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LIVE REPORT

Mary's Blood

2022.04.09 @豊洲PIT

Writer 杉江 由紀 Photo by nonseptic

覇気にあふれた"俺たちの戦いはこれからだ!"という主人公のセリフとともに、最終回を迎える少年マンガのごとく。Mary's Blood が、無期限活動休止前の最終公演としてこのたび開催したワンマン・ライヴ"The Final Day ~Countdown to Evolution~"は、ひとつのバンドとしての大きな区切りを示すものであったと同時にEYE(Vo)、SAKI(Gt)、RIO(Ba)、MARI(Dr)の4人がそれぞれにここからの未来へと踏み出していくために必要な、ある種の通過儀礼でもあったのかもしれない。

2021年末に突然の活休発表がなされたとはいえ、その少し前に発表された最新オリジナル・アルバムに"Mary's Blood"とバンド名が冠されていた事実を思うと、彼女たちはすでにあの作品の制作段階で、ひとつの決断をくだしていた可能性が高いようにも思える。始動からは約14年、そして現体制となってからは実に約10年。姐御たちの体現してきたヘヴィ・メタルはすこぶる重く、とことんまで尖っており、それでいて時には意外なほどポップだったり、極めて美しく叙情性に満ちたりする世界を感じさせてくれることもあったわけだが、まさに今回のライヴでもそうしたMary's Bloodの持つ様々な面が、このライヴを前にリリースされたベスト・アルバム『Queen's Legacy』からの収録曲たちを軸に、2部構成の本編+アンコールというかたちで網羅されていたと言っていいだろう。

大別すれば本編1部では「Without A Crown」をはじめとしたタフなハード・チューンがたっぷりと取り揃えられていた印象で、一転しての本編2部は歌モノやミドル・テンポの「Campanula」などを交えながら、メタルの枠だけには収まり切らない、Mary's Bloodの多彩な音楽性を感じさせる曲たちが、あれこれと聴ける流れになっていたところがなんとも興味深かった。そればかりか、各部とも曲間には各パートのソロがしっかりとはさみ込まれたうえ、MCのタイミングでもメンバーひとりずつの生の言葉を聞ける時間が設けられていたので、これらはきっとファンの方々からすると大変嬉しかったに違いない。ちなみに、この日のライヴの模様は後日DVDとして発売されるとのことなので、残念ながら当日は参戦できなかったという場合はもちろん、現場でも観たが何度でもあの臨場感を味わいたい方も含めて、ぜひともチェックされたし。

"ねぇ、知ってる? 人っていつかは消えていなくなるんですよ。今あなたの目の前にいる人、今あなたの隣にいる仲間たちも、その存在は決して当たり前じゃないんです。こんな時代になって、いろんなことが起きて、平和と見せかけていた日常が突然に変わってしまうことが、拒んだとしてもやってきてしまうときがあります。この広い世界の中で、この長い歴史の中で、こうして時を共にできることはきっと何億分の1とかもっと大きな確率の中のひとつでしかなくて、これは奇跡と必然の出会いなんだと思います。みなさん、私たちと出会ってくれて、生まれてきてくれて、本当にありがとう。Mary's Bloodというバンドがこれからもあなたの心の中で生き続けることができるなら、私たちはずっと幸せでいられます。(中略)みんな、本っ当にありがとうございました......!"

アンコールの最後で「Say Love」を歌い出す前、ヴォーカリスト EYEが涙ぐみながら語ったこの言葉にこもっていた万感の想い。それは"明日を照らすメロディ/歌って 次に会える日まで/じゃあね 今日はおやすみ"という詞とも繋がって、我々の胸に響いてきた。そう。"明日"を前にした彼女たちの新たな戦いは、これから始まるのだ。

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