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LIVE REPORT

FOX_FEST

2024.05.26 @さいたまスーパーアリーナ

Writer : 内堀 文佳、菅谷 透 Photographer:Taku Fujii、Taichi Nishimaki

BABYMETALの主催フェス"FOX_FEST"がさいたまスーパーアリーナにて2デイズで初開催された。ELECTRIC CALLBOY、POLYPHIA、BILMURIと、これまでBABYMETALとコラボしたり、彼女たちの楽曲に影響を与えたりしてきたバンドに加え、ゲスト・バンドのASTERISMを迎えた、BABYMETALとは異なるパラレル・ワールドに存在する謎の生命体 METALVERSEがラインナップした今回。オープニング・アクト 赤子金属による「メギツネ」(BABYMETAL)EDMバージョンのダンス・パフォーマンスが終わると、ついに本編が幕を開けた。



METALVERSE(Guest Band ASTERISM)

"登場するキャストや内容は常に変化を重ねる"というMETALVERSEは、今回3人で"出現"。1曲目に選んだ"スウィング・メタル"ソング「Crazy J」で早速、歌声の力強さやダンスのキレ、可憐さを見せつけていく。昨年1月に初めて"出現"が観測されたばかりの存在だが、すでにさいたまスーパーアリーナをひとつにしていたことが、コール&レスポンスの大きさでわかる。トラップ的な電子音を取り入れた「GIZA」を挟み、ASTERISMのテクニカルなアンサンブルから「Cry Baby」、そしてHAL-CA(Gt)、MIYU(Ba)、MIO(Dr)が超絶技巧を披露したソロと、METALVERSEの3人それぞれのダンス・ソロを経て「Naked Princess」へ。スカートの裾を持ったり、手でティアラを象ったりした振付で"Princess"を表現する一方で、がなりやハイトーンなど、歌でも観る者を圧倒し、あっという間のステージが終了。今後の"出現"が楽しみになるアクトだった。


BILMURI

元ATTACK ATTACK!のJohnny Franck(Vo/Gt)によるソロ・プロジェクト BILMURI。Reese Maslen(Gt)、Xavier Ware(Dr)、ユッコ・ミラー(Sax)という編成で登場した彼らは「Better Hell (Thicc Boi)」でスタート。Johnnyの声は甘く爽やかでありながら、ギターとドラムはしっかりヘヴィネスを保ち、そこに乗る高らかなサックスの音色がエモーショナルな雰囲気を演出する。ゆったりとドリーミーな空気を纏って披露された「Absolutelycrankinmymf'inhog」では手を挙げてリズムに乗って揺れるオーディエンスにJohnnyが手でハートを作って"I love you!"と叫んだり、その後も"日本は世界で一番好きな国だ!"、"ダイスキデス!"と愛を伝える。「Flourideinthehardseltzerwater」ではReeseのシャウトがより彼らのハードな顔を見せ、各ブロックではサークル・ピットが発生。最後は終始感無量の表情を浮かべていたJohnnyが"人生で最高の瞬間だ。君たちのおかげだよ"と語り、「Myfeelingshavefeelings」で初の来日を締めくくった。


POLYPHIA

ステージ上にド派手なピンク色のMarshallウォールが用意され、星空のように煌めく照明とともにPOLYPHIAの面々が姿を現すと、「Loud」でライヴの口火を切る。Tim Henson(Gt)とScott LePageのツイン・ギターは美麗なクリーン・トーンから大地を揺るがす重低音まで変幻自在で、まるで森羅万象を音で具現化したような表現力だ。続く「Chimera Feat. Lil West」ではTimがアコースティック・ギターも用いた神秘的でテクニカルな演奏を披露していて、気を抜くとただ呆然と見つめてしまいそうになってしまう。そんな雰囲気を察してか、Scottはフロアに"心からの声"を上げさせ、さらに"10人はクラウド・サーフしてほしい"と要求。ひとり、またひとりと勇気あるオーディエンスが応えていくと、笑顔を浮かべつつ"俺たちはファッキンPOLYPHIAのショーに来ているんだ、もっとエナジーを見せてくれ"とさらなる能動的な参加を促す。そうしてプレイされた「Goose」は、ステージ上だけではなくフロアからもパッションが迸っていた。季節外れの暑さにピッタリのトロピカルなムードの「40oz」を経て、日本語もフィーチャーした歌モノの「ABC Feat. Sophia Black」ではエッジーなギターやダンサブルなビートが際立っていてオリジナルとはまた違った魅力があったし、「Champagne」のキャッチーなリフを観客に歌わせる演出も一体感を生んでいて、インスト・バンドでありながら数多のフェスで熱狂を生む実力が克明に感じられた。パフォーマンスではシリアスな姿勢だったけど、曲間ではアサヒスーパードライを美味しそうに飲んでいて、そのギャップもなんともチャーミングだった。ボサノヴァやフラメンコまでヘヴィ・ミュージックに昇華した「Playing God」を経て、ラストの「G.O.A.T.」ではウォール・オブ・デスが発生。幻想的な余韻を残しステージを終えた。


