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INTERVIEW

Mary's Blood

2021.09.28UPDATE

2021年09月号掲載

Mary's Blood

Member:EYE(Vo) RIO(Ba)

Interviewer:杉江 由紀

メタルとはなんぞや。これについてガチ勢で語り出すと、話は際限なく拡がっていく可能性がある。場合によっては大激論が展開されることにもなるだろう。だがしかし、Mary's Bloodは通算6枚目となる今回のオリジナル・アルバムで、そのことに対するひとつの回答を具現化したと言えるのではなかろうか。その名も"Mary's Blood"と自らの名を冠した今作を作っていくにあたり、彼女たちがそもそもコンセプトとして掲げたのは、"HEAVY METAL"というキーワードだったそうだ。Mary's Bloodの体現するメタルとはなんなのか。ここは刮目ならぬ刮耳せよ!

-ついにですね。Mary's Bloodの6thオリジナル・アルバムには、"Mary's Blood"とバンド名が冠せられることになりました。自らの名をこうして掲げるのは、1stアルバムもしくは"ここぞというとき"だと思うのですけれど、Mary's Bloodにとってはまさに今がそのときだったことになるわけですね?

EYE:このタイトルを付けたのは、リーダーであるMARI(Dr)からの発案がきっかけだったんです。今回のアルバムは、原点回帰というか、自分たちでこれまで作りあげてきたMary's Bloodらしさが、より前面に強く打ち出されたものになりましたし、音楽的な面ではコンセプトがそもそも"メタル"だったんですよ。そして、前作がある意味イレギュラーだった、カバー・アルバムの『Re>Animator』(2020年リリース)なことを踏まえると、そこから仕切り直しての新たな1枚目みたいに捉えることもできますから。ここまで蓄積してきた経験や磨いてきたスキルが、一番濃く入った私たちの最新アルバムになってるということは、これはもう"Mary's Blood"がいいんじゃないか? って話になったんです。

-では、今作に向けての曲作りをどのように進めていかれたのかも教えてください。

EYE:まずは、作曲期間を設けて、ネット上の共有スペースに各々が作ったデモをどんどん投げ込んでいった感じでしたね。ある程度の数が溜まってきたらいったんプロデューサーさんに呈示するっていうことを、3回くらい繰り返していったんです。そこから絞り込んでいった結果ここに11曲が並ぶことになりまして、中でも「Blow Up Your Fire」や「Starlight」は最初のうちからみんなの中で"これ、いいよね"となっていた曲でした。

RIO:「Mad Lady」もじゃなかった?

EYE:そうそう、これも1回目に選曲した段階ですでにあったね。スピード感があって"これぞメタルの王道ですよね!"っていうのを目指して作ったので。といっても、歌詞は全然そんな王道とは違う内容なんですけど。

-「Mad Lady」の歌詞は、女性アーティストだからこそ書けるものですよね。同性として非常に共感できました。

EYE:これは言葉遊びもしつつ、わざとガラの悪い言葉を並べて、女が女をディスって掃き捨ててる詞になってます。これは今までやろうと思ってもなかなかできなかったことで、こういうコンセプトのアルバムだからこそ思いきれちゃったところがありますね。いろいろと溜まっていた鬱憤を、ここで一気に晴らしちゃおうぜっていう(笑)。

-聴いていて鬱憤が晴らせるというのも、間違いなくメタルのいいところですものね。

EYE:今回はこの「Mad Lady」を含めた核になる曲たちを入れることが決まってから、"それ以外のテイストの曲も欲しいよね"という観点で、またさらに曲を作って足していくことをしていったんですけど、とにかく今回は、各々にとってのメタルをそれぞれに追求していったアルバム作りでした。

-では、ここでおふたりに率直な質問をひとつさせてください。答え方が難しいところはあるかもしれませんが、ずばりあなたにとって"メタル"とはなんですか?

