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INTERVIEW

The BONEZ

2023.05.10UPDATE

2023年05月号掲載

The BONEZ

Member:JESSE(Vo/Gt) KOKI(Gt) T$UYO$HI(Ba) ZAX(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

当たり前なことが、いつ崩れるかわからない。 俺らは他愛もないことが大事なんだなと思った


-『Yours』のオフィシャル・オンライン盤には、ライナーノーツやメンバーそれぞれのインタビューもあって、充実した内容になっているんですが、ZAXさんはその中でバンドにおける自分の役割に触れていますね。この数年間で、よりバンドについて考えることや、改めて気づく機会が増えたというのはありますか。

ZAX:うん、でも俺がやることは変わらないんですよね。俺がバンドをやり続けるというのはどんだけメンバーのことが好きなのかってことなので。好きなやつと好きなことをやる。以上。みたいなところなんですよね。それが、KOKIが入ってより好きになったし、JESSEのこともT$UYO$HIのこともより好きになったしみたいな感じで。今かなり状態がいいんですよ。仕上がってます。

-それは作品が物語っていますね。

ZAX:個人的なことで言うと、気張るところをやめたみたいなところがあるんですよね。もっともっとみたいな思いもあるんですけど、自分らしく叩けたらいいなみたいなことかな。でも、そうなるまでは時間がかかったというか。

-気張るには、気張る理由があった?

ZAX:負けられへんみたいなのもあったし。でも、今回のアルバムは俺は俺らしくいようとなれたんですよね。

-そういう過程を踏んでのアルバムだったんですね。

ZAX:いっぱい話したもんな。

T$UYO$HI:そうね。

ZAX:アルバムのことだけじゃなくて、日常のこととか、いろんな話をしたから。

T$UYO$HI:俺らは常によく話すんです。みんなで車に乗っていて黙ってシーンとなる時間はないし、必ず誰かしら喋ってる。曲のために何かを話そうとかではないというか、一応こういう方向性がいいと思うんだよねとかは話すんだけど、一番大事なのはそこじゃない気がするかな。

JESSE:"今日めっちゃ面白いことがあったんだよね"とか、"このMVヤベぇ"とか、"このバンドイケてるよ"とか、誰にでも言うわけじゃないけど、そういう話をする友達っているじゃん。ふと面白いものが撮れたら送っちゃう友達とか。それがたまたまこの4人なんですよ。普段共有していることが、てめぇらの面白いものだったりする。いつも共有してるからこそ、いざみんなで曲を作るときに自ずと出る空気感があるし、そういうのってやりたくてもできるものじゃないと思うんですよね。どれだけバカやっても、音楽とかけ離れたところで話していても、いざ音楽になったときにみんなめちゃくちゃイケてるから、100の内、90パーセントかっこつけて10パーセントくらいは素があってもいいよねっていうところが、うちらはその逆で。他のバンドや対バンする人がよく、"お前らのバンドいいよな"って言うんです。俺らの演奏やジャンルがそうなのかもしれないけど、その感覚があるからなんだと思うんですよね。例えばROTTENGRAFFTYのN∀OKI(Vo)は、対バンするとずーっとうちらの楽屋にいるんだけど。

-それくらい、居心地がいいんでしょうね(笑)。

JESSE:うちらの楽屋で飯を食ったり、携帯見たりしてるみたいな。さっきも誰かしらずっと話してるって言ったけど、みんな同じ部屋にいて無言でも一緒にいられる感じっていうか。

KOKI:たしかに。

JESSE:親友が泊まりに来て2~3時間それぞれ本を読んでるとか、何も話さない時間でもすごくナチュラルで居心地がいいっていうのがあるじゃないですか。そういうところが他のバンドの人たちからしたら、お前らめっちゃ仲ええなって言われるところなのかもしれない。