ELECTRIC CALLBOY

約7年ぶり、Nico Sallach(Vo)を迎えた現体制&現名義では初の来日となったELECTRIC CALLBOY(以下:EC)。近年は世界的にバズを起こしていたのもあり、日本のファンの彼らへの期待度は相当なものがあったのだろう。車内アナウンスを模したオープニング映像が観客を煽る前からフロアには手拍子が鳴り響いていて、圧倒的なウェルカム・ムードだ。バンドはそんな雰囲気にバッチリとハマる「Tekkno Train」でショーをスタート。超重量級の音圧にアッパーなエレクトロを纏ったパワフルなサウンドで早くもトップ・ギアの盛り上がりをもたらすと、続けざまに"ここにニンジャはいるか!?"と「MC Thunder II (Dancing Like A Ninja)」を披露。曲中にはウォール・オブ・デスも生まれ、フロアをパーティー会場へと一変させた。Kevin Ratajczak(Vo/Key)が"日本に戻ってこれて嬉しいよ"と喜びを噛みしめるように語ったあとは、「Spaceman」、「Everytime We Touch (Tekkno Version)」とアッパーなトラックで畳み掛けていく。後者はクラブ・ヒットのカバーだが、EC色のラウド・サウンドへと仕立て上げられているのが流石だ。「Hypa Hypa」ではマレット・ヘアのカツラやMV風の衣装に着替えて登場、一発で耳に残るメロディのシンガロングでEDMフェスやサッカー・スタジアムのような熱狂を生むと、「MC Thunder」では隣同士で肩を組んでジャンプするよう促し、さらなるお祭り騒ぎに。「Pump It」ではお揃いのトラックスーツを纏って登場、ヴォーカル&弦楽器陣がステージ最前面に躍り出てのパフォーマンスはまさに壮観だ。短いフェスのセットであろうとMVにリンクした衣装でプレイするというサービス精神も、彼らが人気を博している秘訣に違いない。髪型もビートもテクノ――もとい"Tekkno"な「We Got The Moves」で大団円を迎えたステージは、終始笑顔に満ちた極上のエンタメで、彼らがオマージュを捧げるハッピー・ハードコアの大御所 SCOOTERになぞらえて"ハッピー・メタルコア"とでも言いたくなる楽しさだ。コンプライアンスの逆風を乗り越えたECの快進撃は、まだまだ続いていくことだろう。


BABYMETAL

2日間にわたり開催された"FOX_FEST"のヘッドライナーとして満を持して登場したのは、主催のBABYMETALだ。煽りVを経て「BABYMETAL DEATH」で3人が顕現すると、フロアはもちろんスタンドからも無数のFOXサインが掲げられる。高速ギター・ソロの際にはステージを駆け回るメンバーをドローン・カメラが捉えていて、疾走感溢れる演出に早くも気分が高揚する。続く「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」ではSU-METAL(Vo/Dance)が"Show me big circles!"と煽ると、フロアのあちこちにサークル・ピットが発生。タオルが宙を舞った「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」で熱波が会場全体に広がっていくと、「BxMxC」では強靭なダウン・チューニングのグルーヴが炸裂。狂気すら孕んだSU-METALの歌唱にもグッと引き込まれた。

