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INTERVIEW

ELECTRIC CALLBOY

2022.09.12UPDATE

2022年09月号掲載

ELECTRIC CALLBOY

Member:Kevin Ratajczak(Vo/Key)

Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)

俺たちはウィッグとアホな恰好だけじゃないんだ(笑)


-というわけで『Tekkno』である意味再デビューを飾りますが、まず、これは"テクノ"のドイツ語表記なんでしょうか?

実は違うんだ。ちょっと違ったようにしたくてね。テクノ・ミュージックは俺たちのソングライティングのプロセスの大きな部分を占める。いろんな名前を探してみて"テクノ"がすごくシンプルでいいなと思ったけど、普通のスペルじゃ嫌だなと思ったんだ。単なる"Techno"より"kk"の2文字を入れるとカッコ良くなる気がしたし、字面的にもいい感じだしね。

-ヴィジュアル的に魅力が増すというか。

そう、その通りだよ。それで"Tekkno"にすることにしてから、ネットで"Tekkno"を検索したんだ。他にその表記を使っているバンドがいるかもしれないからね。そうしたら、テクノのハードなバージョンのことを"Tekkno"と呼ぶ場合があることがわかった。DJがすごくハードなテクノをやるときに"Tekkno"とkをふたつ使って表記していたんだ。

-先ほどあなたも言っていましたが、アルバムにはハイパーでハッピーな曲以外にもいろんなタイプの曲があります。MVのある「Fuckboi」ですが、今までのあなた方のレパートリーの中ではあまり聴いたことのないポップ・パンク・サウンドでした。PARAMOREやMACHINE GUN KELLYを彷彿させます。Avril Lavigneの新作(『Love Sux』)もポップ・パンクだったりと、近年ポップ・パンクがリヴァイヴァルを見せるなか、ELECTRIC CALLBOYからの回答といったところでしょうか?

その通りだね(笑)。これは"俺たちにもできる"と思って作った曲のひとつなんだ。"ELECTRIC CALLBOYはこんな音楽"という一定のイメージを持っている人は多いけど、実のところ、音楽を作っているときの俺たちは、頭の中にリミットやボーダーラインを設けているわけじゃない。そうするとクリエイティヴィティが制限されてしまうからね。今までも俺たちのイメージとちょっと違う曲、例えば昔のアルバムだったら「Vip」(2017年リリースのアルバム『The Scene』収録)なんかがあったよね。あれはシャッフル・ロック・ソングだった。同じような感じで、"俺たちにもああいうタイプの曲が作れるかな?"と自問自答しながら作っていったんだ。そりゃできるさ。やりたいことをやればいいんだからね。やりたいことをやればクリエイティヴさをキープできるし、新しい音楽を作れば魂や心もリフレッシュされるし、自分の音楽に退屈しないでいることはとても大切だと思うんだ。自分のやっていることがあまり好きじゃなくなると、フロントマンを変えたりしないといけなくなったりするし(苦笑)。そんなわけでポップ・パンクの曲をやったんだけど、最初俺はあまりこの手の音楽のファンじゃなかった。正直なところね。でもヴァイブがとても新鮮だったし、CONQUER DIVIDEの子たちもとてもいい歌詞を書いてくれたしね。

-歌詞を共作したんですか。

ああ。俺たち側の歌詞を手伝ってくれたんだ。曲のメインのアイディアはできていたし、どんな内容の歌詞にするかもだいたい決めてあったけど、具体的なところを手伝ってくれた。しかも自分たちの歌うところは自分たちで書いてね。シンガーのKia(Kiarely Castillo)がすごくハイ・ピッチな声で歌ってくれた。あのトーンだったからAvril Lavigneを思い出す人も多いみたいだね。PARAMOREとかも。とてもクールだよ。俺はあの曲をとても気に入っているんだ。「Hypa Hypa」みたいにセンセーショナルではないけど、スペシャルなヴァイブがある。夏にドライヴとかプールサイドで聞いたら良さそうな感じ。

