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INTERVIEW

ELECTRIC CALLBOY

2022.09.12UPDATE

2022年09月号掲載

ELECTRIC CALLBOY

Member:Kevin Ratajczak(Vo/Key)

Interviewer:村岡 俊介(DJムラオカ)

ELECTRIC CALLBOYのビデオを観たら、3分間脳のスイッチを切ってその瞬間を楽しんでほしいんだ


-ここから先は音楽からはちょっと離れて重い質問になりますが――

大丈夫だよ。

-先ほどはバンド名の変更についての背景をいろいろ語ってくれましたね。また、バンドとしてウクライナの救済のための募金を集めていることも知っています。ということで、今の状況についてどう考えるか質問してみたいと思います。ウクライナへのロシアの侵略やそれに対するドイツ含むEU諸国の苦慮は、遠く離れたここ日本でも大きなニュースになっていますが、近隣の国で起きているあなた方からすると、私たち日本人以上に眼前にあるシビアな問題かと思いますので......。

ものすごく難しい話だよね。俺たちにとってはとてもつらい話でもある。どちらの国もツアーした経験があるからね。

-ですよね。心が引き裂かれる思いなのでは。

そうなんだよ。ウクライナについては、2014年に一度危機があったよね。

-はい。

クリミア半島あたりで内戦みたいなものがあって、メディアでもいろんな話が報道されていた。俺たちがウクライナとロシアをツアーしたとき、ウクライナに行くと物語の片面を耳にして、ロシアに行くとまた別の面を耳にしていたよ。例えばクリミア半島あたりで争いが起こっていたけど、ウクライナ人たちは"やつら(ロシア人)は俺たちの国を奪おうとしている。クリミア半島はウクライナのものなのに"と言っていた。で、ロシアに行くと、"クリミア半島にはロシア人も住んでいて、ロシアの一部になりたがっている"と言われるんだ。

-それもまた本当のことですよね。

そうなんだ。俺としては自分が好きな国の人たちが争っているのを見るのがつらかった。でも今はまったく状況が変わってしまっている。俺は政治的なトピックを話すときとても慎重なんだ。俺たちのようなヨーロッパの一般人は、すべてを知っているわけではないからね。一部は知っているし、メディアが何を言っているかも知っている。でもすべてを知ることは決してできないことなんだ。俺が"俺はなんでも知っているし、あの国の状況は手に取るようにわかる"なんて言ったらそれは嘘になる。知らないからね。片側ではロシア人が"これは戦争だ"......あ、"戦争"という言葉は使っていないんだった。それがまた変な話なんだけど、プーチンは"戦争"とは言っていない。俺の視点から見ると、あそこで起こっていることはどう考えても犯罪なんだけどね。ロシア人であの"戦争"を支持しない人は本当にたくさんいる。

-らしいですね。

でも彼らはデモをやったり、声を上げたりすることができない。そうすると投獄されてしまう恐れがあるからね。ファシズムってやつだけど......ドイツでもそういうことがあった。自分の意見を言って投獄されてしまうことがあるっていう。そして今ウクライナで起こっていることは、本当に悲惨だよ......。あの戦争で本当にたくさんの人々が苦しんでいて、そんな写真がたくさん報道されている。彼らに罪はないのにね。プーチンはクレイジーだよ。"あれは軍事作戦です"なんて言ってるんだから。"ウクライナ政府を崩壊させてウクライナの人々を解放する"らしいよ。でもミサイルは学校とか民間がターゲットだったりする。まったくクレイジーな話だよね。今EUは劇的な状況にあると思う。これはこっちのメディアが言っていることだけど、EUやNATOが絡むと戦争になるという......もちろん第3次世界大戦なんて誰も望んじゃいないから、今はウクライナを助けているんだ。俺たちはウクライナをサポートしている。今起こっていることは犯罪だからね。それも毎日報道されている。(建物じゃなくて)村の人たちが撃たれたとか。まったくクレイジーな話だよね。と言っても俺もメディアで観ているだけで、現地に行って自分の目で見てきたわけではないけど、ロシア人ともウクライナ人ともいろいろ話をする。みんな言っていることは同じだよ。ただロシアでは声を上げることが禁じられているからね......トルコに少し状況が似ているかもしれない。反政府的なことを言うと投獄されてしまうことが多いという点でね。ドイツではあり得ないけど。

-率直なご意見をありがとうございます。今あなたも言ったように、プーチンの意見は全ロシア人の意見ではありませんよね。向こうにもあなたのファンがいて、日本のファンと同じようにあなたの音楽が大好きです。以前、私たち激ロックであなた方を2度にわたって日本に招聘しましたが、そのあと同じようにロシアのバンド、FAIL EMOTIONSやWILDWAYSも日本に招聘しました。彼らをご存じですか?