「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」では、POLYPHIAのTimとScottとのコラボがついに実現。スクリーンに投影された夕陽をバックにシルエットが浮かぶと、会場中から驚きと期待の声が上がる。レーザーの光が広がるなかでBABYMETALの3人、TimとScott、神バンドが届けたハーモニーは豪雨のように心を洗い流していった。続けて"ここからもっと盛り上がれるよね?"というアジテートを経た「メタり!! (feat. Tom Morello)」で、祭囃子とグルーヴィなリフが熱狂を創出。フロアをしゃがませた場面では、SU-METALとMOAMETAL(Scream/Dance)がMOMOMETAL(Scream/Dance)へ手を振りおどける仕草もあって、この瞬間を楽しんでいる雰囲気が伝わってくる。かと思えば「メギツネ」では情念たっぷりに世界観を演出し、アーティスト/パフォーマーとしてのスキルの高さ、振り幅を見せつけていた。

会場が暗転し、キッチュなテクノ・ビートが流れ始めるとフロアからドッとどよめきが上がる。"FOX_FEST"の数日前にリリースされた、ECとのコラボ曲「RATATATA」のイントロだ。照明が灯りBABYMETALが登場したあとで、MVの通りにミラーボールを頭に被ったECのKevinとNicoが姿を現すと、歓声と笑いが巻き起こる。興奮状態のなか披露されたコラボレーションは、SU-METALとNicoの美麗なハーモニー、Kevinとタメを張るMOMOMETALのスクリーム、クールからコミカル~Kawaiiまで面目躍如のMOAMETALと、両者のうま味がこれでもかと凝縮された圧巻のパフォーマンス。"Fu! Fu!"など合いの手がふんだんに取り入れられた構成も手伝い爆発的な盛り上がりを見せていて、演奏終了後には5人が喜びを分かち合うように輪になって称えあっていたのが印象的だった。ライヴも佳境に入り観客はきっともうヘトヘトの状態だったと思われるが、そこへ容赦なく鳴り響いたのは"Gimme"のSE。「ギミチョコ!!」でありったけのエネルギーを昇華させると、ラストは3人がフラッグを持って「Road of Resistance」をプレイ。最後を飾るに相応しい圧巻のパフォーマンスを披露し、観客もフロアの最後方までウォール・オブ・デス~サークル・ピットで最高潮の盛り上がりへと達していた。

それぞれ遊び心を持ちながら、あくまで真摯に新世代のメタルを奏でる者たちが集結した"FOX_FEST"は、多彩なジャンルを取り入れつつメタル道を邁進し、それを世界各地で見せてきたBABYMETALだからこそ実現した、アーティストとファンや、アーティスト同士の絆に満ちたイベントになっていたように思う。また個人的にはメタル・シーンへの本格的な参加となった"LOUD PARK 13"から約10年半という歳月を経て、同じ会場に新たな"遊び場"を自ら作り上げたというストーリーにも胸が熱くなった。終演後にSU-METALは"もし第2弾が開催されることがありましたら、そのときまたお会いしましょう!"と謙虚なコメントを残していたけど、次はどんな光景を見せてくれるのか大いに期待したい。


[Setlist]
■METALVERSE(Guest Band ASTERISM)
1. Crazy J
2. GIZA
3. Cry Baby(Official髭男dismカバー)
4. Naked Princess

■BILMURI
1. Better Hell (Thicc Boi)
2. Absolutelycrankinmymf'inhog
3. Fluorideinthehardseltzerwater
4. 80/20Skybee
5. All Gas
6. Blindsided
7. Boutta Cashew
8. Myfeelingshavefeelings

■POLYPHIA
1. Loud
2. Chimera Feat. Lil West
3. Goose
4. 40oz
5. ABC Feat. Sophia Black
6. Champagne
7. Euphoria
8. Playing God
9. G.O.A.T.

■ELECTRIC CALLBOY
1. Intro / Tekkno Train
2. MC Thunder II (Dancing Like A Ninja)
3. Spaceman
4. Everytime We Touch (Tekkno Version)
5. Hypa Hypa
6. MC Thunder
7. Pump It
8. Mindreader
9. We Got The Moves

■BABYMETAL
1. BABYMETAL DEATH
2. Distortion (feat. Alissa White-Gluz)
3. PA PA YA!! (feat. F.HERO)
4. BxMxC
5. Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)
6. メタり!! (feat. Tom Morello)
7. メギツネ
8. RATATATA
9. ギミチョコ!!
10. Road of Resistance

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