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INTERVIEW

Mary's Blood

2019.06.11UPDATE

2019年06月号掲載

Mary's Blood

Member:EYE(Vo) SAKI(Gt) RIO(Ba) MARI(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

闇というものを、こうも多角的に捉えたロック・アルバムはそうない。ガールズ・メタル・バンドとして着実な歩みを見せてきているMary's Bloodは、このたび発表するアルバム『CONFESSiONS』で、従来と比べてもその表現幅を一気に拡大化したと言っていいだろう。前作に続きサウンド・プロデューサーとして参加している岡野ハジメの一助もあり、音楽性の面はもちろんのこと、詞世界の面でもより深い描写がなされている今作の完成度は、もはやガールズ・メタル・バンドという言葉の枠をも超えているような感さえある。時に美しく、時に猛々しく、時には可憐で、時には性別の壁さえ飛び越しながら作品を生み出すMary's Bloodの本気がここにある。

-前作『Revenant』(2018年リリースの4thアルバム)でもMary's Bloodは一気にその音楽性の幅を拡張していた印象がありましたけれど、今回のアルバム『CONFESSiONS』についてはよりいっそうの多面性が呈示されることになったようですね。貫禄たっぷりのスケール感を持つ曲もあれば、エキゾチックなものもあり、はたまたロックンロールやポップなものもありつつ、もちろん十八番のメタル・チューンもありと、実に盛りだくさんです。

RIO:今回は、1枚を通していろいろな凹凸で攻めた感じになりましたね。

-Mary's Bloodにおいては作曲もメンバー全員がそれぞれに手掛けていらっしゃるわけですが、曲作りの段階からここまでの幅広さというものを狙っていらしたのですか?

EYE:曲調そのものを広げていこう、と作り始めたわけではなかったんですよ。それ以前に今回はコンセプトとして、人間が持つ闇であるとか、心の深い部分を掘り下げていこうという話がまずは出てきて、各々が自分の思う闇にまつわるストーリーを曲とか詞にしていったらこれだけいろいろな曲が出てきた、という流れだったんです。

-では、早速ここからは個々の楽曲についてもうかがってまいりましょう。今回、EYEさんはアルバムの冒頭を飾る「Labyrinth of the Abyss」、異国情緒の漂う「Laylah」、そしてアルバムの最後を締めくくる壮大な「贖罪の鐘~Requiem for the victims~」の3曲を作られていますが、まず何よりも驚いたのは「Laylah」です。まさか、メタル・クイーンとしてシーンに君臨するMary's Bloodがここにきてインド音楽の要素を取り入れる日がやってくるとは、予想もしておりませんでした。

EYE:まさにこれは、生でベリーダンスのステージを観たときに思い浮かんだ曲だったんですよ。シタールやダラブッカや足鈴(ガングルー)の音を入れたのも、ベリーダンスの音楽で良く使われているものだからです。タイトルの"Laylah"もインドで月と女性を表す言葉で、発音的には"レイラ"ではなく"ライラ"と読みます。自分で作っていてもこれはとても新鮮な感覚があって、楽しかったです。ただ、普段だったら使わないスケールを使っているので大変は大変でしたね(笑)。

-当然、その影響はギタリストのSAKIさんにとっても大きかったことになりますか。

SAKI:いやもう、運指がややこしくて大変です(笑)。シタールとギターでは作りも全然違うので、アラビックな音階をギターでちゃんとやるというのは難しかったですけど、曲が上がってきた段階でメンバー全員が"これ、カッコいいね!"となっていましたから、やり甲斐はすごくありました。Mary's Bloodとしてはこれまでにないタイプの曲に仕上がったので、これはライヴでも早くやってみたいです。

RIO:ベースの面でも、この曲は『CONFESSiONS』の中で一番難しかったですね。だけど、たぶんこれは人に伝わらない難しさなんだろうなと思います。ほんと、カッコいい曲ですね!

MARI:もちろん、今までずっとメタルを軸にしてやってきたMary's Bloodらしいヘヴィな部分は残したいという思いもあったので、そこはキックのパターンとかでリズム的に変わったフレーズを入れたところもありました。アラビックなんだけどヘヴィっていう面白いことができたと思います。

-そうした一方で、EYEさんは「Labyrinth of the Abyss」と「贖罪の鐘~Requiem for the victims~」でそれぞれにアルバムのオープニングとエンディングに相応しい存在感の曲を呈示されてもいらっしゃるわけですが、この2曲は当初からこの位置に持ってくるものとして想定されていたのですか?

