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INTERVIEW

ELECTRIC CALLBOY

2022.09.12UPDATE

2022年09月号掲載

ELECTRIC CALLBOY

Member:Kevin Ratajczak(Vo/Key)

Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)

今年3月に"ESKIMO CALLBOY"からの改名を発表した、ドイツが誇るパーティー・バンド"ELECTRIC CALLBOY"が、改名後&新体制初、バンドとしても3年ぶりとなるフル・アルバム『Tekkno』をリリース! 本作には、お揃いのテクノカット姿のメンバーが登場するMVも話題の「We Got The Moves」をはじめ、ハイパーでインパクト大の強力な楽曲が勢揃い。まさにアクセル全開で再スタートを切るような1枚だ。そんな同作について、またこの3年間のバンドの歩みや、現在の情勢について思うことなど、Kevin Ratajczakにたっぷり話を訊いた。

-先週末はフェス"PAROOKAVILLE"、今週はフィンランドに行かれるのですよね(※取材は7月下旬)。そんななか時間をとってくださってありがとうございます。

そう、先週末は"PAROOKAVILLE"に出てきたんだ。最高だったよ。地元ドイツのテクノ・フェスなんだ。メタルでもロックでもなくてね。それでも俺たちをブッキングしてくれた。もうネットにもいろいろ上がっていると思うけど、花火とかドカンと上がってね。レーザー・ビームもたくさん使っていたし、観ているだけでも素晴らしかったよ。

-テクノ・フェスに出たとは、あなたもオーディエンスも新鮮な体験をしたんですね。

ほんとだよ!

-さて激ロックでは約3年ぶりのインタビューとなりますので、まずは3年前から今までの出来事を振り返りたいと思います。3年前は5thアルバム『Rehab』が出ましたが、最後にフロントマンのSebastian "Sushi" Bieslerが脱退。そのあとNico Sallach(ex-TO THE RATS AND WOLVES)を新ヴォーカルに迎えましたね。Sushi脱退からNico加入に至る経緯を教えてください。

正直言ってバンドとして苦しい時期だったよ。フロントマンがいなくなるとか、メンバーと別の道を歩むことに決めるというのはね......。このバンドを続けていけるかもわからなかった。やっていけるのか、そのためのパワーはあるのか。ソングライティング的にもすごくローな気分だったんだ。いいヴァイブにもなれなくてね。でもしばらくしてそもそもどうしてバンドを組んで音楽をやることにしたのかを改めて考えることにしたんだ。そうしたら、バンドを始めた頃の懐かしいヴァイブが戻ってきた。次々と曲が書けたんだ。しかも楽々とね。Sushiが脱退したから曲が書けるようになったというわけじゃないんだ......喧嘩したわけじゃないからね。ただ、合意できなかったことがあまりに多すぎたんだ。そうするとお互いを牽制してしまう。お互いに制限を掛けてしまうから、うまく機能しなくなってしまうんだ。だから残った5人で曲作りを始めたときは、すごく気楽になっていた。スタジオに入って好きな音楽を作る、そのことが本当に自然に感じてね。それから新しいシンガーのキャスティングがあった。クローズされた状態でシンガー探しはしたくないと思ったから、(募集の)ビデオを作って、ネットで新しいシンガー探しに入ったんだ。

-オーディションをしたんですね。

そう。ただ状況がちょっと違ってね。シンガーを募集したら世界中から山ほど応募があった。その中で3人と実際に会ってみる可能性があったんだけど、そこにコロナ禍が始まってしまったんだ。

-あぁ......。

そうなんだよ。それで他のやつらには会えなかったんだけどNicoは地元がすごく近くてね。

-カシュトロップ・ラウクセルの近く?

