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INTERVIEW

ヒステリックパニック

2019.10.09UPDATE

2019年10月号掲載

ヒステリックパニック

Member:とも(Vo) おかっち(Ba)

Interviewer:米沢 彰

-今回のフル・アルバムですが、前アルバム『ノイジー・マイノリティー』と同じく13曲となりましたね。13曲という数字にこだわりや意味づけなどあるのでしょうか?

とも:やっぱ悪魔の数字なんで。不吉な13階段、13日の金曜日......的なところはまったく意識してなくて(笑)。僕らミニ・アルバムとかで7曲出しちゃってるんで。10曲でもフル・アルバムって言えるんですけど、ミニ・アルバムで7曲やっちゃってる手前......というのはメンバーの中でも最初に言ってました。最低でも12曲はないとなって。そこはミニ・アルバムの弊害が今になってブーメランで返ってきてるみたいな(笑)。『LIVE A LIVE』も『Hypnotic Poison』も最初は6曲でって作ってたんですけど、"いや6曲じゃちょっと収まりが悪い"ってことで7曲に増やして。さっき言った商品価値に繋がるんですけど、フルで出す以上、10曲とか11曲じゃ物足りない感はあるだろうし、かと言って14、15曲まで行くとやっぱり重たくなっちゃう。ということを考えると、1st(2015年リリースのフル・アルバム『オトナとオモチャ』)は12曲なんで、12曲か13曲くらいだと収まりがいいのかなって思いますね。

-たしかに、制作側から見ると弊害はありますね(笑)。逆に言うとファンから見たらサービス精神めっちゃあるみたいな。

おかっち:見方によってはそうですよね。

-ほかにも、短い曲で曲数を稼ぐ方法もあるじゃないですか? "これ1曲にカウントしちゃう?"みたいな光景はそんなに珍しくもないというか。

おかっち:最初それめっちゃ言ってました。1曲目はSEっぽくしよう、とか真ん中にインストを挟もうとか。いろいろ考えてたんですけど、結果的に全部歌になってしまったんですよね。

-1曲目の「Painkiller」からいきなりヘヴィで、ヴォーカルの入りもゴリゴリのスクリームから幕を開けますね。アルバムのタイトルも"サバイバル・ゲーム"だし、パンチがある入りだなってすごい感じました。そこは狙って作ったり、あるいは狙って曲順を決めたりしているのでしょうか?

おかっち:「Painkiller」は最初から1曲目だったよね。Tack朗(Gt/Vo)さんがリフを持ってきて着想していろいろ肉づけしていったんですけど。"ストレートに行こう"って言って。

とも:持ってきたときに"1曲目っぽいね"っていう感じがみんなにもうあって、"アルバムの幕開けっぽいの来た!"って作曲会議に上がってきた時点で言ってたんです。

-この曲がヒスパニ(ヒステリックパニック)への入りになる人にとってはいい入り口になる曲だなと思いました。今回の作品の中でも一番名刺代わりになりやすい曲かなと。ただ、展開は別としてサウンドはかなりシンプルに仕上がっていて、すごく生っぽさがあるバンドらしいトラックですよね。

おかっち:そこは結構意識してますね。今までの作品でもそうだったんですけど、基本的にうちは打ち込みとかは使わないんです。今回は結構マニアックなところで言うとギターの音とかを"ちょっと昔のヒスパニの荒々しい部分を出していこう"って言ってミックスのときにこだわったりして。"昔ちょっと聴いてたけど今は......"っていう人にも刺さるんじゃないのかなって思いますね。

-2曲目の「弱虫ライオット」は今作に先駆けて6月に配信リリースされていますね。6月の時点でアルバム全体の構想は決まっていたのでしょうか?

とも:もともと先行配信で1曲だけ出すっていうのは決めていたので。「弱虫ライオット」だけ単品で最初に作ったんですよ。3月から4月にかけて。なのでこの曲が軸になってると言えばそうですね。「弱虫ライオット」だけは完全に1曲だけ作っちゃって、"今年のヒスパニの指針はこれだ!"っていう感じだったんです。「弱虫ライオット」を作ってるときは"サバイバル・ゲーム"っていうタイトルはもちろんなかったですし、他の曲も一切手をつけてなかったので、完全に単品で作ったことになりますね。

-「弱虫ライオット」のMVはアニメというか漫画調で、これまでにない感じに仕上がっていますよね。これはどういうアイディアで作られたんですか?