ZAX:一昨日(※取材は5月1日)も、結局dustboxみんなThe BONEZの楽屋に来てたもんな。今日あんたらのツアーやっていうのに。

JESSE:なんばHatchの楽屋って、メインの楽屋が一番きれいなんですよ。

T$UYO$HI:広いしね。

JESSE:窓もあって、あの部屋が一番外も見えて気持ちいいのに、なんで俺らの楽屋にみんな集まってるのっていう(笑)。それもメンバーだけじゃなく他のスタッフさんたちもうちらの楽屋にいて。他のスタッフの人に、"ZAXタバコ吸いに行こうや"って言われるっていう。

ZAX:いや、今行ってきたところやっていう(笑)。

JESSE:なんか楽なんでしょうね。

T$UYO$HI:さっき音楽の話どうこうはあまり重要じゃないとは言ったけど、やっぱりそこも大事で。バカ話はできるけど、いざ本音の話はできないバンドもいるし、仕事の話はするけど、プライベートの話はお互いにしないバンドもいるけれど、俺らはそれをちゃんと両方話せるとこがいいんだと思う。

ZAX:それぞれのバンドでスタイルはあると思うけど、うらやましくなるのかもな、俺らがすごく自然やから。10年経つんですけど、だいぶおもろなってきてますからね。飽きない。

-時間を重ねてきてなお、飽きないと言える状態なのが面白いですよね、最初からこのムードっていうわけじゃないんですか。

T$UYO$HI:でも、基本はこういう感じなのかな?

JESSE:うちらは、今だから言えるけど悲しさや迷子から生まれたバンドなので。普通に一緒に飯を食えるとか、一緒に音を出せるとか、一緒にハイエースに乗ってライヴ会場へ向かえるとか、やったことないライヴハウスでやれること自体がご褒美でしかないんですよ。いろんなバンドが高みを目指すと言うけど、俺らは好きなやつらと一緒に今日も演奏できたねとか、みんなで飯食えたねとか、泊まったホテルでみんなで風呂入れたねとかが嬉しいんです。コロナ禍で一番悲しかったのは、打ち上げもしちゃいけなくて。メンバーだけで打ち上げをしたとしても写真を撮られたら炎上するとか、ホテルでの部屋飲みも禁じられて。そのときに、俺らは他愛もないことが大事なんだなってすごく感じた。みんな、"どうやったらそういう仲になれるの?"って聞くんだけど、些細なことを大事に思えることなのかなっていつも思うんです。当たり前なことっていつ崩れるかわからないし、人間だからいつ俺もう無理だな、やれねぇやってなってもおかしくない。下手したら、誰にも相談せず死んじまうやつもいるわけだから。だからうちらはなんでも話し合おう、無理なくやろうねというのは大事だし、だからと言って守りに入るだけじゃなく、みんな攻めるしね。The BONEZは、10年前の1月11日に下北沢SHELTERで初のワンマンをやったんですけど(※当時はJESSE and THE BONEZ名義)。K(PTP/Vo)が亡くなったことをPTPからファンに報告したのが前日の1月10日で。PTPのファンにしてみたら、Kの死を発表した次の日に、T$UYO$HIとZAXが違うヴォーカルの横でベースやドラムを弾いているのを観るのがつらい人もいっぱいいただろうし、"なんでK以外とやってるの? よくやれるね"って思う人もいっぱいいただろうし。当時はまだ俺のソロだったから、正解がこれだなっていうのはわからなかったけど......イッシーとZAXが音を止めないこと、俺が音楽をやることで止めさせないことができるなら、間違ってはいないなとは考えていたし。最初はバンドを組もうとも思っていなかったけどね。The BONEZの初めの数年間ずっとそれが続いて、気がついたら10年経って、今年の1月11日のライヴ("The BONEZ 10th Anniversary Live Stand up 2023")はみんなゲラゲラ笑ってて、ファンも笑っていて。リハから打ち上げまで笑顔で──そういえば、SHELTERの近くにあるローソンは20年同じ店長なんだけど、ライヴが終わったあとビールを差し入れてくれたんですよ。

T$UYO$HI:ケースで入れてくれたんだよね。

JESSE:なんでローソンの店長が俺に? って思ったら、"実は覚えてないと思うんですけど──"って、20年前、俺がデビューするかしないかくらいのときから俺らを応援してくれているんですよね。