そう。で、あいつは昔もバンドをやっていたから知り合いだったんだ。あいつがやってきて、一緒に歌ったり、新しい曲を書いたりして。

-もう曲作りを一緒にやったんですか。それはすごいですね。

ああ。ケミストリーが最高だったよ。それで書いたのが「Hypa Hypa」(2020年リリースの『MMXX - EP』収録曲)なんだ。初めてNicoと書いた曲だよ。とにかく素晴らしいケミストリーが起こったんだ。そこからはみんな承知の通りってわけさ。この先やっていけるのかとかそういう恐怖心が一気に消え去った。とにかくバンド内の雰囲気が良くなって、曲を作るのがこんなに楽しかったなんて、と思えるようになったんだ。そして今はまたたくさんのフェスやショーに出るようになった。

-なるほど。『Rehab』は全体的にLINKIN PARKやBRING ME THE HORIZONを彷彿させるドラマチックだったりシリアスだったりするタイプの楽曲が中心で構成されていたと感じましたが、次の『MMXX - EP』収録の「Hypa Hypa」で、初期ESKIMO CALLBOYのユーモア溢れるパーティー・ソングが復活し、それをさらにアップデートしたサウンドに感じました。それは今あなたも言っていたように、もともと好きだった音楽に立ち戻ったのと、Nicoの加入が後押ししてくれた面もあるのですね。

その通りだよ。俺たちがシリアスな音楽が嫌いというわけじゃないし、むしろ好きだけど、楽しい時間を過ごすことも好きなんだ。パーティーとかね。世の中にたくさん問題があることは知っているし、まだまだあることも知っている。でもある程度の時間だけは、そういうことを忘れて楽しんでもらいたいんだ。楽しい時間を過ごすことによって頭の中を整理したら、日常生活の問題にまた向き合う心の余裕ができる。それが俺たちの音楽の裏にある気持ちなんだ。『MMXX - EP』を書いたとき、このバンドがとてもつらかった時期から解放されたような気がした。と言っても『Rehab』が嫌いだったわけじゃないよ。

-あれはあれで素晴らしいアルバムでした。

うん。ただ、書くのにとても骨が折れたね。あのアルバムの曲作りについてはあまりいい思い出がないんだ。最終的にはいい曲が書けたけど、それまでの道のりが大変だった。骨が折れたし、フラストレーションも溜まったし、音楽を作ってきたなかであの時点がどん底だったね。

3年前のインタビュー(※2019年11月号掲載)のとき、"Rehab"というタイトルそのものがその苦しみから来ていると説明してましたね。

そう言っていたね。嫌なことがあって、ようやく完成してハッピーになれた、これで何もかも好転する! と思っていたけど......そうはならなかった(苦笑)。俺たちはリスタートする必要があったんだよ。それでSushiとも別の道を行くことにして、あいつとは違うことをやることにしたんだ。俺たち側の視点から言うと、新しいアルバム『Tekkno』が完成した今、本当に気分がいいんだ。曲もすごく楽に書けたしね。そりゃ少し時間はかかったけど、書くことはすごく楽だったんだ。書いている間もすごく楽しくて笑っていたし。要は"すべての物事には理由がある"ってことだね。

-今はさらにパワー・アップしていますもんね。Sushiも新しいプロジェクト(GHØSTKID)でハッピーにやっているようですし。

そうだね。

-「Hypa Hypa」はYouTubeで2,500万再生以上という過去最大のビッグ・ヒットになりましたね。このヒットは予測していましたか?

いいや、予測できるはずがなかったよ(笑)。このバンドを始めてもう何年にもなるから自分たちが何をやっているのかはわかっているし、昔より思考整理もできていると思うけど、こういう成功は計画してできるもんじゃないからね。

-たしかに。

パーフェクトなタイミングや状況が必要なんだ。パンデミックが起こっている今の状況は最悪だけど、ある意味「Hypa Hypa」の成功には良かったのかもしれない。みんなステイ・ホームして変なYouTubeのビデオを観ていたからね。そうすることによってこの時期を乗り越えようとしていたんだ。

-(笑)

曲を書いたときには、いい曲になるという確信はあったし、俺たちらしさを出していることも確信していた。それでいて何かしら新しい、今までとは違うものでね。あのビデオを撮ったときは自分たちでいろいろ仕切ってね。笑いっぱなしだったよ。

