INTERVIEW
coldrain
2017.10.11UPDATE
2017年10月号掲載
Member:Masato(Vo) Y.K.C(Gt) Sugi(Gt) RxYxO(Ba) Katsuma(Dr)
Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)
-なるほど。「ENVY」だけでなく他の曲でも言えることですが、音圧レベルを今まで以上に上げていますか? 聴いた印象のアタックが強い気がして。
Y.K.C:実はマスタリングの音量は、他のアーティストと比べても小さいくらいですね。今まではよく揉めてたんですけど、ベースとかで、今回はこちらがやりたい意図を初めから汲んでもらえたんで、出したい音圧感で音を出せたというか。コンピューター的な処理で特別に何かしたというよりは、そもそもの録ってる段階での音がそうなってたっていう感じですね。
Masato:そういう意味では、今回が一番ライヴの音に近いんじゃないかと。いつもCDできれいになってた部分というか、きれいになりすぎてた部分がなくて、ライヴ感が出たんじゃないかと思います。
-コンピューター的な処理でアタックを強くしたのではなくて、いつにも増してのライヴ感がそう感じさせたということですね。「ENVY」もそうですし、アッパーな楽曲に関しては、個人的には正直過去の楽曲と比較しても明らかにラウドなサウンドに聴こえました。
Y.K.C:あっ、でもギターの音は結構変えてますね。というのは、Sugiのギターの音が今までいつも任せっきりで"もっとこうなんだろうな"って音にできたことがなくて。今はKemper(新世代ギター・アンプ)っていう便利なものがあるので、自分で"こういう感じの音で録れたらいいな"っていうのをデモの段階からある程度作っておいたんですよ。そういう音に録ってもらったので、それでSugiのギターがすごくエッジーに聴こえるんじゃないかと思います。各パートも団子にならずにエッジが立ってるというか。だから攻撃的なサウンドに聴こえるのかもしれないですね。
-ドラムのサウンドも結構変わってません? アタックもありつつ、深みがあるというか。
Katsuma:David(Bendeth/2013年リリースの3rdアルバム『THE REVELATION』を手掛けたプロデューサー)だったら、"曲の勢いは最初から最後までフルで演奏したやつを録ってこそ生まれる"みたいな考え方だったし。Brandon(Paddock/2015年リリースの4thアルバム『VENA』を手掛けたプロデューサー)はもう"勢いさえ録れてれば細かい部分はなんとかするから"みたいな、そういうノリだったんですけど、Elvisはまた違って、セクションごとに細かく分けて録っていくんですよ。イントロだけ、メロだけ、みたいなのを何周も何周もして、ひとつひとつ録った中で各セクションの会心の一撃を使っていく感じのレコーディングだったんです。だから、1曲の中でも勢いが途切れず続いてるようにできたので、そういう意味でも全体に重ねたときに、勢いとかアタック感が今まで以上に出たんじゃないかと思いますね。
-ギターのサウンドも、歪みとかエッジーな感じではあるんですが、メロディがそこにうまくハマってるので、聴いていて疲れづらいというか、うるさすぎないというか(笑)。ただヘヴィなだけでなくキャッチーなメロディがハマることで、ギリギリのラインで気持ちいいバランス感が取れてるというか。過去の作品とも聴き比べてみたんですが、『THE REVELATION』はわりと丸っこいサウンドで、グルーヴも柔らかいイメージじゃないですか。で、初期はどちらかというとドンシャリっていうか。そういうところで今回は、初期のいい意味のシャリの部分と『THE REVELATION』で得たUSナイズドされたヘヴィネスが、いいバランス感でミックスされている感じで。
Y.K.C:そのあたりは、今回まさに狙ってる部分ですね。やっぱり、うるさくはしたいんですよ(笑)。今回僕が楽曲もメロディも作ったんですけど、そうするとメロディとリズムの部分とバックの演奏とのズレが少ないんですよね。いつもだと、Masatoにパスするともともと狙ってたバックビートと多少なりともズレが出るんで、それはそれで歌が際立つので良かったりもするんですけど、最終的なミックスとかもいろいろ考えていくと、そのへんが合致していてすべてが効率的にできていると、曲全体のノリとしても良く聴こえるし、それがキャッチーにも繋がってくるんじゃないかと。
