INTERVIEW
AA=
2025.04.22UPDATE
2025年05月号掲載
Member:上田 剛士(Ba/Vo/Prog)
Interviewer:吉羽 さおり
自分が培ってきたものを表現できるときなんじゃないかと思った
-今回はもう1つコラボ曲ということで、昨年ラッパー、JUBEEさんに楽曲提供した「Re-create」のセルフカバー「Re-create -AA= ver.- feat. JUBEE」が収録となりました。こちらは若い世代とのタッグとなりましたが、だからこその考え方ややり方等違いや面白さはありましたか。
もともと彼に曲を提供したときから、AA=の方でもやろうぜという話になっていたんですけど、全然世代が違うので、また別の面白さでしたね。逆にもう好きにやっていいよみたいなところもありましたし。やっぱり若いから普段からテンション高いね、元気だねっていうのはありましたね(笑)。そんな(元気な)やつが来たっていうのが音にもパフォーマンスにも表れるから楽しいですよ。そこは自分たちには出せないものなので。
-今回のコラボで、同時代を走ってきた者同士ならではの空気感、その背中を見て音楽を始めた世代のリスペクトと思い切りの良さという、両方の視点を感じます。
JUBEEはTHE MAD CAPSULE MARKETSの現役の頃を知らない世代なので、ネット情報等でいろいろ知って、追いかけてきてくれているから、ほんと昔のこともよく知ってるなっていう感じですよね。Tシャツとかも買い集めていたりして、そんなのあったねってこちらが思うくらいで。
-いいマニアでいてくれているんですね。またコラボ以外のところですと、「WAKE UP NOW(DROP THAT S××T)」等はまさに歪みが全開で、震わせていくような、攻撃性の高い曲となりました。
さっきの「BLUE & YELLOW」が1曲目なんですけど、あの曲は以前からあった曲なので、自分の中のアルバムの想定1曲目はこの曲という感じではありますね。盛り上がろうぜ的な、それだけです。
-この曲はもちろんですが、アルバム全体を通してのサウンドのムード、質感に90年代、2000年代の感触があるのは意識的なところですか。
そこは意識して作っているところでもあるので、感じてもらえたら嬉しいなと思っています。
-年々、ライヴを観ていても思いますがそこが露わになってきている感じもありますね。
今回は特にそうですね。その時代の、自分がワクワクしていた時代のサウンドをいろいろ聴いて、改めてやっぱりいいなと思えるようになったので。それを自分なりの解釈で2025年にやるっていうのは、自分としては正解なんじゃないかなと感じて。それは今じゃないと思わなかったことだろうし。
-昨年夏の東名阪ツアー"AA= FIGHT & PRIDE TOUR"での会場SEがHELMETで、その匂いは感じていました。
あの辺がヒントですね(笑)。この間の"AA= LIVE THE NEXT"ではRoni Sizeをかけたり。そこを知ってる人は喜んでいるだろうなという。
-あの当時の音の手触り、ヒリヒリするような鋭いエッジみたいなものを求めている感じですか。
時代的にも音楽的にも様々な狭間で、尖っている時代ではあると思うし、今よりも完成されてない時代だと思うので。その意味でも、エッジが効いているものを表せたらとは思っていましたね。自分等にしか出せない音でもあるなと思ったので、エンジニアの人ともみんなで話をしながらという感じで。
-そこで何か当時の作品やバンド、このエンジニアの作品等リファレンスにしたものもあったんですか。
そういったものは特にないんです。やっぱり自分のベースがそこにあるし、その流れを汲んでいるので。ただいろいろ、当時のバンドはこうだったよねって話をしていたり、ミックスのテクニカルの部分でも当時はこんな感じにしたよねみたいな話はあったりしたんですけど。自分たちのセオリー通りにやって、現代にも通じるものというか、負けない音像にしないとなとは思ってやってました。基本的には自分の同世代というか、今まで一緒に歩んできたやつらに向けてやっているのもあるので。"お前等も来いよ、好きだろ?"っていう気持ちもありつつで。
-思い出すものや感覚がありますよね。さらに、リアルタイムでは触れてこなかった10代なり、20代の子たちがこのサウンドに感化されたとか、新しく刺さってくれたとかがあれば、なおいいですし。
そういうのが起きたら面白いし。それこそJUBEEじゃないけど、ああいうふうに勝手に背負ってきてくれる子がたくさんいたり、若いアーティストやバンドの子が、いろいろと言ってくれているのも聞こえてきたりもしているので。今はそういう時代なんだなと思いつつも、ただ基本的には自分たちの同世代のやつらに向けて作っている感じですね。
-アルバム中盤の「CLOUDED MIRROR」は、ドラマ性の高いAA=サウンドを象徴するような曲でもありますが、今回はレゲエ的なパートも入っています。