-バケーション向けというか。

そうだね、そう思うよ。

-Kiaのこの曲での歌い方はたしかに、普段とは少し違う気がします。彼女もリフレッシュした気分で臨めたんでしょうね。

そうだね。

-CONQUER DIVIDEをデュエットの相手に選んだ経緯を教えてください。

いい質問だね。俺たちは全米ツアーに一緒に行く相手を探していたんだ。で、彼女たちと一緒にツアーすることになったんだけどね。アメリカでのサポート・バンドを探していたんだ。このツアーはATTACK ATTACK!と共同ヘッドライナーで行くことになっているんだけど、もうひとつバンドが必要だった。それで提案されたのがCONQUER DIVIDEだった。彼女たちのことは前から名前は知っていたけど、提案してきたのはアメリカのブッキング・エージェントだったんだ。チェックしてみたら音楽がとても気に入って、これはぜひ一緒にツアーしたい、と思った。それが決まったあとでこの曲を書いたときに、誰かフィーチャーできるだろうかと考えたんだ。そうしたらCONQUER DIVIDEに頼んでみようという話になった。全員女性のバンドもいいなと思ってね。音楽業界の中での女性のパワーを打ち出すのにもいいと思った。音楽業界はまだまだ......よく俺たちも話題に挙げるんだけど、音楽業界の女性たちは"バンドをやっているんだって? で、誰に曲を書いてもらったの?"って言われるんだ。女性が自分で曲を書くなんてあり得ない、背後に誰か男の存在があるに違いないって思うやつらは未だに多いんだ。そんなのクソだと思うけどね。すごく変な話だし。だからこの曲のMVの中で彼女たちがすごくパワフルなところがとても気に入っているんだ。

-ガール・パワー! という感じで元気が出ますよね。

俺もそう思うよ。マジな話、MVを撮ったときも彼女たちのパフォーマンスを観るのは本当に楽しかったよ。何から何までクールなバンドだった。

-「Spaceman」のフィーチャリング・アーティストのFINCHですが、その名前を見たときに、スクリーモ・バンドのFINCHかと一瞬勘違いしました(笑)。FINCHについて調べてみたのですが、日本にいると今ひとつ情報がなく。このFINCHとはどういったアーティストなのでしょうか? ドイツでは有名なんでしょうか。

結構有名だね。どんどんビッグになってきている。いろんなフェスに出ているしね。彼は結構論争のもとというか......(笑)、かなり強硬なことを言うときもあるよ。ギャングスタ・ラップ的な強硬さじゃないけど、すごく単刀直入だし、いろいろ悪態をつくこともあるんだ。

-ディスるとか?

そう、そんな感じ(笑)。でもそこが人気だったりするけどね。ショーも素晴らしいよ。ドイツではどんどんビッグになっているんだ。この曲のことだけど、俺たちはまたラッパーと組みたいと思ったんだ。今回はレーベルのA&R担当がFINCHのマネージメントを知っていてね。それでベルリンで落ち合って一緒に曲を書くことにした。初めからある曲にパートを投入してもらうんじゃなくて、一緒に曲を作ろうと提案したんだ。曲のアイディアを少し書いて、それをFINCHに持ち掛けたら、彼もアイディアをいくつか持ってきていた。あの曲を書いたのは楽しかったね。それに、なんだかんだでいいやつなんだ。ハードなところは場所をわきまえているしね(笑)。実は昨日の"PAROOKAVILLE"にも彼が来ていたんだ。お互いのステージに飛び入りしたよ! すごく面白かった。

-アルバムの冒頭から4曲はすべてリリース前に配信でリリースし、YouTubeでMVを観られる曲で固めましたね。アルバムにストーリー性を持たせたり、アルバムを通して聴いたときに最も映える曲順を提示したりするアーティストもいますが、あなた方はそういったセオリーより、みんなが聴き慣れたヒット曲を冒頭に並べて、リスナーにインパクトを与える曲順にあえてしたのかなと思いましたが、実際のところいかがでしょうか。

今言われてふと思ったけど、考えもしていなかったよ。いいヴァイブがあるというのは共通しているかもしれないけど似てはいないし、ストーリーラインもないからね。(配信時に)「We Got The Moves」の終わりを「Pump It」に繋げるとか、そういうのは少ししたけど。MVでも「We Got The Moves」のビデオの最後にムキムキの男が出てきて、そいつが「Pump It」にも登場するんだ。曲順は、曲が全部揃ったところでパズルみたいにして決めるんだよ。いろんな曲順を試してね。理想のトラックリストとしては"波"ができるような感じのがいいな。ハードな曲のあとで遊びのある曲が出てきて、ソフトな曲があって......みたいにね。でもどの曲がリリース済みとか、リリース済みのやつを前に持ってこようとか、そういうことは考えなかった。

-偶然なんですね。

そう。曲順をいろいろ入れ替えて試しているうちにこれが一番しっくりきた感じ。

-その4曲以降の曲ですが、最近のELECTRIC CALLBOYの楽曲と比較すると、シリアス且つエモーショナルでドラマチックな「Mindreader」もありますし、「Hurrikan」はユーロビートがデス・メタルになるようなジェットコースターばりの展開がすごいですよね。JOURNEYやBOSTON、TOTOなどのAORを髣髴させる「Neon」あたりは美しいコーラスのあるロックです。アルバムならではの収録曲でシングルやMVではあまり見せないELECTRIC CALLBOYの別の一面を味わえる収録曲だと感じました。

(※「We Got The Moves」MVで被っているウィッグのぱっつん前髪を手で表現しながら)ほら、"あの"ウィッグを被ってばかりいるのも面白くないし(笑)。