-あなた方自身も楽しんでいたんですね。

もちろん! みんなに気に入ってもらえる自信があったよ。新体制1曲目をリリースしたとき、俺たちはみんなの注目を浴びていた。新しいシンガーが入って最初の曲ということで、改めて自己紹介するような感じだったんだ。"やっぱりこいつら好き"か"ダメだな、俺の中であいつらは死んだ"と思われるかどっちかだ。あの曲が出た頃俺はオランダで休暇を取っていて、バケーション・ハウスにいてね。スマホを持って、"そうだ。もうすぐあの曲がリリースされる"と思っていたら、爆発的な数のコメントがどんどん入ってきた。みんな俺をタグっててさ(笑)。クレイジーだったね。今でも思い出すと鳥肌が立つよ。

-Nicoもみんなに大歓迎されていたようで、良かったです。

ああ。あいつもとてもハッピーだったよ。

-まるで昔からのメンバーみたいな感じですものね。とてもしっくりハマっています。あなたも言う通り、こんな時代にはやはりハイパーでハッピーなアゲアゲの曲が求められてくると思うんです。そのあとアルバム『Tekkno』にも収録される「We Got The Moves」、「Pump It」、「Spaceman」と続々とリリースされたMVたちも、「Hypa Hypa」に負けず劣らずどれもはっちゃけたパーティー・ソングで、思わず笑ってしまうユーモア溢れるMVに仕上がっています。それもまた、嫌な時代に人々をハッピーにさせるという路線あってのことだったのでしょうか。

それもひとつだね。ただ、俺たち自身にとってのセラピーでもあったんだ。俺たちもステイ・ホームしていたから、そういうハッピーな時間が必要だったんだよ。「Hypa Hypa」があれだけビッグになって"そうか、みんな気に入ってくれたのか、それなら"と思ってあの手の曲を作ることにしたんだ。みんなも大好きで俺たちも大好きならウィンウィンだしね。でもその一方で、あの手の曲だけに固執したくないという気持ちもあった。俺たちにはシリアスな面もあるから、それを失いたくなかったんだ。ELECTRIC CALLBOYの大事な一部分だからね。でもパンデミック中は面白い曲ばかり作っていたな(笑)。(「Hypa Hypa」のあと)最初に出したのは「Hate/Love」だったけど、そのあと「Pump It」を出して......君も言ったように、それから出したものにはみんな一定の雰囲気があった。曲としてはそれぞれ独特だったけど、みんな面白い曲というか(笑)。今俺たちはツアー活動を再開して夏フェスにもいろいろ出ているからわかるけど、みんなが聴きたい、好きなのはこういう曲なんだ。新作にはハードな曲も入っているしシリアスな曲もまた登場しているけど、ああいう面白いタイプの曲は絶対だね。俺たちは今"俺たちの音楽"というのを再構築しているところなんだ。新曲を出すごとにね。

-それらの違うタイプの曲については後ほど詳しく聞きますが、3月にESKIMO CALLBOYからELECTRIC CALLBOYへと改名を発表しました。10年以上慣れ親しんできたバンド名を封印し、新たな名前にすることに対してどういった心情でしたか?

君も言っていたように、俺たちは10年以上ESKIMO CALLBOYを名乗っていたから、これまでも何度も批判されてきた。このバンドを始めた頃、"Eskimo"という言葉の本当の意味をリサーチしたけど、みんなにも悪い意味じゃないって言われたし、単に"Callboy"という言葉と組み合わせたときのギャップがおかしいから使っているだけだって説明してきた。"Eskimo"がどうというわけじゃなくて、"ESKIMO CALLBOY"なんだってことでね。

-そのふたつの言葉の組み合わせが楽しい、ということですね。

そう。問題があることを認識はしていたけど、ヨーロッパではそんなに大ごとじゃなかったんだ。ヨーロッパでは"Eskimo"という言葉を耳にしても悪いイメージはない。でも俺たちは学んだんだ。学ぶって本当に大事だよね。その言葉の意味そのものより、それを聞いて人々がどう感じるかのほうが大切なんだって。「Hypa Hypa」が成功したことによって、俺たちのバンドは今までより多くの国で人気が出るようになった。カナダとか、"Eskimo"という言葉が問題になってくるような地域でもね。そういう地域では口にするのもいけない言葉なんだ。