WILDWAYSは知っているよ。

-音楽を政治や戦争と絡めるべきではないかもしれませんが、現実はそうはいきません。おそらくこの戦争がなんらかの決着点を見つけない限り、ロシアのバンドがドイツにも日本にも行くことはできないでしょうし、また逆も然りだと思います。政治や戦争が音楽やスポーツ、文化交流の妨げになっている現状はジレンマだと思いますが、いかがでしょうか。

本当だよね。問題だと思う。SNSでたくさんメッセージを貰うんだよね。"新曲を聴きたいけど聴けません。レコード会社がみんなロシアから撤退してしまって"と。ロシアでは俺たちの新曲を聴くことができないんだ。それは俺たちが決めたことじゃないし、その人たちが過ちを犯しているわけではないのに、彼らは苦しまないといけないんだ。すごくつらい状況だよ。ファンとは交流し続ける必要があると思う。ロシアとウクライナ両方のね。とても重要なことだ。でもだからと言って状況が変わるわけではないのはとても心苦しいよ。ロシア人は投獄されてしまうことをとても恐れているんだ。反面、ロシアのプロパガンダを鵜呑みにしてしまっている人もたくさんいる。メディアで見聞きしていることを信じているんだ。ウクライナのほうが攻撃的で悪い国だからああなって当然だ、みたいなね。そういえばスリランカでも何かあったよね。

-フィリピンでも昔似たようなことがあったような。

そうだったね。まぁだからと言って政府を攻撃しろとか言うつもりもないけど、プーチンだって全員を投獄できるわけじゃないからね。何千人単位だったら可能かもしれないけど、何百万人は無理だ。だからもっと多くの人が声を上げられる状況になったら、プーチンも邪険にはできないだろう。今の状況に不満を持っている人はもっとたくさんいるだろうから、今の犯罪状態に声を上げられる状況になることを願うよ。俺は今も両方の国の人たちと話すようにしているけど、今はウクライナを助けることしかできない。苦しんでいるのはそっちだからね。ロシアでは日常生活が普通に行われているわけだから。

-今はウクライナを助けるときだと。

そうだね。でも葛藤はあるよ。ほんの少しの一部の人たちのためにこんなにクレイジーな状況になっているわけだからね。

-ですね......。世界は良くない悲観的な方向に様変わりしてきています。そんな困難な時代にこそ私たちは日本人、ロシア人、ウクライナ人、ドイツ人と国籍関係なく、みんなで、笑顔で楽しく歌って踊れる底抜けに明るいELECTRIC CALLBOYの音楽に救われます。そういったファンやリスナーからのメッセージやコメントは多いのではないでしょうか?

そうなんだよ。俺たちはそれを心から誇りに思っているんだ。俺たちを無知だと思われるのは困るし、世の中の問題なんかありませんなんて言うつもりも毛頭ないんだ。でもELECTRIC CALLBOYのビデオを観たら、3分間脳のスイッチを切ってその瞬間を楽しんでほしいんだ。例えば歯医者のアポイントがあったり(笑)、難しい仕事が待っていたり、大学の期末試験があったり......それらは必ずやってくる。でも、その3分間があることによって、そういうものにもっと強い気持ちで臨む手助けになると思うんだ。

-リセットしたり充電したりできますよね。

その通りだよ。それが俺たちの目指していることなんだ。俺は音楽にそういう力があると思っている。新しいエネルギーをチャージする力がね。パンデミックでみんなステイ・ホームを余儀なくされていたとき、みんないつもよりちょっと悲し気で鬱気味だったけど、そんな人たちが"あなたの音楽に助けられました"とか言ってくれて、本当にハッピーだったんだ。俺たちにとっては本当にスペシャルなことだよ。俺たちがドイツの小さな町で作っている音楽を世界中の人が楽しんでくれて、しかもそれに救われたなんて言ってもらえるなんてね。実にクールなことだよ。

-なかなか遠方の日本に来ることはハードルが高いかもしれませんが、ぜひ4度目の来日を果たしていただきたいです。来日の予定はありますか。

インタビューで毎回同じことを言っている気がするけど(笑)、日本は俺の大好きな国のひとつなんだ。行ってすぐに自分の国みたいに思える国がいくつかあってね。例えばオランダ。ドイツにとても近い。オランダには車で行くんだけど、とても居心地がいいんだ。日本も毎回、都会にいてもそのへんのストリートにいてもすごく居心地がいい。早く行きたくて待ちきれないよ。でもそのためには俺たちの音楽が大好きな人たちが必要なんだ。誰にも気に入られなくて誰もショーに来なかったら誰も呼んでくれないからね。日本行きについてはなんとか実現したいと思っているよ。日本のファンにはいつも特別な視線をかけているからね。

-前回のインタビューでは、"新婚旅行で日本に行きたい"と言っていましたね。

あれは実現しなかったんだよ~(苦笑)。

-パンデミックもあのあとすぐでしたからね。2度目のハネムーンでぜひ来てください。今度は子連れで。

実現したら最高だよ! 今でもバケット・リスト(死ぬまでにやりたいことリスト)に、バンドとしてはもちろん、プライベートでも行きたいって書いてあるんだ。日本には友達も何人かいるしね。例えばツアー・マネージャーだったユウスケ。彼にも小さな娘さんがいるんだ。今も時々メールを送り合っていて"日本に行ったら会いに行くよ"と言っているんだ。一緒にビールを飲んでいる傍らでお互いの子供が遊ぶのって最高だよね、なんて話してね。でもパンデミックがすべての計画を破壊してしまって(苦笑)。だけど気持ちは前向きだよ。

-日本行きが実現することを願っています。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。

みんなのサポートに心から感謝しているよ。このバンドにとって一番つらかった時期も、日本からもたくさん励ましの言葉を貰ったんだ。日本のファンや友達が時々、俺たちの音楽がバーでかかっている様子の動画を送ってくれたり、こんなところで俺たちのMVを見かけたと言って送ってくれたりするしね。本当に素晴らしいことだよ。いつも、ずっと応援をありがとう。早くそっちに行きたいね。今いろんなツアーが決まっていて、アメリカにもオーストラリアにも行けそうだけど、日本にもぜひ行きたいんだ。みんなが俺たちの音楽を気に入ってくれたらそれが実現するから、そうしたら最高だね。アリガトウ!