EYE:全然そういうつもりではなかったです。それぞれどこに置くかも考えず作ったものなんですけど、「Labyrinth of the Abyss」に関してはデモをサウンド・プロデューサーの岡野(ハジメ)さんに聴かせたときに、"これは1曲目がいいんじゃないかな"って言われたんですよ。イントロのオルゴールのメロディだとか、そこから転調してバンドが入るというのは、1曲目にするという話が決まってから岡野さんの発案でつけ加えてくれた部分でしたから。あれが入ったときは、"おー! アレンジが変わってオープニング感が出た! さすがは岡野さん"って感じました(笑)。迷宮に堕ちていくようなイメージが、音としていい具合に醸し出せましたね。

-では、アルバムのラストで聴ける「贖罪の鐘~Requiem for the victims~」がどのようなヴィジョンを持って作られた曲だったのかも教えてください。

EYE:これは、前作『Revenant』に入れた「女神の裁き~Death Queen's March~」の続編として作った曲です。

-オルガンの響きが荘厳ですし、Mary's Bloodの放つ貫禄もここにはたっぷりと詰まっているように感じます。

EYE:ちょっとゴスペル的な要素もあったりするという(笑)。

-EYEさんのヴォーカリゼーション自体が、かなりゴスペル寄りのアプローチとなっていらっしゃいますものね。

EYE:そうなんですよ。舞台で歌っているような雰囲気を作りたかったので、声の出し方もほかの曲とは違いを出して、岡野さんと相談しながら朗々とした感じで歌っていきました。そして、これもある意味では作り手側の苦労が伝わりにくいタイプの曲かもしれませんね。実は、途中でテンポ・チェンジやら、転調からの転調を繰り返すんですよ。

RIO:これも聴くぶんにはわりと自然に聴こえちゃうと思うので、そこまで複雑な構成になっていることに気づかないでしょうね(笑)。

MARI:1曲だけど、中身は組曲みたいになっているんですよ。

EYE:演奏する側はみんな大変だったと思う。でも、私の中にあった"クラシカルなものにしたい"という希望を見事に叶えてくれたので、作者冥利に尽きます(笑)。

-それから、SAKIさんも今作においては計3曲を作られていらっしゃいますけれど、「Karma」はこのアルバムの中で最もヘヴィ度の高いサウンドに仕上がっているなと感じました。それこそ、激ロック読者には特におすすめできる曲かと思います。

SAKI:物理的に言っても、これは唯一7弦を使っているんですよ。重心の低い曲にしたいというところから作り始めて、テンポに関しては岡野さんのアドバイスを貰いながら、曲の抜け感を出すために原曲より少し上げたりもしましたね。岡野さんから、これをアルバムの2曲目にするといいんじゃないか? という意見が出たこともあって、その位置でより映える形を追求していったんです。間奏にドラムンベースの要素が入ってくるあたりも今までにはなかったところで、この曲でも新しい挑戦ができて良かったです。

-その間奏では、ドラムとベースそれぞれの見せ場もありますが、リズム隊のおふたりに対して、SAKIさんから何かしらのオーダーというのは出されたのでしょうか。

SAKI:ベース・ソロを入れたかったのでそれをやってもらったのと、ドラムンベースの部分では打ち込みありきのところにドラムとベースで展開してもらった、というのがこの曲の中では特にポイントでしたね。

-RIOさん、ベース・ソロに対してこだわった点はどんなところですか。

RIO:それはもう、真面目に弾くっていうことに尽きます(笑)。基本的には、デモの時点で入っていたものを弾いたんですよ。でも、目立つんでしょうね(笑)。個人的には、ベース・ソロが終わったあとの"ヴーン"って下りていくところにも思い入れがあります。

-あの大きくスライドしているところのことですね。

RIO:もったりしたスライドというか、グリス(グリッサンド)にしたっていうのが聴きどころです。

MARI:私としても、この曲ではリズム隊としてのグルーヴをちゃんと出したいなという気持ちは強かったので、7弦ギターのヘヴィな音を生かすようなリズムを意識しながら叩いていきました。