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INTERVIEW

Unholy Orpheus

2024.05.28UPDATE

2024年05月号掲載

Unholy Orpheus

Member:紫煉(Scream/Gt) 仁耶(Gt) Jill(Vn) Hiroyuki Ogawa(Ba) FUMIYA(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

生きた証をなんらかのかたちで残すことができれば、その存在はあり続けられる


-さすがです。では、ここからは各メンバーに『what is DEATH?』の個人的な推し曲についてうかがっていきたいと思います。

FUMIYA:2曲目の「Slave Domination」と、6曲目の「TRAUMATA (feat. Fuki)」を選びたいと思います。「Slave Domination」は実質的なアルバムの1曲目ですし、デスラッシュっぽいところがテンポ的にも強く出た曲になっていると思います。メロディック・デス・メタルってこうなんだよということがガツン! とわかりやすいかたちで表現されている曲なんじゃないでしょうか。自分としても、得意なメロディックでスラッシーなプレイを好き放題やらせてもらってます。「TRAUMATA (feat. Fuki)」に関しては、メタルの世界の中のいわゆるブレイクダウンっていういきなりテンポが落ちたような感じの展開が入っていて、これはおそらくあんきもでは初なんですよ。

-これが初だとはやや意外です。

FUMIYA:まぁ、あんきもって別に"そういう"バンドではないですからね。ただ、あんきももUnholy Orpheusも、いろんな人にとっての"メタルの入り口になりたい"と思っているバンドなので、いわゆるメタルコアとかが好きな人たちからすると当たり前みたいな、ブレイクダウンという新しい文化に初めて触れる人が出てきてくれたら、ここからそういう世界にも興味を持ってくれたら嬉しいなと思ってます。「TRAUMATA (feat. Fuki)」は、そういう間口になりえる曲という意味でプッシュしたいですね。

Ogawa:僕はベースの面で言うと5曲目の「Reincarnation」ですかね。録るのに苦戦はしたんですけど、その甲斐あって"おいしい"部分がかなりある曲になってます。全体的な攻撃性という面では4曲目の「The Other Cosmos」も好きで、最後にテンポ・アップするあの展開はあんきもには意外となかった感じなんですよ。今挙げた2曲は、きっとライヴでも面白い感じになっていくと思います。

仁耶:僕は「TRAUMATA (feat. Fuki)」を選びたいと思います。というのも、この速度でリフを弾くというのはあんきもだとほぼ記憶にないんです。"あぁ、これはこのプロジェクトならではのフレーズが出てきたな"と感じながら、この曲は弾いてました。まさにヘヴィで速くて、メロディックな部分のあるデス・メタルな曲でお気に入りですね。

Jill:私は2曲目の「Slave Domination」ですね。先ほどもお話ししたメロディのことに関して言うと、この曲はまさにヴァイオリンが目立つ旋律を目立つ場所で弾くんですよ。このアルバムの中でも自分としては一番研究した曲で、ヴァイオリンは右手の弓をどこで折り返すのか、というとこでかなりメロディのニュアンスが変わってくる楽器なので、この曲ではいくつかのパターンを試しながら、3つぐらいまで弓使いのパターンを絞り込んで、その中から紫煉さんに選んでもらったんです。他の曲でもそういうことはやってるんですけど、中でも特に時間をかけたのがこの曲でした。

-と同時に、Jillさんはアルバムの冒頭を飾るインスト曲「what is DEATH?」でもドラマチックなヴァイオリンの音色を聴かせてくださっていますね。

Jill:この曲でもヴァイオリンでメロディを弾いているんですが、曲調が私が昔から得意としている耽美でちょっと怪しげなところのある雰囲気なので、自分の持てる技術を余すところなく注ぎ込むことができました。

紫煉:あんきもでも1曲目にはSEというかインストを持ってくることは多いですし、このアルバムでもメタルの伝統的なやり方を踏襲しましたね。そして、実はこの曲にはストーリーがあるんですよ。プライベートなことではあるんですけど、2022年に実家の犬が亡くなっちゃったんですね。今回のアルバム・ジャケットもポメラニアンの骨をデザインしたもので、アルバムと1曲目の曲タイトル"what is DEATH?"も生きるとか死ぬとか、そういうことをテーマにして付けたものなんです。アルバムに収録されている各曲の詞を書いていくうえでも、そのことが影響した点がすごくありました。

-単にデス・メタルだから"what is DEATH?"ということではなかったのですね。

紫煉:ダブル・ミーニング的にはなってます。あんきもが好きって人の中には、このアルバムで初めてデス・メタルに触れることになる人もいるだろうから、これは"デス・メタルってどんなもの?"って意味での"what is DEATH?"でもあるし、文字通り"死とは何か?"という哲学的な意味もあるんです。