そうですね、自ずとそうなりました。タカ(白川貴善/BACK DROP BOMB/Noshow)が歌うことで、やるとBACK DROP BOMB色が強くなるので、ばっちりだったんじゃないかなと思いますね。この曲は少し前に作っていた曲で、久々に自分が溜め込んでいたデモを聴いていて、これ今回やってみようかなという気になったもので、いつ頃作ったのかは覚えてないんですけど、自分の今のテンションに合ってるなと思って。
-語り掛けるような魅力もある曲で、上田さんとタカさんとの掛け合うような歌もとてもいいです。
そうですね。歌詞はタカがうまくいいメッセージを作ってくれました。自分はもっとぼんやりとしたイメージの投げ掛けだったんですけど。素晴らしいと思います。
-タカさんも、曲それぞれでいろんなタイプの歌詞を書いていますが、こうしてAA=でも長くやってきて、改めてタカさんがAA=の音楽にもたらしてくれるものはありますか。
タカ自身がわりとポジティヴなものを出してくれるというのはあると思いますね。自分のほうがよりストレートな表現なんですけど、あいつ自身の優しさというか、デカさというか、それが言葉に表れてる気がします。
-その2人のコンビネーションが曲に深みを出している。また「30 YEARS, STILL GOOD GIRL」は誰か具体的に人物が浮かんでいる曲ですか。
これは、もともとTHE MAD CAPSULE MARKETSに「GOOD GIRL」という曲があるんですけど、そこからずっと一緒に時代を生きてきている女性たちに向けている面もありますね。
-先程の話じゃないですが、同世代、共に時代を駆け抜けてきた人たちへ向けてという思いが今作は強いんですね。
大きいですね。もちろん歌詞はいろんな面があるので、それだけではないんですけど。どう考えてもこの世代を生きてきて、それぞれの時代を楽しんで表現してきて、今の自分がある。その自分の音楽の存在意義というのを形にできればなって思いはありました。
-上田さん自身80年代、90年代、2000年代といろんな音楽的なムーヴメントを経験もしてきたと思いますが、そこで一貫して自分の音楽というものを表現してきていますよね。
そうですね。結局、自分は自分の道をずっと来ているだけなので。自分目線のものはたくさん語れるし作れるし表現できるなと考えているので、2025年であっても決して古くない、そして自分が培ってきたものを表現できるときなんじゃないかなと思ったんです。今だからできるし、今だからやる意味があるというか。自分にとってのリアルがこれなんですよね。
-それは今回のアルバム・アートワークにも出ています、上田さんの音を象徴する、歪みのエフェクターをモチーフとしたもので、これまでになく分かりやすく提示したアートワークとなりました。
いいですよね(笑)。これも自分がずっと使い続けている機材の1つで、自分の音のアイコン的なところもあるので、あえてそれをもとにしたジャケットにしてます。自分を代表するワードが歪みでもありますしね。これをベースに使ってる人あまりいないんです。
-それで、これぞというシグネチャーな音になってる。
結局、自分はルール無視みたいな感じなんですよね。自分が面白いと思ったらそれでいいかなっていう。
-それが、ご自身が音楽を始めて、バンドを始めてから変わらずあるマインドという。
基本的にはパンク・ロックが自分のベースになっているので、その精神なんですよね。DIYというか。自分で自分の思う形で、思うことをやるっていう。
-その太い柱があるからこそ、時代を経てもブレずにきているんですね。
それでやってこれたから良かったなという感じですけどね(笑)。ブレることができる程器用じゃなかったのかもしれないし。だから新しい機材とか、新しいベース・アンプとかも分からないんですよ。自分は自分の機材しか分からないくらい。
-だからこそ機材についてとか生み出されるサウンドについて、いろいろ聞きたいっていう子たちもいるんじゃないですか。
普通のベーシストや普通のシステムとは違うので、どうやってるんですかっていうのはよく聞かれますね。機会があれば、自分の機材とかも見せてます。
-自分と同じような感覚を持ってやってるような若い世代の子等はチェックしてますか。
なかなか若い世代となると分からないですね、昔から、自分のやり方を作り上げるので精一杯で、他の人がどういうふうにやってるのかとかは分からなかったので。コンピューターやシーケンサーを並べた上でバンドでやるバンド自体が、ほとんどいなかったのもあったし、そこでやりたい音楽がヘヴィだったりラウドだったりとなると、なおさらいないので、正解がなかったというか。海外とかに行くといくらかいたんですけど、それでも自分のスタイルともまた違ったりもしたので。人間とマシーンの融合で、さらに攻撃的なものっていうのはほとんどいなかったように思いました。なので自分で探す、自分で見つけるというのが、自分のやり方になったんですよね。
RELEASE INFORMATION
AA=
『#7』
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