のアーティストに比べたらめちゃくちゃマスタリングが低くて。例えば、日本で言ったらSiMとかホルモン(マキシマム ザ ホルモン)みたいなバンドは、タッキーさん(滝口"タッキー"博達)がマスタリングしてるんですけど、その人はハイがすごいんですよ。ガーっと抜けてて、それはそれですごくいいんですけどね。『THE REVELATION』の頃、音源でできなかった音を年々クリアしていって今があるという感じなので、だいぶ過去の作品からは学んだなと。だから、マスタリングの差はあっても、ボリュームをデカくして同じ音量に揃えたら一番勝つのは俺らだって思ってます。