とも:前回の『ノイジー・マイノリティー』のときとかは意図的にポップにした部分とかもあったんですけど、「弱虫ライオット」も完成してみたらだいぶポップになりました。作ってる最中はそこまでポップにしようと思ってなくて、もちろん"みんなで歌う曲を作ろう"っていうのはあったんですけど。これを僕らがMVで歌ってると、せっかくピュアなまんまで生まれてきたポップさを(僕らが)毒してしまうなって思って。できあがってみたらすごく聴きやすくて、聴いてるうちに"これは俺らが出ちゃだめだ"って思ったんですよ。いつかアニメーションのMVを作ってみたいっていうのはあったのと、今回は制作も並行してやるということで、なおさら自分らは稼働せず、なおかつ楽曲の良さを引き出すという意味で、アニメーションでやったらいいんじゃないのかっていうことでああなった感じです。

-あのMVは面白いと思いました。反響も結構あったんじゃないですか?

とも:面白いですよね。イラストを書いてくれている吉本ユータヌキさんとはもともと繋がりがあって。おかっちはプライベートで飲みに行くくらい。それで、"いつか一緒にやれたら"みたいな話もあったので、そこはわりと円滑でしたね。

-この曲がポップを目指してなかったって言われると不思議な感じがします。

おかっち:"わかりやすくしよう"っていうのはありましたけど、結果的にはブレイクダウンも入ってるし、いつもの感じにしたんです。でも、なぜかできあがったらポップになっちゃってたっていう。

-たしかに、合いの手を一切抜いたらまた全然聴こえ方が違うかもしれないですね。

とも:ヴォーカリゼーションによってだいぶ変わった気がして、オケだけ聴くとリフも結構攻めてるし。でもライヴでやったらやったで、もともと意識してた荒々しい部分も目立ってくるので面白いなって。僕らも今になって発見があったりしますね。

-MVに関しては巨大化する謎展開とか無茶苦茶で面白いと思ったのですが、このストーリーにはバンド側からの要望なども入っているのでしょうか?

とも:そうですね、楽曲のコンセプトや、歌詞をどういう意図で作ったかというのを直接会ってお話させていただいて。結果、"ゴジラ普通に面白いんじゃね?"っていう。出てくる猫がシャウトしてても説得力がないなみたいな話はしてて、じゃあ何か1個あったほうがいいなって。ゴジラなんですけど、結局操縦してるのは弱虫っていう。もともと猫はうちのモチーフになっているので、猫を基準に考えてはいたんですけど、(吉本)ユータヌキさんのアイディアも入りつつ、ディスカッションしてやり取りしながら進めていきました。面白いのでNHKとかで流してもいけるんじゃないかなって思っています(笑)。

-続く「ヲタク is ビューティフル」では思いっきりミクスチャー色に振りながら、サビではライヴで一体感が出そうな展開になっていますね。

おかっち:もろにTack朗さんの趣味が詰まってますね。

とも:この曲に関しては3年前のアルバムに入っててもおかしくない感じですね。

おかっち:個人的な話になるんですけど、この曲に至っては何も考えずに"ギターに沿って弾いただけ"っていう。なんというか、ライヴ感を出したかったんで、あんま細かいことは考えずに(ギターと同じフレーズを)まんま弾いて、"ライヴしてますよ"みたいな感じで。

-歌詞も思いっきりヲタクの行動と考え方を歌っていて、"ほんそれ"って思う人も多いんだろうなって。

とも:ヲタク讃歌です(笑)!

-ともさんの内面とか、実体験をベースにしているのでしょうか?