-(笑)

ELECTRIC CALLBOYはもっとそれ以上のものを持っているからね(笑)。ウィッグとアホな恰好だけじゃないんだ(笑)。例えばライヴ・ショーのことを考えると、音楽のいろんな部分を少しずつ取り入れたいんだよ。ステージのライトが真っ赤について、そのあとダークになって、それからすべてがまたライト・アップされる。アコースティックな曲があって、そのあとにポップな曲が出てきて、ポップ・パンクもあって......俺はいつもオーディエンスの中にいる自分を想像するんだ。もし自分のバンドを(客として)観ることができるなら、何を観るのが楽しいのか。もちろんクラシック・ロックやクラシック・メタルを聴きたいと思う人にとっては、俺たちみたいなバンドは向いていないと思うけど(笑)、楽しい時間を過ごしたいならあの曲、まったく違うこの曲、みたいな感じにあらゆるものが揃っていると思う。早く『Tekkno』の曲も全曲ライヴでやりたいね。どの曲もきっと面白いものになるから。

-"面白い"ですか(笑)。

ああ。例えば「Hurrikan」......そうそう、今度この曲のMVを撮るんだ(※現在は公開済み)。面白おかしく演出しようと思ってね。

-いいですね。

あの曲の冒頭に出てくるポップな感じの音楽があるだろう? あれはここドイツでとても有名なタイプの音楽なんだ。シュラーガーっていうんだけどね。ジャーマン・シュラーガーって検索してごらん。似たような音楽がいろいろ出てくるから。通常その手の音楽は"酔っ払いの若者たち"向けのものなんだ。あるいは年配の人たち向けだね。それをおちょくって、最終的にはデスコアだかなんだかよくわからないものに辿り着くっていう(笑)。

-すごくジェットコースター的ですもんね(笑)。

そうそう(笑)。楽しむための曲だよね。俺たちも作っていて楽しかったし。早くライヴでやりたいよ。絶対面白いものになるからね(笑)。

-「Arrow Of Love」、「Parasite」、「Tekkno Train」の流れはアルバムの冒頭に近い方向性の鉄板ソングだと感じました。どの曲がMVになってもおかしくないクオリティですが、どれか作る予定はありますか。

シングルをピックアップしないといけなかったんだけど、全部のシングルが同じ"重さ"というわけじゃないんだ。こっちのほうが、重要度が高いというものはある。例えば「Hurrikan」はアルバムが出る前の前菜みたいな役割があるんだ。しかも誰も想像しないような形でね(笑)。俺たちはドイツでずっと"いつかはシュラーガーをやりたい"と言っていて、みんなに"まさかね"と笑われていたけど、ここへきて本当に出すってわけだ(笑)。そう言っておくことでみんなをけむに巻いていた感じだね(笑)。その次のシングルの話も出てはいるけど、今は話せないんだ(※にやりと笑う)。

-わかりました(笑)。

シングルはあとふたつ出す予定で、「Hurrikan」のあとはアルバム発売前にもう1曲、発売後にもう1曲という感じだよ。きっと面白いものになるし、最大限に生かそうと思っているよ。MVにはいつもベストを尽くして、たくさんの要素を入れるようにしているからね。

-中でも「Parasite」が個人的には気に入っています。モダンで刺激的なシンセの使い方と往年のハード・ロック・バンドのようなメロディアスなビッグ・コーラスもアガりますね。

クールだね! ありがとう! 俺も個人的に好きな曲のひとつなんだ。「Parasite」はその名の通り寄生するものについての曲でね。あの曲は"スパイダーマン"に出てくる"ヴェノム"を思い浮かべながら書いたんだ。寄生性があって、スパイダーマンに寄生して彼の立ち居振る舞いを変えてしまうんだよ。曲の中で、主人公はその寄生虫を追い払ってしまいたいという気持ちがあるんだけど、寄生虫はその人に"俺を追い払うことはできない"と話し掛けるんだ。"お前が生きるには俺が必要なんだから"ってね。曲を作るときはいつも"どんなビデオが作れるだろう"と考えるんだ。この曲では、何かを追い払ってしまいたいのに、生き続けるにはそれが必要っていうアイディアが気に入っているよ。いろんなシチュエーションに当てはめられると思うしね。仕事とか。仕事が大嫌いな人はたくさんいるけど、その仕事は生きていくために必要なものだから。あとは人間関係で、その関係が大嫌いなのに抜けるほどの心の強さがないとかね。あの曲は構造も気に入っているんだ。冒頭はテクノで始まって、女性の不気味な声が出てきて、気味悪い雰囲気がよく出ている。曲の最後にも不気味な囁きが出てくるし、そういうところがとても気に入っているよ。