EYE:そこはですね、今回のアルバムを作ってみて気づいたことがあったんです。実は私、メタルというものについて、ちょっと頭が堅くなってたところがあったなって思ったんですよ。要は、曲を作っているときに"あれ? これは自分の主観じゃなくて、一般的に言われているメタルというものを想定しながら作っちゃってるな"と自分で気づいたタイミングがあったんです。

-それはなかなか興味深いお話ですね。

EYE:メタラーじゃない、ポップスとかが好きですよっていう人たちや、いろんな人がメタルっていう単語を聞いて想像しやすい音楽っていうんですかね。たぶんそれはJUDAS PRIESTや、SLAYERみたいな感じのものが多いのかな? って思うんです。だけど、自分で曲作りをしていて今回どれも"そこ"に寄せていくことができたかと言ったら、なかなかできなかったんですよ。それこそ「Mad Lady」は自分の中での王道なメタルを形にしたものではあるんですけど、逆にあまりにもメタルっていうことを意識しすぎながら曲作りを続けちゃうと、変にパクりみたいになっちゃいそうで(笑)。だから、そこはプロデューサーの久武(頼正)さんに相談してみたんです。そうしたら、基本的にメタルというと技術がどうとか、スピードが速くないととか、ツーバスで速弾きでとかがどうしてもイメージとして先行しがちではあるものの"でも、そういうことじゃないぞ"って言われたんですよ。"メタルとは心意気だぞ"と。その言葉を貰ったときに、自分の中で消化不良になってた何かがすっと消えた感じがしました。

-それは実に大切な"気づき"でしたね。

EYE:音楽ジャンルとしてのメタルという以前に、音楽に対しての臨み方とか、熱量とかによってメタルが生まれるんだなってことに改めて気づけたのは、ほんと良かったです。そう考えたら、別にやたらと肩ひじを張ってメタルだ! とやらなくても、今までの自分たちがやってきたままで良かったんじゃん! って。だから、自分的にはかなり好き勝手に作っただけみたいなアルバムに仕上がりました(笑)。「Umbrella」みたいな曲がここに入ってくるっていうのに、もし"こんなのはメタルじゃない"って感じる人がいたとしても、私の中ではあのツーバスの音やギターのアルペジオの入れどころ、あとはテンション・コードの感じとかも譲れない点がいろいろあって、まさに作っている心意気がメタルでしたからね。そのあたりは、聴き手の方々もまずは頭を柔らかくほぐしてから、じっくり聴き込んでもらえると嬉しいです。

-一方で、RIOさんにとってのメタルとは?

RIO:いや、今の話が出ちゃったらもう何も言うことないですよ(笑)。何かつけ加えるとしたらメタルっていうのは、必ずしもツーバスがドコドコ言ってて速い16分が入ってて、みたいな音楽というわけではなくて、そこに殺意と熱量を感じるものがメタルだと思っています。

-つまり、メタルには鬼気迫るものが必要だということなのですね。

RIO:SLAYERとかPANTERAとかものすごい殺意と熱量を感じますし。

EYE:たしかに、斬り刻んでいくような攻撃性は感じるよね(笑)。そういう意味でいけば、今回の『Mary's Blood』も精神的な面での攻撃性は結構出てると思います。

-それは間違いないですね。ところで、今作の4曲目に入っている「Joker」には、途中でバッハの"小フーガ"(フーガ ト短調 BWV 578)を取り入れた展開になるところがありますよね。あれは、どのようにして生まれたアイディアだったのですか?

EYE:この曲に普通のギター・ソロを入れるのは"ちょっとつまらないかもなぁ......"と思っていたときに、久武さんに相談をして出てきたキーワードが"クラシカル"だったんですよ。SAKIちゃんのギター・ソロを2段階にして、途中で急にクラシックになって"小フーガ"が入ってきて、さらにそのあとジャリジャリのベースが出てくるみたいな、意外性のある面白い構成にすることができたのは、私ひとりの力では難しかったと思います。久武さんって、バンド全体に対してのプロデュースをしてくれるというよりも、作曲者個々とか、それぞれのメンバーに対してのアドバイスをくれることが多くて、個人に対する直接の電話で、コミュニケーションをとってくれるケースが今回は結構ありました。

RIO:あった、あった。私にも電話来たことありましたよ。

-ちなみに、「Joker」におけるEYEさんがおっしゃるところの"ジャリジャリのベース"について、RIOさんがこだわられたのはどんなところでした?

RIO:EYEちゃんは、出会った頃からいつも曲を作るときにベースのことを大事にしてくれている人なんですよ。

EYE:うん、ほんとベース大事! ベースって、ルートを支えられてればいいよっていうタイプのバンドもいると思うんですけど、私は派手に動いていてほしい方なので、曲を作っていてもRIOちゃんについそれを強要しちゃうんです(笑)。

RIO:この「Joker」は他の曲に比べるとだいぶベースが目立った曲になっているので、歌のメロディの存在感はもちろんちゃんと確立されてはいるんだけど、どっかでは耳がベースを追ってしまうみたいな感じの曲になっているかもしれないですね。