-なるほど......。

その頃俺たちは"Eskimo"という言葉にまつわる様々な問題をもっと深く知るようになっていった。

-言われてみれば「Hypa Hypa」が出た頃はまだESKIMO CALLBOYでしたもんね。

そうなんだよ。あの頃はまだESKIMO CALLBOYだった。......と口にするだけでも今じゃ違和感があるよ(苦笑)。今はすっかり新しい名前に慣れたからね。いろいろそれに関するビデオを作ったんだ。中には、俺たちよりもずっとイヌイットの人々に詳しい人たちからレクチャーを受けているものもあるよ。北極圏の人々について研究している大学の教授に話を聞いた。本当にたくさんのことを教えてくれたよ。手短に言うと、"Eskimo"という言葉はイヌイットの人々が自分たちで付けた名前じゃなくて、植民地になったときに強制的に付けられたものだったんだ。

-なんと。現地語とかじゃなかったんですね。

ああ。外国人が彼らの土地にやってきて、"今日からお前たちは「Eskimo」だ"みたいな感じで付けられてしまったものだったらしい。だから"Eskimo"という言葉はすごくネガティヴな烙印なんだ。ネイティヴ・アメリカンが"インディアン"と呼ばれるのと同じだよね。植民地側の権力を持っている側から見ると、そういう人たちは"劣った人"ということになる。そういうことを知って、あの名前を続けていく価値はないと判断したんだ。このバンドを代表するのは俺たち"人"であって、バンド名が俺たちを代表しているわけじゃないからね。俺たちはどんな名前になっても俺たちだ。でも、それを理解してくれない人たちがいることも知っている。ヨーロッパではそんなに大きな問題になっていないからね。

-ヨーロッパにはEskimo Ice Creamとかいうメーカーがありませんでしたっけ。

あるよ。彼らも少なくともドイツとオランダでは名前が変わったね。"Eskimo"というアイスクリーム会社があったんだ。といっても、今でも"Eskimo"という名前はいろんなところで使われているよ。みんな本当の問題を知らないからね。ヨーロッパでは"Eskimo"というと、みんな毛皮の帽子とかイグルー(氷の家)とかそういうものを連想するから。

-日本もたぶん同じような感じだと思います。

まぁそんな感じで、最終的に俺たちはバンド名を変えたんだ。変えて本当に良かったと思ってるよ。みんなにきちんと説明したいと思ったから、一連のYouTubeビデオを作ったんだ。そこに必要な情報、知っておくべき情報をまとめた。ファンもみんな好意的に受け入れてくれて、"ELECTRIC CALLBOYになってもいい音楽を作っていることは変わらないし"と言ってくれた。それこそが大事なことだからね。

-ELECTRIC CALLBOYとは非常にストレートな名前となりましたね。覚えやすいですし、ESKIMO CALLBOYとそう変わらないのもいいと思います。このバンド名に決めた経緯を教えてください。他にも惜しくも採用されなかったバンド名候補はありますか?

簡単に決まったわけではなかったよ(笑)。前の名前で10年以上もやっていると、他にどんな名前が合うかわからなくてね。正直どんな名前も変な感じがしたんだ。それで辞書を引っ張り出してきて......さっき君も"前とそう変わらない"と言っていたけど、俺たちも頭文字"EC"にはこだわりたかったんだ。それで"E"で始まる形容詞はあるか探してみたけど、クールな言葉が見つからなくてね(苦笑)。でも"Electronic"と"Electric"だけはなんとなく合うような気がした。俺たちの音楽にエレクトロニックやエレクトリックの影響があるところが自分たちで気に入っているしね。それに、俺たちが投稿したビデオのコメント欄にも、提案してきた人たちがいたんだ。"ELECTRIC CALLBOYだったらクールじゃないかな?"なんて書いていた人がたくさんいた。"ELECTRONIC CALLBOY"を提案してくれた人たちもいた。"Electric"のほうが"Electronic"よりちょっと短くて言いやすいから(笑)そっちにしたんだ。慣れるのには2~3週間かかったかな。そうしたら気に入った。ロゴを変えたらそれもいい感じだったし、とてもハッピーだよ。