とも:自分ももともとヲタクだったんで。今って昔よりヲタクがポピュラーなものになったじゃないですか。昔、自分が学生だったころって"ヲタク"って言ったらダメっていうか、隠すべきもの、恥ずべきものだったんですけど、それが今は"自分はどれだけヲタクか"っていうのをアピるぐらいの時代になって。まぁ僕らのお客さんに"ヒスパニのヲタク"がいれば、例えばヒプマイ(ヒプノシスマイク)が好きなヲタク、バンドリ!(BanG Dream!)が好きなヲタクと、いろいろいるじゃないですか。

-たしかに"推しメンは誰"とか、表に出すものに変化してきていますよね。

とも:一昔前だったらヲタクって"ディスられるべきもの"だったのがポピュラーなものになって、"何かしらのヲタクであること"がむしろ生きやすいなってことで、『サバイバル・ゲーム』っていうアルバムの中で"好きなものが武器になる"って、"何かのヲタクになろうぜ!"って提唱したくて。それはヒスパニでもほかのバンドでもいいし、アニメでもいいし。何かのヲタクになったほうが人生生きやすいぜって言いたかったんです。

-アルバムのテーマとそこで繋がってくるんですね。

とも:もともとネタはあって、ヲタク讃歌はいつか書きたいなって思ってたんですけど、リンクする部分もあったんでうまくハマったのかなと思ってます。

-この曲はベースのソロ・パートもあって、聴いててすごく楽しいんですよね。一部の根強いジャンルを除いて、最近ソロのある曲って本当に減ってきた気がします。特にベース・ソロは希少種になっていますよね。

おかっち:最近はギター・ソロすらあまりないですからね。今回はスラップのソロもその曲ぐらいにしかないんですけど、でもその中でもわりと過去曲のベース・ソロをオマージュしたフレーズを弾いてて。3つ入ってるんですけど、今ベース・ソロがないって話もありましたが、そのない中で"やる"という判断をしたのは、やっぱり聴く楽しみを作りたいなと思ったんです。家で録ってるときに突発的に"あっ入れちゃおう"って入れて、結果いいソロになったんで。そういう意味でも"ソロを聴く楽しさ"を味わってくれたらなって思いますね。

-続く「SNSやめたい」については、おかっちさん作曲、ともさん作詞という体制ですね。イントロ~Aメロでのラウド&ミクスチャーの全盛っぽいリフのラインと拍の使い方がすごく印象的です。

おかっち:実は2作前くらいにはもうあった曲で、でも"っぽくないよね"っていう理由で2回ボツになってる(笑)。別に僕はそんなにプライドはないので"(アルバム的に)ないならないでいいよ"って。でもプライドないって言ってたはずなのに、やっぱどっかにあったみたいで(笑)。

一同:(笑)

おかっち:プロジェクト(のファイル)は消さずにいたんですよ。何かに使えるんじゃないかって。で、たまたま今作はシンプルめで、ミクスチャーっぽいし使えるな? って思って再度持っていったら"いいじゃん! 今回だったら使えるな"ってなって。本当はもっとゴリゴリで、ツーバスをドコドコ踏んで、そのうえで"ザ・メタルですよ~"みたいなパートがあったんですけど。

とも:あー、あったね。

おかっち:それも全部やめて、シンプルにして作りましたね。

とも:たぶん(メタルのパートは)俺が"いらん"って言ったんだと思う(笑)。

-前の作品とかだったらメタル・パートが入ってるのはありそうですし、そういうのがなしなら今作に入るっていうのはすごくわかる気がしますね。

おかっち:シンプルにシンプルにって引き算してたらこんな感じになりましたね。

-歌詞的にはともさんのリアルな思いも入ってますか?

とも:(SNSを)やめたいんですよね。

一同:(笑)

とも:本当に仲のいい友達だけ繋がるアカウントでいいなって思って。バンド・アカウントも消したいくらい(笑)。めんどくさすぎて。

-内容がすごくリアルなんですよね(笑)。

とも:でも消すと告知ができないんで。そこがバンドマンの悲しい性、ジレンマですね。

-ある意味必須の営業活動みたいになっちゃってますもんね。

とも:いろんな表舞台に立つ人には"わかる"って言われます。"消したいよねー"って。でもホント、2019年の共感を生むソングだと思ってて。時代にフィットしてる。