COLUMN
NoGoD 団長のあなたの知らない激ロックな名盤紹介 第34回
BABYMETALの復活は激ロッカーにとって嬉しいニュースであったと思う。
彼女達はアイドルの枠を超えた立派なHR/HMアーティストだ。
この国では昨今、NEMOPHILA、BAND-MAID等、女性HR/HMアーティストの活躍が目覚ましい。
海外でもEvanescenceのエイミー・リー、Arch Enemyのアリッサ・ホワイト=グラズ、Halestormのリジー・ヘイル等、女性ボーカルのHR/HMバンドが活躍している。
今回は彗星の如くシーンに現れた期待の新生歌姫をご紹介したい。
Auburn / Motive Black
ニューヨークで活動していたボーカリストのエラナ・ジャスティンは、新たな活動の為ロサンゼルスに移住。
老舗クラブでライブ活動をしながら徐々にLAのHR/HMシーンに名を広めていった。
そんな彼女に真っ先に目を付けたのが、今作の共同制作者でもありプロデューサーのニック・ロウだ。
彼はVISION OF DISORDER(ヌンチャク好きならグッとくる名前!)のメンバーとBloodsimpleというバンドでギタリストとして活躍する一方、ミキシングエンジニアやプロデューサーとしても活動。Biffy Clyro、Lamb Of God、マドンナ等、数々の作品を手掛けている。
特に彼の名声を確固たるものにした作品は、グラミー賞を受賞したVampire Weekend「Modern Vampires Of The City」であろう。
彼はエラナの才能に惚れ込んだ。
二人はエラナがニューヨーク時代に演奏していた曲を、よりモダンに、よりヘヴィにブラッシュアップ。Motive Black名義でファーストシングル「Broken」をリリースした。
ギターはP.O.D.のマルコス・クーリアル、ドラムはKornのレイ・ルジエと、何とも豪華な布陣である。
しかしそんなバックに全く埋もれない存在感で、センシティブな歌詞をエモーショナルに歌い上げる彼女のボーカルは本当に素晴らしい。
アルバムの1曲目「Lift Me Up」ではButcher Babiesのボーカルであるカーラ・ハーベイとコラボ。
グルーヴィーなモダン・ヘヴィネスサウンドに、戦う女性の強いメッセージが込められている。
中でも最も衝撃を受けたのが4曲目の「Caged」だ。
シンプルなギターリフ&メロディでありながらもレイ・ルジエのドラミングが秀逸で、全く飽きさせない曲展開になっている。何より困難を乗り越えようと自分自身に訴えかけるようなエラナの歌声と歌詞にノックアウトされた。
彼女は何故ここまで自分を鼓舞するのか。
その答えは10曲目、アルバムのタイトルトラックである「Auburn」にあると私は考える。
若くして亡くなった彼女の妹の事を想い歌っているこの曲は、エラナの中に空いた穴を明確に映し出している。
そしてその穴を懸命に埋めようとしている一人の女性の生き様。それがこのアルバムではないかと思う。
余談だが、私が初めてCoccoを聴いたとき、命や人生を狂気的に歌い上げるその姿にボーカリストとして強烈に憧れた。
今、私はエラナに同じ感情を抱いている。
これから彼女がどう成長し、苦悩や困難を乗り越え、いかに音楽で表現していくのか、非常に楽しみである。
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