-今までの楽曲はMasato君が中心となってメロディを作っていたということでしたが、今作はその部分をY.K.C君が行っていたということですね。とはいえ、聴いた感じはこれまでのメロディと間逆の方向性というわけではないし、ファンでも制作方法にそこまでの違いがあるとは気づかない方もいるかもしれませんね。
Masato:違いは、本当に細かい部分だと思うんですよ。俺が変えている部分もあるし。一番大事にしたのは、楽曲としてのまとまりや絡み方なので。メロディでどれだけ繊細なことをやってもバックと合ってないとキャッチーに聴こえないし。それでさらに今回は、Elvisが"ここの音はハモリをつけたいから、ここをこれだけ伸ばそう"とか意見を出してくれて。あとは録り方自体も以前と違っていて、"ライヴの歌い方は一度忘れろ"って言われて。100パーセントのものを作るために重ねて録るってことが多かったです。例えば、サビの1行目をまず歌い切って、そのあと重なってもいいからまた2行目も歌うっていう感じで。LINKIN PARKのChester(Bennington/Vo)とかも同じ録り方なんですけど、常に一番いい音を出すっていう方法です。今回やってみたら、それがすごく気持ち良くできて。録りの段階で力強いから、ミックスしたら負けないだろうなっていう安心感がありましたね。
-「ENVY」~「FEED THE FIRE」とアッパーな曲が続くのもcoldrainらしいんですが、今回はミドル・テンポの曲にも力を入れてますよね。「R.I.P.」、そしてパワー・バラードっぽい感じもある「COLORBLIND」とか、「AFTERMATH」。
Masato:全体としてはミドル・テンポが強いですね。古き良き洋楽の影響は絶対出てるなって思います。
-たしかにミドル・テンポの曲の方が、完全に洋楽の影響が強いんですよね。そこまで考えてるかわからないけど、アップ・テンポの楽曲は日本人向けで、ミドル・テンポの楽曲は海外向け、みたいな(笑)。
Masato:絶対あります(笑)。今回はリズミックなミドル・テンポが結構多いですよね。バラード・ポジションである「STAY」とか、カバーの「UNINVITED」以外は、やっぱりリズムに面白さがあるんで。そういう意味では、ライヴでやるのも楽しみだなって。結局、アルバムを買ってじっくり聴くファンはミドル・テンポの曲が好きな人も多くて。でも、フェスとかイベントってなると、勢いがないとなんかなっていうのが自分たちでもあるんで。そういうところでバランスがとれたアルバムができたっていうのは良かったですね。
Y.K.C:普通に作っちゃうと、絶対ミドル・テンポになるんですよ。BPMが速い時点で、この曲は3分でできるなってなるので飽きちゃうんです(笑)。
Sugi:"勢い系の曲が何曲くらいいるよね"って話をしてから作るんです。
Masato:今回で言うと、「COLORBLIND」ですね。
Y.K.C:「F.T.T.T」って曲は、5分くらいでできました。これはワンオク(ONE OK ROCK)と対バンしてるときに、楽屋で"ちょっとこんな曲あったらいいなー"って思って、そこでもうすぐできて(笑)。
-カッコいい曲なんですけどね(笑)。
Masato:勢いで作っちゃって、あとから気に入るってパターン多いですよ(笑)。ライヴでやってみたら気持ち良くて、とか。ほんとに、それこそ「The Revelation」(『THE REVELATION』収録曲)を作ってるときと今の状況は違いますね。「The Revelation」ではそこまで盛り上がりをイメージできてなかったというか。そういう意味では、今回はもっとそういうところまでイメージできてはいるんですけど。今のところ、出している曲が全部勢いのある曲だから、蓋を開けてみたらすごくメロディアスで、実は深いアルバムなんだなって感じてもらえると思いますね。なので、そういう反応も楽しみです。「STAY」みたいなアコギの感じの楽曲は、今までとすごく違う空気感を出せてるので、そういう曲も、逆にフェスとかでやっていけたらいいなと思いますね。