-死というのは、ペットも人間もあらゆる生きものが絶対に逃れることのできない絶対的な結末ですものね。

紫煉:ただ、死んだとしてもそこで完全に終わりというわけではないと思うんですよ。人でも犬でも、生きた証をなんらかのかたちで残すことができれば、その存在はあり続けられるんじゃないかと思いますからね。『what is DEATH?』を作っていくときには、俺がそれを作っちゃおうかなみたいな感覚がありました。

-紫煉さんご自身は、今作の中でどの曲を特に推したいとお考えですか。

紫煉:みんなの話を聞きながら選ぶの難しいなと思ってましたけど、当初タイトル曲候補でもあった「The Other Cosmos」かなぁ。これは別の秩序を持った世界に対しての憧れを持った結果、そっちに行くみたいな内容なんですよ。ある意味、Unholy Orpheusというプロジェクトもあんきもの別の世界線みたいなものですからね。曲調というよりは歌詞の内容の面で、ここで描いているテーマは自分にとって重要です。あと、歌詞の面では「Slave Domination」もあんきもでは今まで表現してなかったことを書いてますね。

-といいますと?

紫煉:これ、性癖のことを書いた歌詞なんですよ。あんきもでは直接的にはエロティックな表現はしないので、そこに踏み込んだ感じなんです。まぁ、性というのは生命にプログラムされているものでもありますしね。今の世の中で何かと話題になる多様性についても、まだまだ途中なんじゃないかなぁと見ていて思うことはあります。そういったことなどを考えつつも、歌詞では表面的にこんな感じで書いてみました。

-ほぼ全編でそうした日本語の歌詞をデスボで歌っている、というところも今作『what is DEATH?』の面白さなのではないでしょうか。

紫煉:日本でデス・メタルやってるバンドって、大半は英語でやってることが多いと思うんですけどね、自分は日本語話者なので、日本語のほうが細かいニュアンスまで表現することができると考えているので、無理に頑張って英語で書くということはしませんでした。それに叫ぶってどういうことなのか? と考えたら、かっこいいから叫ぶとかじゃなくて、悲しみとか怒りとか、自分の大きい感情を吐き出すために叫ぶんだと思うんですよね。身近にも上手いデス・ヴォイス・シンガーがいっぱいいるなかで、あえて自ら日本語で叫ぶと決めたのは、ここに乗せたい気持ちがあるからなんですよ。

-メッセージ性については「Don't return to sanity」からも、リアリティのある想いというものをひしひしと感じます。

紫煉:あぁ、これは自分のことや、ファンのことも含めた自分たちのことを書いたものですからね。比較的わかりやすいと思います。

-その一方で、ゴシックな空気感の漂う「Undeveloped Land」は歌詞も幻想的で強い物語性を感じます。

紫煉:この曲はMVも公開していて、歌詞は、研究とかをしている人が途中でちょっと間違った方向にどんどん進んでいってしまって、自分だけで完結する狂気の世界から戻って来られなくなってしまうという内容なんですよ。これは"そうならないようにしなくちゃな"って、自分に対する戒めを込めて作ったものでもありますね。自分だけが理解できるようなものを作って満足する、というふうにはならないようにって意味で。

-そういえば、ラストを飾る「want to LIVE」だけは英語詞なのですね。

紫煉:これはちょうどコロナ禍に作ってた曲なんです。"want to LIVE"っていうのはこれもダブル・ミーニングで、生きることとライヴをすることの両方を意味してるんですよ。ただ、詞の大半には意味がなくて内容としては47都道府県を英語に変換して並べてるだけです(笑)。

-ん? "North sea way"というのは......北海道ですか!

仁耶:知らなかった。"Blue forest"って青森か(笑)。

Ogawa:へー!

Jill:静岡は"Silent hill"になってる(笑)。

FUMIYA:ヤバ(笑)。

紫煉:あの当時、コロナの支援策で"Go To Eat"(Go To Eatキャンペーン事業)とか"トラベル"(Go To トラベル)とかあったじゃないですか。そういうのもいいけど、普通にライヴやらしてくんない? って気持ちを「want to LIVE」ってかたちで詞にしたわけです。

-だとするならば、その積年の想いは、今度の"Unlucky Morpheus 15th Anniversary Live Tour『REINCARNATION』"でもぜひ発散してきてください。なんとこちらにはO.A.としてUnholy Orpheusが出演されるのだとか。

Ogawa:オープニング・アクトとは言っても、『what is DEATH?』の曲は大半を演奏する予定です。

紫煉:1曲ずつはそこそこ短いしね。もちろんあんきもを観たくて来る人からすると、O.A.が長すぎて本編が短くなっちゃうのは残念な気持ちになっちゃうだろうから、本編部分の演奏時間はそのままでプラスアルファってかたちで、オープニング・アクトも頑張るぞ! というライヴをしようかなと。

Ogawa:なかなか体力的には大変そうですけど、なんとか乗り切っていこうと思います(笑)。

紫煉:みんなには『what is DEATH?』を聴いて予習してきてもらって、ライヴで一緒に叫んでくれたら嬉しいですね。それが実現することで、このアルバムは本当の意味で完成するんじゃないかと思ってます。