-いい話ですね。

JESSE:そういうのも含め、みんなお祝いムードで。こんな日が来るとは10年前は思ってなかったけど、続けて良かったなぁと思ったし、這いつくばってでも進んで現在があると感じます。

-時間とか、それぞれの思いが前に進めてくれるものですね。

JESSE:うん、むずいですけどね。

-そういうバンドのストーリー、始まりがあって、今バンドの思いが『Yours』となって。バンドのストーリーを感じさせるけれど、きっと受け取る人は自分の曲だって思って聴いてくれるものにもなっている。このリアルな感覚、人間味のある手触りというのが、やっぱりバンドはいいなって感じられるところだと思うんですよね。

JESSE:そうですね。プラス、前アルバム『WOKE』を出したのが5年前だったんですけど、リリースして2年でコロナ禍になったじゃないですか。僕の逮捕とかいろいろあったなか、The BONEZから離れた人たちもいっぱいいたと思うんですよ。コロナ禍でライヴに行けないとか、十人十色いろんな理由があって。もちろんどのライヴにも顔を出してくれるファンはいたんだけど、結構ファン層が変わったんです。今まで来ていた、特に同世代や下の世代って、10年前はバイトだったのが正社員になっていたり起業するやつがいたり、子供が生まれたり、10年前は親は元気だったけど介護が必要になっている人だったり、医療従事者になったり、ライヴには行きたいけど自分の周りには迷惑はかけられないからって、来られなくなった人も多くいて。いざコロナが明けて、ライヴには行けるんだけど、久しぶりに補助なしのチャリに乗るような感覚があると思うんです。そういう状態になってるところに、このアルバムがみんなをライヴに行かせたがってるように感じるんですよね。"久しぶりにThe BONEZ行こうかな。っていうかチケットゲットしちゃった"っていうファンのSNSを見ていると、ライヴでいい画が見られそうだなって思うし。

-そうですね。

JESSE:何よりこのアルバムは眉間にシワが寄ってないのが一番いいかな。イエーイっていう感じで。これお前絶対好きだぜってスッと渡されたもので、人生観が変わることってあるじゃないですか。すごくナチュラルに人生観を変えられちゃうアルバムになるかもしれない。

-コロナ禍のライヴの話で、The BONEZを観ていていいなって思ったことがあって。モッシュ、ダイブができなかった、密なフロアでなかったからこそ小さな子供や若い子もライヴに来られて、実際前方で子供の姿を目にすることが多くて。それもすごくいい景色だなって思ったんですね。ライヴの原体験として、この熱さを間近で観られるのはいい音楽体験だなと。

ZAX:なかなかライヴを最前列で観られないですからね。

-それが何か初期衝動に繋がるとか、これからの人生が変わるでもいいし、その日が変わるでもいいし、ロック・バンドのライヴを目の前で観るってその子にとってすごく大きいことだよなと。そういうのが、このコロナ禍であったことが印象深かったんですよね。

JESSE:お父さん、お母さんにも感謝だよね。最初は両親が観たいから連れてきたかもしれないけど。でもSNSを見ていると、子供たちが自ら「SUNTOWN」(『WOKE』収録曲)をかけて歌っているとか、無理やり親に連れてこられている感は0なんですよね。The BONEZを観に行きたいって思って来てくれてる子供たちが多くて。それは親に感謝だなっていうか。The BONEZがかかると家がいい雰囲気になるって思ってないと聴かないだろうしさ。音がバックグラウンドで流れているときはすげぇ楽しいんだろうなとか、そういう生活の一部になってくれているのも嬉しいし。うちの息子なんか4歳なのに、"「Thread & Needle」(2014年リリースの2ndアルバム『Astronaut』収録曲)は「SUNTOWN」の前にやるでしょ"って言ってきて、そこまで聴いてるの? っていう(笑)。The BONEZにはそうやって子供たちが釘づけになる何か、"アンパンマン"的要素なのか、"セサミストリート"要素なのかが、どこかしらにあるんだろうな。"ドラゴンボール"とか"ONE PIECE"とかじゃないけど、The BONEZにはそういうドラマを感じるんだろうなと。